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ビデオやCD、書籍やゲームのレンタル・販売で全国チェーンとなった、「TSUTAYA」(以下、ツタヤ)と「GEO」(以下、ゲオ)。しかし、ここにきて勝ち負けの差がはっきりと出てきた。
好調なのはゲオだ。ゲオのレンタルによる売り上げは、ネットフリックスなどのネット配信業者に市場を奪われ縮小している。しかし、運営会社のゲオホールディングス(以下、ゲオHD)が買収によりグループ会社化した、リサイクル品を主力としたリユースショップ「セカンドストリート」が絶好調だ。年々店舗数を増やしており、特にロードサイド(幹線道路沿い)で存在感を強めている。
一方のツタヤは、店舗の撤退が相次いでいる。書店事業にシフトし、「蔦屋書店」として大型店を増やしているが、2011年7月に運営会社のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)の上場が廃止されて久しい。
さらに、CCCが業界を横断したポイントカードとして開始した「Tポイント」も、三井住友カードが運営する「Vポイント」に統合された。2025年にはCCCの子会社であったVポイント運営会社が三井住友カードに買収されるなど、急速にビジネスが縮小している。
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ツタヤとゲオは、なぜここまで差がついてしまったのか。本稿ではその理由を探りつつ、今後目指すべき方向性を考察してみたい。
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●ゲオHDが好調を維持できる理由は?
東証プライムに上場しているゲオHDの2026年3月期中間決算(2025年4〜9月)は、売上高が過去最高の約2169億円(前年同期比8.6%増)、経常利益は約56億円(同7.1%増)となった。前年の減収減益から持ち直した形だ。コロナ前の2020年3月期中間決算では、売上高約1380億円、経常利益約49億円であったことからも、コロナ前に比べて、売上高を1.5倍に伸ばしていることが分かる。
2025年9月末時点での国内店舗数は、ゲオが1043店舗(2025年3月末比で11店舗減)、セカンドストリート906店舗(同26店舗増)となっている。その他、新品ブランド品の余剰在庫を格安で販売する「ラックラック」が37店舗(同10店舗増)である。
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6年前の店舗数は、現在と数え方が異なるが、ゲオなどメディア系が1212店舗、セカンドストリートなどリユース系が648店舗となっていた。つまり6年前より、ゲオの店舗数は15%ほど減少しているが、セカンドストリートは1.4倍に増えている。セカンドストリートの好調が、ゲオHDの成長エンジンとなっていることが分かる。
ツタヤが毎年大量閉店を繰り返し、DVDのレンタルを行う店舗が全盛期の3割を切る400店舗ほどにまで縮小しているのとは対照的だ。
また、セカンドストリートは、米国や台湾、東南アジア諸国など、海外に積極的に進出している。特に、米国と台湾は50店舗前後となっており、今後も成長が期待できる。6年前は米国に6店舗、マレーシアに3店舗(卸売を含む)だったことからも、急速に店舗数を伸ばしていることが見て取れる。
コロナ後の物価高の影響により、所有物を売って所持金を増やすことが可能なだけでなく、商品を安く購入できるリユース市場が活況だ。これはネットだけでなく、リアルな店舗にも当てはまる。セカンドストリートはその波に乗った形だ。こうした物価高は、海外ではさらに深刻だ。これが海外進出で成果を上げている要因だろう。
ラックラックは2019年4月に1号店を横浜市に、同年7月に2号店を大阪府八尾市に出したばかりだが、現在は37店舗にまで成長している。
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ラックラックのような、売れ残った新品を大幅に値下げして販売する「オフプライスストア」も、物価高や円安で買いづらくなった海外の高級ブランドを安く買えると注目されている業態だ。今後も拡大が予想される。
つまり、セカンドストリートが売り上げを牽引(けんいん)しているうちに、海外市場やオフプライスストアといった次の成長の種を仕込んで展開を始めている。これが現在のゲオHDの姿である。
