“サボり”は美徳か、裏切りか? 「効率化」と混同される危険な言葉

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2026年01月09日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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「サボる」ことは良いことなのか?

 「効率的にやるために、適度にサボることは大事ですよ」


【画像】業務の効率化は「サボる」ことではない


 最近、若手社員からこのような言葉を聞く機会が増えた。真顔で言われると、上司としては一瞬、言葉に詰まってしまうかもしれない。「まあ、息抜きも必要だしな……」と、あいまいに同意してしまう管理職もいるだろう。


 しかし「サボる」という言葉をポジティブに使おうとする姿勢は誤解を招くはずだ。それはなぜか?


 そこで今回は「サボる」という言葉の意味と、仕事における責任の所在について解説する。部下の指導法に悩んでいるマネジャーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。


●「サボる」の定義を誤解していないか


 まず言葉の定義を明確にしておこう。「サボる」という言葉は、フランス語の「サボタージュ(sabotage)」に由来する。木靴(サボ)で機械を蹴って破壊し、労働争議を行ったことが語源だといわれている。


 つまり、本来の意味は「破壊活動」や「怠業」だ。日本の辞書的な定義を見ても、以下のようになる。


1. やるべきこと、決められていることを怠る


2. 義務や役割を意図的に果たさない


3. 仕事や勉強などを、理由なく抜けたり手を抜いたりする


 要するに役割や義務が発生しているにもかかわらず、それを意図的に果たさない姿勢。これが「サボる」の正体だ。


 こう考えると答えは明白である。厳しいかもしれないが、仕事において「サボる」ことは、雇用者や監督者に反旗をひるがえすことと同義である。


 「適度にサボる」などという表現も、本来あり得ない。「適度に義務を放棄する」「適度に役割を無視する」と言い換えてみれば、分かるだろう。


●「三面等価の法則」から考える責任と義務


 ビジネスの基本原則である「三面等価の法則」を使って、さらに解説していきたい。


 この法則は、仕事には必ず「責任」「権限」「義務」の3つが同じ分だけ存在する、というもの。これらが正三角形のように釣り合っていなければ、仕事は成立しない。


 それぞれの定義を明確にしておこう。


1. 責任(Responsibility):任された職務を全うすること


2. 権限(Authority):職務を全うするためにリソース(人・モノ・金・情報)を活用する権利のこと


3. 義務(Obligation):仕事の進捗状況を報告・説明する義務のこと(説明責任とも言う)


 この3つを常に心掛けてもらう。部下に伝える際は、以下のように言ってみてはどうだろうか。


 「仕事を任された以上は、その仕事をやり切る責任がある」


 「その仕事をやり切るために、分からないことは先輩や上司に相談する権限がある」


 「その仕事がやり切れるかどうか、進捗状況を報告する義務がある」


 サボる社員、あるいは無責任な社員は、この3つのバランスが崩れている。


 例えば慣れない仕事であれば、定時内にやり切れないこともあるだろう。それは仕方がないことだ。しかし先輩や上司に相談(権限の行使)もせず、進捗状況も報告(義務の履行)もせずに「定時になったから帰ります」と言うのは無責任すぎる。


