サッカー日本代表U21世代がU23アジアカップ優勝のなぜ 若い選手たちの成長スピードが速い

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2026年01月28日 09:50  webスポルティーバ

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 サウジアラビアで行なわれたAFC U23アジアカップで、日本が優勝。今回21歳以下のチームで臨んだ日本は、なぜ2歳年上の相手たちを上回ることができたのか? 現地取材のライターがレポートする。

【過去に苦戦してきた2歳差の大会に優勝】

 1月25日、AFC U23アジアカップ サウジアラビア2026の決勝が行なわれ、日本は中国代表を4−0で下し、歴代最多となる3度目の優勝を飾った。

 このU23アジアカップは2年に1度開催されていて、五輪イヤーに行なわれる時は本大会への出場をかけたアジア最終予選を兼ねる。つまり、2大会に1度五輪予選となり、今回のように五輪開催の狭間にあたる年の大会は、ほとんどの国が23歳以下の選手たちを強化する場にあててきた。

 しかし、日本は狭間の大会でも五輪世代の強化を目的とし、23歳以下の大会に2歳年下にあたるU-21世代で参戦。そのスタンスはここ何年も変えていない。ただ、結果を残すのは難しく、過去の大会ではパワーやフィジカルで上回る難敵に苦渋を舐めさせられてきた。

 実際に森保一監督が率いた2018年大会は、板倉滉や伊藤洋輝といった東京五輪世代の選手が出場しながらベスト8で敗退。大岩剛監督が率いた2022年大会は、鈴木唯人や鈴木彩艶らパリ五輪世代が出場したが3位に終わっている。

「年齢は関係ない」とスタッフも選手も口にするが、2歳上の相手に勝ちきるのは至難の業。

 だが今回、若き日本代表は今まで何度も跳ね返されてきた壁を跳ね返し、最高の結果を掴んだ。2歳上の相手にも全く動じず、個々の力でもチーム力でも相手を上回った。

 なぜこれだけ圧倒的な力を示せたのか。その背景には、選手の成長スピードが加速している点がある。

【すでに海外組、A代表組もいる世代】

 前回のパリ五輪世代は2022年大会の開幕を迎える時点で、A代表デビューを果たしている選手がひとりもいなかった。しかし、今大会に参加したロス五輪世代ではすでにMF佐藤龍之介(FC東京)とMF大関友翔(川崎)がデビューを飾っており、佐藤に関しては今年6月のW杯出場を視野に入れるほどの力を持つ。

 また、前回のパリ五輪世代が臨んだ2022年大会は6月開催だったが、今回は1月。こうした時期の差を踏まえても、今回のロス五輪世代は明らかに前倒しで次のステージに進んでいる印象が強い。

 この世代がU-20W杯やU-17W杯に出場して経験を積めたことも大きく、若くして海外で活躍する選手も増えていて、今回、国内組で組んだ選手たちにもいい刺激を与えている。

 FW後藤啓介(シント=トロイデン)やFW塩貝健人(ヴォルフスブルク)といった世代屈指のストライカーや、19歳で5大リーグ挑戦を勝ち取った左SB小杉啓太(フランクフルト)といった実力者が、今回は不在だった。そのほかにも多くの海外組が、シーズン中の関係で出場が見送られている。加えて、今回は負傷で参加できなかったが、昨年7月のE-1選手権でA代表デビューを飾ったGKピサノ アレクサンドレ幸冬堀尾(名古屋グランパス)もいる。

 海外組をひとりも招集できなかったとしても、今回のメンバーには今後の飛躍を予感させる選手が大勢いた。彼らは海外組やA代表デビューを飾った同世代から刺激を受け、当たり前のように次のステージを目指す。しかも、そこをゴールとしておらず、W杯優勝を現実的な目標として捉え、より高い頂に登ろうとして歩みを止めない。そうした好循環のサイクルが、爆発的な成長に結びついたと言えるだろう。

 この世代の最強メンバーを組めなかったとしても、佐藤や大関、DF市原吏音(RB大宮アルディージャ)といった中心選手がチームをまとめ、今大会の最優秀GK賞を受賞した荒木琉偉(ガンバ大阪)、快速ドリブラーFW横山夢樹(セレッソ大阪)、中盤の潰し屋・MF小倉幸成(法政大)、左SB梅木怜(FC今治)らが目覚ましいプレーを見せた。

 昨秋のU-20W杯出場を逃したDF永野修都(藤枝MYFC)も大きく成長。一皮向け、CBとアンカーで計算できる目処がついた。実績がある選手たちのプレーに触発され、経験が浅い大学生組も躍動。プロ注目のアタッカーFW古谷柊介(東京国際大)、190cmの大型右SB小泉佳絃(明治大)、大岩監督から期待を懸けられている187cmのCB岡部タリクカナイ颯斗(東洋大)も結果を残し、今後の可能性を広げた。

 長期間に渡る代表活動のなかで、選手たち発信で世界基準を落とし込めたことも大きい。特に佐藤や大関といったA代表組が目線を下げず、上のレベルを求めて他の選手に要求。試合中に激しく叱咤する姿が何度も見られ、練習でも一つ上の基準で求め続けたことが成長を促した。大岩剛監督も彼らの功績と、周囲への影響をこう語る。

「僕自身、チームの作り方として基準をぶらさないことを求めている。パリ五輪世代の時もそうでした。我々は仲良し集団じゃない。高いレベルの基準を知っている人間が我々のグループの基準を作る。それが代表の基準。いつも言っているから、それについてこられるように他の選手にも求めていく。ポテンシャルを持った選手たちが引っ張ってくれたのは大きかった」

【五輪は狭き門で今後の強化策は難しい】

 こうして、日本サッカー協会の山本昌邦技術委員長兼ナショナルチームダイレクターが提唱する、100人以上の選手を常時招集できる選手層を作る「ラージ100」に一歩近づいたのもプラス材料だ。五輪本大会やその最終予選を兼ねた次回のU23アジアカップがインターナショナルマッチウィーク外で開催される可能性もあるだけに、計算できる選手が増えた事実はチームの強化にとって大きな意味を持つ。

 しかし、ここから先は茨の道となる。

 まず、ロス五輪からは男子サッカー出場枠が全体で12カ国となり、アジア枠は前回の3.5から2に減っている。

 日本は次回のU23アジアカップ開催に立候補する可能性があるが、FIFAからの通告では2027年8月までに五輪予選を終わらせなければならないという。そうなると、U23アジアカップの本大会と予選がこの先1年半の間に入るため、時間が残されていないことがわかる。

 今後の強化試合のマッチメイクも様々な思考を巡らせなければならない。最終予選を見据えてアジアの国と戦うのか、それとも先を見据えて欧州や南米の強豪国と戦うのか。

 五輪出場が決まったとして2027年秋以降に強化試合を組むにしても、出場国以外は五輪世代のチームを有していない状況になる。そうした他国とのバランスを見ながら事を進めなければならず、強化策の舵取りは困難を極めるだろう。

 とはいえ、選手たちの成長スピードが加速し、選手層が拡大されている点は大きい。あとは選手たちが今の力に過信せず、努力を重ねられるか。さらなる成長を貪欲に求めていけば、2年後の五輪は"誰が出ても強い日本"を作り上げることが可能なはずだ。

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