
2月16日から確定申告の受付がはじまる。弥生は確定申告シーズンを前に、AIを活用した新たな申告が可能になることを訴求した。
個人事業主やフリーランスが確定申告で直面している課題として、「面倒」「難しい」「不安」を挙げ、同社の申告ソフトを通じて、これらを解決できるとする。
●確定申告の「面倒・難しい・不安」をAIで解消
弥生では、2026年2月9日に開催した事業戦略説明会において、確定申告の際に同社製品における最新のAI活用事例を取り上げた。
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ゲストとして登壇した芸人のキンタロー。さんは、「これまでは、AIに旦那のグチをつぶやいて、納得のいく答えもらって喜んでいたが、AIの真骨頂はここではない。AIに無駄な力を使わせていた。AIの正しい使い方をしたいと思った」と語り、会場を沸かせた。
キンタロー。さんは、2024年に個人事務所を設立し、弥生のクラウド請求書作成ソフト「Misoca(ミソカ)」をのユーザーでもあるという。「イチローのものまね芸人であるニッチローさんに勧めてもらった。周囲の人からは『請求書発行が早いですね』と言われる」というエピソードを披露した。
「もともと、紙の領収書の整理が苦手で、確定申告と聞くと早くやらなくちゃいけないと思い、憂鬱(ゆううつ)な気持ちになる。ネタを考える脳と、事務作業をする脳は回路が違う。脳の切り替えと作業時間の確保は強敵である」とした。
同社は確定申告を「面倒、難しい、不安」から、「楽に、かんたんに、安心に」に変えることができる3つのキープロダクトとして、「やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンライン」「スマート証憑管理」「スマート取引取込」を紹介した。
スマート証憑管理では、請求書や領収書、スマホで撮影した書類などをアップロードするだけでデータ化して読み込みが完了し、手による入力は不要になるという。
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例えば、PDFの書類をアップロードすると弥生のAIが瞬時に解析し、日付や金額などを自動的に読み込むことができるのに加え、AI-OCRによる自動仕訳も行う。取り込んだ書類は、紙での管理が不要になるため、紛失の心配がないというメリットがある。
スマート取引取込では、銀行口座やクレジットカードのデータを自動で取り込み、AIが勘定科目を推測して、自動仕訳候補を生成する。作業時間は最大90%削減でき、手入力や計算ミスの削減もできるという。仮に取り込んだデータに修正が必要な場合にも簡単に作業が行える。
弥生 NEXT Business Unit クラウド成長推進部 経理財務GTMチーム リーダーの喜多佑介さんは、「銀行口座やクレジットカードとの連携により、通帳から書き写す作業は不要になる。AIの力を使うことで勘定科目を推測し、すぐに登録ができる」とした。
そして、「やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンライン」では、行う作業を明確にするガイド機能の搭載や、作業進捗の可視化機能などを提供している。e-Taxとの連携により、提出までを自宅で完了できるという。
喜多さんは「確定申告のボタンをクリックすると、後は質問に答えるだけで決算書や申告書を作成できる。マイナポータルと連携して本人確認を行い、控除額の明細を取得できる。住宅の売買や株式の売買、その他の所得があった場合も、ガイダンスに則って作業を進めることで、特定の書類の作成が可能だ。確定申告書類が完成すると、そのまま提出できて申告作業が完了する。弥生の申告ソフトは、マイナポータルに完全対応しており、これが新たな形となる。紙の証明書を探す手間も入力する必要もない。入力ゼロに近づくことができた」としている。
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今回のデモンストレーションでは、ふるさと納税への申告を容易にする機能も紹介した。
ふるさと納税を行った際には、確定申告において寄付先ごとに金額を入力したり、マイナポータルとの連携設定を行ったりといった手続きが必要だが、これが面倒であるという声が多く、さらに申告後に控除が反映されたか確認しづらいなどの課題も指摘されている。
