写真不況や物価高、そして副業解禁する会社も増え、いまブームとなっている“スキマバイト”。『タイミー』や、『シェアフル』などに代表されるように、アプリでサクっと申し込み、どんな人でもすぐ勤務できるという働き方はとても魅力的です。
「大人のキッザニア感覚で働ける」「気分転換になる」「暇な時間を有効的に使える」……ライター歴15年、40代主婦の筆者もそんな噂に魅せられ、この物価高の中、生活費の足しにとスキマバイトに手を出すことにしました。
しかし、それは想像以上に、就業までのハードルが高く、自身の無能さを思い知らされるものでした。
◆アプリをDL。日雇いバイトより確かに便利
数あるアプリの中から筆者が導入したのは『タイミー』。大手で仕事数があるのが一番の魅力です。「明日から働いてやる!」そんな意気込みで、胸をワクワクさせながら必要事項を入力し、お仕事を検索したのでした。
タイミーでは、自宅など設定した位置を拠点に、近い場所からお仕事探しができます。筆者は学生時代、日雇いの仕事に何度か入ったことはありますが、その時は一方的に仕事先を決められ、往復3時間かかるところを指定されたこともありました。それを考えると、自分で選べるというのは便利なシステムです。
◆エントリーできる仕事が全然ない!
しかし、検索して出てきたお仕事一覧に愕然としました。「(保育士、美容師、介護士など)資格取得者のみ」「レジ経験者のみ」「当チェーンで勤務経験者のみ」……こんな記述ばかりで、エントリーできる仕事はほとんどありません。
当方、レジ経験はあるものの、それは高校生時代のもの。おそるおそる申し込みをしようとするも、詳細には「直近5年以内のレジ経験者」という注釈が。
レジのシステムは昔の方が難しかったため、やればできそうな気がしないでもないですが、ブランクもありますし、こんな但し書きをされては断念せざるをえません。
結局、直近1週間のスキマ時間を埋めることもできず、選り好みはせずにとにかく自分が入ることのできる仕事を探すことにしたのでした。
◆職歴が役に立たない。選別される立場と実感
その後、検索範囲を自宅から20キロに広げてみたものの、都合のいい時間に入ることができる案件はしばらく見つかりませんでした。
あるといえばあるのですが、「未経験者歓迎」をうたっていても、「20代女性が活躍中!」(ファッション系のショップ店員や呼び込み系など)「男性が活躍しています」(力仕事など)と、40代無資格の主婦を門前払いするような文言が並べられているのです。
仕事がたくさんある街中や、倉庫街や工場のある港湾地区はもしかしたら違うかもしれませんが、少なくとも私が住む都内のベッドタウン周辺ではできる仕事がほとんどなかったのです。筆者はライター歴15年、主婦歴10年、その前は丸の内の大企業に勤めていたこともありました。
しかし、このスキマバイト市場ではその実績は何の役にも立たないことを実感しました。「この私の貴重な暇時間を有効活用してやろう」などというおごり高ぶった考えを持っていた自分がはずかしくなるくらいです。
つまり、仕事をさせていただくために、選別される立場なのです。仕事を発注する立場から言えば、誰が来るかもわからないのですから、できる限り使えそうな人を求めるのは当然なのですが。
◆やっと見つけた! しかし「条件あり」
毎日のようにお仕事探しを繰り返したところ、近所の食品工場で無資格でも可能な大量募集案件を見つけることが出来ました。
ただ、ひとつだけ問題が。これも、「条件アリ」の募集だったのです。それは食品を扱う仕事ということもあり、「検便陰性者のみ」「Good率90%以上」ということ。
「検便陰性者」というのは、タイミーが無料で提供してくれるキットで検査をし、そこで赤痢菌などの菌を保有しているかどうかを確認するものです。申し込んでから結果到着まで、10日ほどかかります。募集案件の日時まで、まだまだ時間があったので、さっそく申し込みました。
そして、厄介なのが「Good率90%以上」という条件。初心者の場合はどうなんでしょう? 案件によっては、初心者の場合は例外的に免除されるところもありますが、当該の仕事にそんな文言の記載はありません。
システム的に申込できそうでしたが、ビビりな私は、勤務日時までにどこでもいいので「未経験者可」の所を探し、申し込むことにしました。
◆やっと初仕事申し込み完了。しかし……
他、タイミー募集案件の数々を見て感じたのは、資格以上に持ち物や身だしなみの制限があるところが多いことでした。
「染髪不可」はもちろん、服装規定として「黒のスラックス」「白のYシャツ」「黒のカーディガン」が多いこと。倉庫などの仕事では「安全靴」「滑り止め付きの軍手」や「筆記用具」も持ち物として記載があります。
筆者は幸い一通りもっていますが、もしなければ「黒のスラックス」「白のYシャツ」「黒のカーディガン」だけでも、全部揃えたら1万円近くなってしまうところでした。
仕事の発注側からすれば、現場にボロボロのカジュアルな服装で来られても困るでしょうし、あらかじめ制限をかけておいた方が安全なのは理解できます。ただ、金欠が理由で仕事をするのに日給分以上のものを揃えることになると、それだけで尻込みしてしまう人も出てくるでしょう。
◆結局「気楽に仕事」は甘かった
気楽にスキマ時間を埋めようとはじめたスポットバイトですが、「気楽に仕事」という考えが甘いということ。また、自分がこの市場では無能であり、数多いる人間の中のひとりであることを思い知らされました。それだけで勉強の価値はありました。
申し込んだ食品工場の仕事を無事こなすことができたら、また見える世界も違ってくるのかもしれません。
<文・写真/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