
ミラノ・コルティナ五輪は大会の折り返しに差し掛かっている。連日の取材で開会式、フィギュアスケート、女子アイスホッケー、スピードスケートと会場を練り歩き、原稿を執筆する連続。さすがに消耗したので、大会後半に向けて1日、ホテルで作業することに決め、何気なくテレビをつけた。
画面のなかでは、実況と解説がリュージュ男女それぞれの2人乗りにずっと大興奮だった。イタリアはリュージュが強い。男子はエマヌエル・リーダー/シモン・カインツワルドナー、女子(今回からの新競技)はアンドレア・ヴォッター/マリオン・オベルホファーが揃って金メダルを獲得する快挙だった。
おそらくリュージュは日本で深掘りされていないだろう。各競技の関心のウェイトは、お国柄が濃厚に出る。
たとえば、銅メダル獲得で日本では大騒ぎになっていたであろうスキージャンプ混合団体など、イタリアではあまり注目されていなかった。ほとんどの日本人がリュージュの金メダリストを知らないように、ほとんどのイタリア人は高梨沙羅が誰かわからない。これもオリンピックのひとつの真実だろう。同じスキーでも、イタリアではアルペンのほうがはるかに人気だ。
翌日のイタリア最大のスポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の一面は、リュージュの4人だった。「ファンタスティック4」(4人だとこの表現になりがち)と称賛され、特集記事が組まれていた。
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日本では、どれだけの人がボブスレー、リュージュ、スケルトンの違いを正しく説明し、それぞれ選手の名前を挙げられるだろうか。ちなみにボブスレー男子2人乗りでは、日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟が出場資格のルールを誤認するというミスを犯し、選手は出場できなくなってしまった。日本で注目を集めるスポーツだけがすべてではない。
午後、散歩がてら外を歩いてみたが、開会式から1週間が過ぎた今も、"ミラノという町全体がオリンピックに熱狂しているか"というと、その気配はなかった。ミラノの観光名所、スフォルツェスコ城の周辺はオリンピックイベントも盛んに行なわれていて人出も多かったが、ほとんどが各国からやって来た外国人観光客のようだった。
【突出した選手がいなくてもメダルを獲得】
さまざまな場所での分散開催が、町がオリンピック一色にならない理由でもあるし、たとえばフィギュア男子シングルのチケットは280ユーロ(約5万円)などと安くないのも一因だろう。そもそも、大手スポーツ紙『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、オリンピックが始まっても39ページ中29ページがカルチョ(サッカー)に当てられ、オリンピックはわずか5ページという現状だ。
ただし連日、イタリア人選手が多くのメダルを獲得しており、その姿に興奮したイタリア人が感動を伝えることで、少なくとも会場でのイタリア人選手への声援は日増しに高まっている。それによって選手が奮起するスパイラルだろう。「イッタリア、イッタリア」という国歌をみんなで叫び、ナショナリズムが爆発する"健全な"盛り上がりだ。
12日(現地時間)朝の時点では、メダル獲得数は合計数だとイタリアが13個と、なんと世界1位だった。金銀銅の内訳は金4、銀2、銅7。金はノルウェーの7には及ばないが、オリンピック大国アメリカの4と同数だ。前回、北京五輪でイタリアはメダル17個で、日本の18個と拮抗していたが、今回は地元開催の利点を最大限に生かした躍進ぶりだ。
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フィギュアスケート団体では、突出したポイントゲッターがいなかったにもかかわらず、男女シングル、カップル競技と大きな穴がなく、各選手が死力を絞り出し、銅メダルにつなげた。男子シングル、フリーのマテオ・リッツォの演技など、まさにファンとの一体感のおかげだった。ひとりでも崩れていたらジョージアやカナダの後塵を拝していたはずで、熱気に支えられていた。
アイスホッケー女子では、日本が予選リーグでイタリアと決勝トーナメント進出をかけて対戦したが、2−3と惜しくも敗れている。日本は世界ランキングではイタリアを大きく上回っており、実際に試合も主導権を握っていた。しかし、観衆の声援をバックにしたイタリアの粘り強さに手こずって、思うようにゴールをこじ開けることができなかった。歓喜するイタリアとうなだれる日本のコントラストが印象的だった。
そして12日はアルペンスキー女子スーパー大回転でフェデリカ・ブリニョネ、13日にはスピードスケート女子5000メートルのフランチェスカ・ロロビリジダが金メダルを勝ち取っている。これで、同国の金メダル数はリュージュのふたつ、スピードスケート女子3000メートルのロロブリジダ、ショートトラック混合団体リレーと合わせて6つになった。
ちなみにショートトラック混合団体リレーに35歳で参加したアリアナ・フォンタナは2006年トリノオリンピックからメダルを取り続け、これでイタリア史上最多12個目のメダルを獲得。さらに13日にはショートトラック500メートルでも銀メダルを獲得してその数を13に伸ばし、"伝説"となった。
13日終了時点でのイタリアのメダル獲得数は18。オリンピックに照準を合わせてきたイタリア人選手たちの躍進は、まだまだ続きそうだ。
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