同社は「ふるさと納税が、確定申告の面倒さを膨らませている」と指摘する。
キンタロー。さんは、「周囲の人からふるさと納税を勧められるが、確定申告でやることが増えてしまう。そんな余裕はないのでやっていない」とし、「ふるさと納税は、準備を万端にできる人、丁寧な暮らしをしている人、余裕がある人しかできないというイメージがある」と述べた。
弥生ではマイナポータル連携を活用し、スマホなどにマイナンバーカードをかざすだけで、国税庁のデータと自動的に連携。控除額などを自動で取得し、一覧で自動入力できるという。証明書を探したり、手入力のミスがなくなったりするというメリットもあるという。
同社は確定申告の作業が「面倒」な原因として、作業時間の確保や、帳簿の作成および整理、控除申請への対応など、作業負担が多く、事務作業のための時間を捻出する難しさが背景にあると指摘する。
また「難しい」では、どこから手をつけていいのかという初動の迷いや、頻繁に変わる税制への対応、複雑な計算ロジックなどの専門知識の壁があることを挙げた。さらに「不安」では、計算ミスや申告漏れ、個人情報やマイナンバー情報などを取り扱うセキュリティに対する懸念があるという。
同社のAI機能を活用することで、こういった課題の解決が可能であるとした。
●クラウド一辺倒からの脱却 弥生がデスクトップ製品に再注力する理由
同社の武藤健一郎社長兼CEOは、2026年度事業戦略を発表した。「2026年度は、『知とテクノロジー』に注力する。350万社の顧客基盤と、日本一の士業ネットワーク、蓄積したデータ、サポート体制といった当社の強みと、当社ならではのユニークなAIを融合することで、あらゆる事業者の業務効率化、経営判断支援をサポートし、経営体験の革新を図る」とした。
弥生ならではのAIテクノロジーへの取り組みとして、3つのA(スリーエイ)を掲げた。
1つ目のAは、業務の実行代行を行う「Automate」である。エージェントが業務を代行するものになるという。
「会計業務は、紙の領収書や請求書などをスキャンしてデータ化し、仕訳して会計システムに入力するという部分に手間と時間がかかる。ここをAIがやってしまうことになる。しかも、蓄積したデータを元に、個別の企業に合った仕訳を行うことができる」という。
2つ目のAは、判断や実行をサポートする「Assist」だ。全ての業務を自動化することを嫌うユーザーに対して、自らやりたい仕事をAIがアシストする役割を担うという。
「操作が分からないときには、弥生に寄せられる毎日数千件の問い合わせデータを蓄積した結果からAIが最適な回答を行う。初めての業務も、AIと一緒になって解決することができる」とする。
逆に「Assistに関しては何度も実験を行い、失敗も繰り返してきた。例えばボイスボットは、その最たるものだ。スムーズな対話ができないという課題があり、現在は作り直しをしている」という。
そして、3つ目のAが、助言やガイドを行う「Advise」である。
経営支援を行う機能であり、弥生が蓄積してきた350万社のデータを活用することで実現している。その具体例の1つが、資金繰り予測だ。AI予測によって、6カ月後までの現預金高を表示し、これに基づいて資金調達の手段も提案する。
「3Aのうち、AutomateやAssistは、他社でもやっており、差別化にはならない。だが、利用者の期待値であり、当社としてもやらなくてはならない部分である。その一方で、Adviseは他社にはできない当社特有の部分になる。長年培ってきたデータをベースに、企業ごとに個別のアドバイスが行える。弥生の3Aは使えば使うほど、AIが学習し、提供価値が拡大する」と述べた。
その一方で、2026年度において同社が取り組む大きな方針転換の1つに、デスクトップ製品に改めて注力する姿勢を明確にしたことが挙げられる。
同社では、2025年4月の弥生会計Nextの発売に合わせてクラウドシフトを鮮明に打ち出していたが、2026年度はデスクトップ製品の強化を進め、ここにもAIの恩恵を届けることになるという。
武藤社長兼CEOは「私が社長に就任した際には、株主であるKKRジャパンから、クラウド製品だけて見ていればいいと言われたが、デスクトップ製品には根強い需要があり、そこに当社の強みがあることに気が付いた」と語る。