●ゲオが大量閉店を避けられているワケ
ゲオの特徴は、取扱商品を徐々に変えている点だ。
従来のDVDやCDなどのレンタルや販売は縮小している。それに代わり、スマートホンやPC、タブレットのリユースなどに注力しており、「地域の秋葉原」のような立ち位置を築いている。
ゲオとセカンドストリートは、販売商品が一部重複していることから、ゲオからセカンドストリートへの業態転換も可能だ。つまり、大量閉店せずとも売り上げを立て直せる手段を、ゲオHDは備えているのである。
また、セカンドストリートは、古着やバッグ、服飾雑貨のリサイクル品を中心にしながら、中古の家具や生活家電、宝石・貴金属なども取り扱っている。中古ブランド品買い取りの「買取大吉」や「大黒屋」の専門領域も、セカンドストリートがカバーしている形だ。
セカンドストリートの勢いもあり、ゲオHDは2026年10月1日に社名を「セカンドリテイリング」に変更する予定だ。リユースを最重要ビジネスと位置付け、世界のトッププレイヤーになることを目指している。
●顧客を絞り込んだツタヤ
一方のツタヤは、2010年代初頭の最盛期には約1400店舗を展開していた。全国各地にツタヤがあり、まさに「流行の発信地」といった存在だった。当時はマクドナルドや吉野家、ユニクロや無印良品などに勝るとも劣らない大型ブランドという印象すらあったほどだ。
しかし、特にこの5年間で撤退が相次ぎ、むしろレアなブランドになりつつある。現在、DVDレンタルなどを取り扱う店舗は全国に400店舗ほど残っているが、今後さらに減るだろう。
現在力を入れているのは、祖業でもある書店事業の蔦屋書店で、国内に約30店舗を展開している。自社で運営する商業施設「T-SITE」の核店舗として入居することが多く、本好きやカルチャー志向の人から支持されている。かつてのツタヤに、名作映画から成人向けコンテンツまで、雑多なレンタル作品が並んでいた雰囲気は全く感じられない。ツタヤの衰退は、顧客を絞り込んだ結果とも言えるかもしれない。
また、ツタヤは現在、和歌山や佐賀などで図書館を運営している。このような、行政と取り組む図書館事業がさらに広がれば、社会的インフラとしての機能を担える可能性もある。
●ツタヤが目指すべき方向性は?
さまざまな工夫をしながら事業を維持しているツタヤだが、なぜ勢いに乗ることができないのか。
その理由の一つが、店舗の構成方法にあると筆者は考えている。CCCの系列店には「スターバックスコーヒー」が入っていることが多く、一体化した店も多い(店舗によっては購入前の本を読むことができる)。コーヒーを飲みながら隙間時間に本を読むというアイデアは良いが、他店との差別化は図りづらい。これが、閉店ドミノが止まらない理由の一つだろう。
また、コロナ禍で広がった、リモートワークや個人事業の拠点に使われる「シェアラウンジ」も、新規事業として全国約60カ所で展開している。しかし、オフィス回帰が進んでいることや、複数拠点を使う場合は月額約4万円(個人利用の場合)がかかることから、今後規模が拡大していくとは考えにくい。
ツタヤが目指すべき形の一つは、渋谷スクランブル交差点に面した「QFRONT」ビルの店舗を改装し、2024年4月にオープンした「SHIBUYA TSUTAYA」ではないだろうか。
地下2階・地上8階のおしゃれなビルで、日本全国で閉店が相次いでいる企業の建物という印象は全く感じられない。
SHIBUYA TSUTAYAには、世界中のアニメやハイブランドのポップアップストア、座席数を十分に備えたカフェ、イベントスペースなどがある。コンテンツの発信地と休憩所が融合したような場所となっており、画廊や展示会場に近い業態だ。
CCCは、新しいカルチャーやインフラを作っていくことを理念に掲げている。確かに、足元を見ると、TポイントはVポイントに統合され、コンセプトを絞った書店事業に軸足を移すなど、事業は縮小している。しかし、書店や図書館などの事業やSHIBUYA TSUTAYAの展開など、新たなカルチャー創出にかじを切っているのも事実だ。このまま縮小を重ね、市場から完全撤退とならないよう、今後のさらなる改革に期待したい。
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(長浜淳之介)
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