コーダーはもういらない。いま必要とされるのは「問題解決者」としてのエンジニア

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2026年01月23日 08:10  @IT

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リオス氏

 AI(人工知能)がコーディングを代替し、ITエンジニアは不要になるのではないかという議論が高まる中、エンジニアは自身の役割とキャリアをどのように再定義すべきだろうか。


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 「Clarisカンファレンス2025」のために来日したClaris International(以降、Claris)CEOのRyan McCann(ライアン・マッキャン)氏、プロダクト マネージャーのRonnie Rios(ロニー・リオス)氏、そしてソフトウェアエンジニアのDerek Lee(デレク・リー)氏の三方に、ローコード開発とAI開発の違い、AI時代にエンジニアが持つべきスキルセットなどを伺った。


●ローコード開発ツールとAIによる開発の差別化


 生成AIによる自動コーディング技術の進化は著しく、簡単なアプリケーションであればフルコードの知識なしに生成が可能だ。この状況下で、ローコード開発ツール「FileMaker」はどのようにAIとの差別化を図るのだろうか。


 マッキャン氏は、従来のアプリ構築が「デターミニスティック(確定的)な積み重ね」であったのに対し、AIの発展により、固定的な手順を経ずに「パッと」ソリューションを出せるようになったというパラダイムの変化を指摘する。


 アプリの構成要素は「データベース」「インタフェース」「ツール」「レポーティング」に集約され、AIは「情報の収集、保管、生成、表面化」といった処理にたけている。


 しかし多くの組織がAIを導入しようとする際、依然としてセキュリティ、技術の理解力、可用性といった障害に直面している。特に、AIの応答が「どこまで正確で、文脈に即しているか」「実証可能なデータに基づいているか」といった「信頼性」については、まだ不確実な点が多く、AIに全てを委ねるには、これらの要素をクリアする必要があると述べる。


 マッキャン氏は前回取材でも、「バイブコーディングには信頼性が欠けており、ビジネスで使えるセキュアでプライバシー保護されたエンタープライズ規模のアプリはまだAIにはまかせられない」と力説した。


 AI活用によるメリットは大きいものの、全てを任せるにはまだ「信頼性」の面で懸念がある、というのが現時点での見解だ。


●AIの進化が進むと、ローコード開発ツールはいらなくなりますか?


 ここで少しイジワルな質問をしてみた。


 2025年秋現在、個人が使うレベルのアプリはAIでも作れるようになった。エンタープライズ規模のアプリ構築においてはAIによる開発には信頼性の点で懸念があるとのことだが、AIの進化が進んだら、将来的にはローコード開発ツールが不要になる可能性があるのではないか、と。


 マッキャン氏は真剣な表情で「答えはノー」と即答した。


 マッキャン氏は、ローコード開発ツールが今後も必要とされる最大の理由として、AIが代替できない「ミッションクリティカルな問題解決」のニーズを挙げる。


 企業経営や事業のビジネス課題を解決し、組織全体に横展開できるソリューションは、単なるAIによるノーコードソリューションや自動コーディングでは不十分である。ローコード開発ツールは、セキュリティ、信頼性、精度を高いレベルで保証するため、AIが全てに取って代わる世界は描いていないという。


 リオス氏もこの見解を支持し、自身の経験から「オートメーション化が進んでも、手動でやる方が早い領域は存在する」と例証する。


 「私は自宅やオフィスのオートメーション化をどんどん進めています。オフィスに入ればライトが勝手に付いて、退出すると勝手に消える。だけど、すぐ電気をつけたい/消したいというときは、手動でやる方が早いんですよ」(リオス氏)


 このことから、AIと人間の手動操作(ローコード開発)の「両方が必要とされる世界」が存在し、完全に取って代わられることはないという見解を示している。


●AI時代のエンジニアに求められる「分野」のシフト


 AIの進化に伴い、「エンジニアの仕事はなくなるのではないか」という懸念がITエンジニアの間で広がっている。これに対し、Clarisの経営陣は「誤解である」と断言し、エンジニアが今後強化すべきスキルについて具体的に言及した。


 マッキャン氏によれば、エンジニアの需要は健在である。


 「エンジニアの仕事がなくなってしまうのではないかとよく言われますが、それは誤解だと私は感じています。ただ、エンジニアリングの『分野』がちょっと変わってきている。そのシフトはあるでしょう」(マッキャン氏)


 マッキャン氏が考える「分野のシフト」とは役割の変化である。


 「エンジニアは『課題解決者』に変化してほしいと考えています。課題は何なのか理解を深めて、技術を応用して解決する。この能力にAIが組み合わさることによって、成長していくのだろうと考えています」(マッキャン氏)


 リオス氏もマッキャン氏と同意見だ。FileMakerの開発者コミュニティーを例に挙げ、「彼らは、自分をコーダーではなく問題解決者と自認している」という。


 「コミュニティーの開発者たちは、組織のデータフローや事業のプロセス、それをどう組み合わせればうまく機能するかについて理解を一番持っています。このスキルこそが、AI時代において生産性を向上させ、素晴らしい体験を作り上げる強みになると思います」(リオス氏)


 リオス氏は、AI時代にエンジニアが強化すべきスキルは、プログラミングスキルそのものではなく「思考能力」であると指摘する。


 「AIは優秀ですが、人間よりも思考力があるわけではないと思います。AIを使って成功しているエンジニアたちを見ていると、彼らは自分の思考能力を駆使して、そこにAIの潜在性をうまくかみ合わせています。『考える能力』『分析する能力』『理解する能力』――いまだからこそ、こういった能力が前よりももっと求められるんじゃないかと思います」(リオス氏)


 ソフトウェアエンジニアのリー氏も、「ローコードでも、もっと大きいスケーラブルなコードでも、どこまでコンセプトを理解する能力があるかが問われます」とコメントした。


●ワクワクしようよ!


 最後に、マッキャン氏、リオス氏から@IT読者にメッセージを頂いた。ビジネスのトップであり、アメリカンフットボールの選手でもあるマッキャン氏からは、行動を促す力強いアドバイスだ。


 「コードを書くというところにとどまらず、ビジネスの課題解決を自分がするんだというふうに意識を改革していただくといいと思います。自分の仕事がなくなるのではと心配な方は、こちらの側の光の当たる明るい方向に来てください。プラットフォームを使いこなして問題を解決しようという思考力があればできることがたくさんあります。課題は永遠にあるので、その解決をぜひ、皆さんに担っていただきたいと思います」(マッキャン氏)


 自身もエンジニアであるリオス氏のメッセージは優しい。


 「数年前まではSFの世界じゃないかと思っていたアプリが作れるようになったし、子どものころ夢に描いていたこともテクノロジーで実現できるようになりました。私たちはいま、最もワクワクする時代にいるんだって思っていただけたらいいなと思います。テクノロジーに身を置くものとして、皆さんにはワクワクしてほしいな」(リオス氏)



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