会計ソフトウェア市場におけるデスクトップ製品の構成比は、依然として約60%を占めており、新規ユーザーでも約40%がデスクトップ製品を選んでいるという。「デスクトップ型弥生の有償契約数は、前年比でも増加している。Excelを動かすようにサクサクと動くこと、慣れたUIであること、さまざまなお客様の要望に応えることができるカスタマイズ性があることが評価されている」という。
同社は2026年度において、クラウド型やデスクトップ型を問わずにAIを実装し、利用者のITリテラシーを問わずに最適な形でAIを利用できる環境も提供するという。
「AIはクラウド型だけで利用するものではなく、デスクトップ型でも利用できる環境を作る。AIによって価値を受け取れる世界を構築したい。誰もがテクノロジーの恩恵を受けられる社会になることを目指す」と語った。
●武藤社長が語る「骨格」から「血流」へ
武藤社長兼CEOは、2025年度の取り組みについても振り返った。
「2025年度は『新生弥生』として、スタートラインに立つための1年だった」とし、業務効率化を支援する「現場に力を」、経営判断支援を行うための「経営に可能性を」、BU制への移行などを含む「組織」という3点で強化を図ったとする。
「現場に力を」および「経営に可能性を」においては、 2025年4月から提供を開始した「弥生会計Next」を挙げる。クラウドでの利用を前提とした製品で、完全自動化による業務の効率化を実現すると共に、「資金分析β版」などのAI経営支援機能を実装している。
弥生会計Nextのこれまでの手応えについて、武藤社長兼CEOは「当初計画を上回っているが、さらに伸ばしていきたい」と意欲をみせた。
また、2025年度中に、3社のM&Aを実施し、「下地の強化」を実現。業務効率化や経営判断支援を加速しているという。
具体的には、2025年6月に経費精算プロセスをAIで自動化するプラットフォームを提供するMiletosを傘下に収めた他、2025年7月にFintechサービスを提供するAlarmboxを買収し、企業調査ができる「パワーサーチfor弥生ユーザー」や、中小企業向けの売掛金保証サービスである「ギャランティfor弥生ユーザー」を提供している。
さらに2025年8月には、起業直後の法人や個人事業主を対象に、創業や資金調達/開業/経営支援に関する情報およびツールの提供を行う創業手帳がグループ入りしている。
組織の強化では、BU制へと移行したことを指摘する。これにより、クラウド型の弥生Next、デスクトップ型の弥生、新たな事業を担当するInnovation Xという3つの事業を、それぞれ独立した組織で推進する体制を敷いた。
また、「弥生Style」と呼ぶ人事ポリシーを施行した。評価や育成などの仕組みを、新たなミッションやビジョンに合わせて変更したという。
さらに、社内でのAI活用の促進にも取り組み、全社員に生成AIのアカウントを付与することで、コールセンターでのAI活用による業務の効率化や、開発現場での生産性向上を実現したという。一部製品はAIによって、ゼロから開発を進めたといった実績も生まれているそうだ。
武藤社長兼CEOは「弥生を設立してから30年近くを経過するが、その間、中小企業だけを対象にし、中小企業を支援する税理士、会計士とともに、ビジネスをしてきた。この姿勢はこれからも変わらない。中小企業を元気にすることで、日本の好循環を作ることをミッションに掲げている。
一方で、この1年での変化は従来の『事業コンシェルジュ』によるお客さまのニーズに沿ったモノ作りやサービス提供ではなく、能動的に動き、より積極的に元気にやっていく体制に移行したことである。30年近くの経験と知識、パートナーシップを活用し、その上にテクノロジーを乗せて、業務の効率化と経営判断支援を行っていくことが、弥生のありたい姿である」と述べた。
このような取り組みを振り返りながら、「2025年度はプロダクト、グループ、組織といった基盤を整える、骨格を作り上げた1年であった。2026年度は強固な基盤にAIやデータを巡らせて事業に血を通わせ、躍動させていくことになる。2025年度に築き上げた『骨格』をもとに、2026年度は『血流』に挑む」と語った。
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