 「サボる」とは、仕事中に手を止めること、気分転換することとは違うのだ。


●「ラクをする」と「サボる」は似て非なるもの


 とはいえ、冒頭の若手社員が言いたかったことも理解できる。「真面目にコツコツやることだけが正義ではない」と言いたかったのだろう。


 ここで重要になるのが、「サボる」と「ラクをする」の区別だ。


 私は常々「仕事はラクにすべきだ」と考えている。ここでの「ラク」とは、あまりストレスをかけず、できるようになっていることを指す。


・無駄な会議をなくして時間を短縮する


・ITツールを使って手作業を自動化する


・業務プロセスを見直してストレスを減らす


 このような工夫は「ラクをする」ための行為だ。決して「サボる(義務の放棄)」ではない。むしろ、より高い成果を出すための「改善(カイゼン)」とも言えよう。


 先ほどの三面等価の法則で言えば、「権限」を最大限に活用し、「責任」をより効率的に果たそうとしている状態だ。


 「1時間かかる集計作業を、マクロを組んで1分で終わらせました」


 これは素晴らしいことだ。空いた59分で、別の価値ある仕事ができるからだ。これはサボりではない。イノベーションだ。


 しかし、次のようなケースはどうだろう。


 「1時間かかる集計作業が面倒なので、適当な数字を入れて提出しました」


 これは明らかに「サボり」だ。正確なデータを出すという責任を果たしていない。


 「AIに議事録を書かせました。内容はチェックしていませんが、たぶん大丈夫です」


 これもサボりだ。議事録としての正確性を担保し、報告するという義務を果たしていない。


 違いは明確だ。「責任と義務」に向き合っているかどうか、である。


 工夫をしてストレスがかからないようにする。もっと効率的に効果的にやるためにはどうしたらいいかを考える。それを実行するのは素晴らしいことだ。


 しかし、それを「サボる」と表現しないほうがいいだろう。


●「サボる」という言葉が思考を停止させる


 特に警鐘を鳴らしたいのは、言葉の使い方がもたらす影響についてだ。


 「効率化」や「工夫」のことを、あえて「サボる」と表現する人がいる。「上手なサボり方」といったタイトルのビジネス書や記事も散見される。


 おそらく「常識に縛られない」「要領がいい」といったニュアンスを出したいのだろう。あるいは、ちょっとした反骨精神の表れかもしれない。


 しかし、この表現は少しばかりリスキーだ。「サボる」という言葉を使った瞬間、脳内では「義務を果たさなくていい」「報告しなくていい」という回路がつながりやすくなる。「手抜き」と混同されるかもしれないからだ。


 また、周囲への影響も無視できない。


 「あいつは上手にサボっている」と評価される職場があったとしよう。真面目に働いている人間はどう思うか。「真面目に報告・相談するのが馬鹿らしい」と感じるはずだ。


 一方で「あいつは工夫を凝らして、生産性を上げている」と評価されればどうだろう。「自分も工夫してみよう」という前向きな空気が生まれるはずだ。


 同じ結果であっても、どのような言葉で使うかによって、組織のカルチャーは天と地ほど変わる。だからこそ、上司は言葉の定義に敏感でなければならない。


 部下が「適度にサボって、うまくやりました」と報告してきたら、こう訂正すべきだ。


 「それはサボったんじゃない。業務プロセスを改善して、効率化したんだろ? 素晴らしい仕事だ」


 逆に、単に報告義務を怠っているだけの部下が「タイパです」と言い訳をしてきたら、こう指摘すべきだ。


 「それはタイパではない。手を抜いただけ。つまりサボりだ」


 この線引きをあいまいにしてはいけない。


●上司が示すべき正しい姿勢


 実際に高い成果を出し続けているハイパフォーマーたちは「前提」が違う。彼ら彼女らは決して「サボる」という言葉を使わない。


 誰よりも「ラク」をしようとして、常に創意工夫をしている。自分だけのルールを決め、仕組みを作り、徹底的に合理化する。「やるべきこと(責任)」をストレスフリーに遂行するためだ。


 ハイパフォーマーたちにとって、義務を果たすことは大前提だ。その上で、いかに権限(リソース)を活用し、労力を最小限に抑えるか。そのパズルを解くことに知恵を絞っている。


 マネジャーの役割は、部下に「正しいラクの仕方」を教えることだ。


 「サボるな! 汗をかけ!」と精神論を押し付けるのは時代遅れである。かといって「適度にサボっていいぞ」と発言すると、誤解されるだろう。


 「たまに手を止めて、気分転換してもいい。だけど、任された責任は果たせ。報告義務は忘れるな。そのための工夫や相談なら、いくらでも応援する」


 こう伝えるのが、仕事ができる上司の姿勢だ。誤解を招く表現はやめて、正々堂々と「効率化」を目指そう。そうすれば、部下も順当に成長していくだろう。


著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)


企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。



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  • サボリが巧い!サラリーマンは、一流の社会人。いつも緊張状態では疲れますから、、、。
    • イイネ!12
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