天国の人馬が教えてくれたこと/島田明宏

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2026年01月15日 21:00  netkeiba

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▲作家の島田明宏さん
【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】

 フリーアナウンサーの久米宏さんが、肺がんのため元日に亡くなっていたことが報じられた。81歳だった。

 私が学生時代にテレビ番組のリサーチャーの仕事を始めたばかりのころ、テレビ朝日の「ニュースステーション」がスタートした。そのお天気コーナーに、様々な分野の職人が自身の経験から天気を予測するというパートがあり、私はそのリサーチャーのひとりでもあった。私のような末端のスタッフは制作会社での勤務がほとんどだったので、メインキャスターの久米さんと話す機会はなかったのだが、何度か挨拶だけは交わした。

 細くて、背の高い人だな、というのが第一印象で、思い出すのは笑顔ばかりだ。

 1980年代後半のことだった。

 あのころは、久米さんと、TBS「ニュース22プライムタイム」の森本毅郎さん、フジテレビ「FNN DATE LINE」の露木茂さんら、夜のニュース番組の大物キャスターが鎬を削る時代だった。

 以前ここにも書いたように、私は「FNN DATE LINE」のスタッフとして働いていたときに競馬を覚えた。露木さんとは毎日顔を合わせていたし、後年私が紙媒体の物書きになり、オグリキャップの振り返りものを書いたとき、取材対象になってもらったこともある。森本さんにもインタビューしたことがあるので、考えてみれば、この「ビッグスリー」で膝を突き合わせたことがないのは久米さんだけだ。

 私にとって久米さんは、ずっと一方的に憧れる存在だった。人に私の下の名の「明宏」がどんな字なのか説明するとき、「明るいに、久米宏の宏です」と言っていた。大学と学部を選ぶときにも影響されたし、将来何になりたいか訊かれると「アナウンサー」と答えていたのも久米さんに憧れていたからだった。

 久米さん、安らかにお眠りください。

 訃報がつづくが、1999年の桜花賞馬プリモディーネが1月7日に世を去っていたことも今週報じられた。30歳だった。

 繋養先のサンシャイン牧場で、老衰による起立不全のため永眠したという。

 前述した桜花賞は、騎乗した福永祐一現調教師にとってGI初制覇となった、記念すべき一戦だ。

 プリモディーネは現役引退後、アメリカで繁殖牝馬として過ごしたのち、2015年に故郷のサンシャイン牧場に戻ってきた。同牧場の伊達泰明代表が「プリモディーネは多くの子を遺してくれています。その子たちをはじめとするサンシャインの馬たちとともに、これからも高みを目指してまいります」とコメントしているように、この牝系はますます枝葉をひろげていきそうだ。

 プリモディーネの4代母で、フランス産のソーダストリームというのが大変な名牝で、産駒のアローエクスプレスとサンシャインボーイが種牡馬になっている。これらの姉のミオソチスは、中央から地方に移籍したとき、詩人・競馬コラムニストとして知られる寺山修司が「草競馬に落ちる」と表現したことで、地方の騎手だった森誉から抗議され、2人の交流が始まったという逸話がある。

 そのソーダストリームにモンタヴァルを配合して、プリモディーネの3代母モンナバンナが生まれたわけだが、同じくフランスで生まれたこのモンタヴァルも様々なエピソードを持つ種馬だ。

 寺山は『優駿』に「モンタヴァル一家の血の呪いについて」というエッセイをしたためるなどし、今、ステイゴールドのファンがその血を引く馬たちを父系のつながりでも「一族」と呼ぶのと同じように「モンタヴァル一族」と表現していた。

 昨年亡くなったみのもんたさんは、その芸名をモンタヴァル産駒のモンタサンから取ったという。寺山も、10年前に世を去った大橋巨泉さんも、モンタサンを贔屓にしていた。

 また、先週の本稿に書いた、モーリスの4代母メジロボサツも、このモンタヴァルの産駒である。

 古い資料を引っくり返していると、一昨年亡くなった小倉智明さんがライターとして記したものが出てきたりと、競馬好きの著名なキャスターがたくさんいたことがあらためてわかる。

 天国のプリモディーネが、そうした背景を、自らの血筋を通じて教えてくれた。

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