
26日に発表された全国の出生数。去年生まれた子どもは70万人で過去最少を更新しました。そんな中、違う動きを見せたのが「人口のブラックホール」と言われた東京都です。「9年ぶりの出生数プラス」、その背景は「独自の子育て支援」でした。
【アンケート結果を見る】「行政に期待する少子化対策」についてみんなの声は?
「結婚を考えている彼女がいても…」出生数減少の背景は街で聞こえてきたのは、子どもをめぐる切実な声でした。
女性
「今すぐに子どもを産むってなったときは絶対金銭的には大変」
「共働きでもギリギリなんじゃないかな」
男性
「将来的には(子ども)できたらなと思うが、現時点では物価高もあるし」
「家賃の値上がりも最近あるので」
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厚生労働省によりますと、去年1年間に生まれた子どもの数は全国で70万5809人。晩婚化などを背景に、10年連続で過去最少を更新しました。
男性
「結婚を考えている彼女がいる。まだ仕事も安定してなくて養っていけるほどのお金もないので…」
「金銭面が気になるので、保障をもうちょっと手厚くしてもらった方が、結婚に踏み切りやすい」
しかし、全国的な減少傾向に反し、出生数が“増加”に転じた自治体があります。それが東京です。
生後8か月の長女を抱っこする、こちらの女性。元々は川崎市に住んでいましたが、長女が生まれ、去年、東京・品川区に引っ越してきました。
川崎市から都内に移住した女性
「東京の方が神奈川県より子育て支援が手厚いと聞いて引っ越しを決めた」
決め手の1つとなったのは「保育料」です。
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川崎市に住んでいる場合、保育料が無料になるのは国の制度で3歳から5歳まで。0歳から2歳については、一部世帯を除いて自己負担となっています。
一方、品川区の場合、都の制度で0歳から5歳までがすべて無料です。
女性
「(川崎市だと)保育料がちょっと高いというのを聞いて、月5万円ぐらいするはずだったが、こっちだと無料になる」
さらに、品川区ならではの支援も。
女性
「これは保健師さんが持ってきてくれたおむつ」
品川区では、0歳の子どもがいる家庭を支援員が訪問。おむつなどを無料で届ける独自のサポートを行っています。
女性
「おむつとか、おしりふきとかの必需品を提供してくれるので助かっている。第2子とか考えられるようになったら東京にいたいなと思う」
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少子化が深刻な自治体として、“人口のブラックホール”とも呼ばれた東京都。こうした汚名を振り払うべく、都は、給付金や保育料無償化、さらには高校生までの医療費無料など独自の支援策を次々と打ち出してきました。
その成果もあってか、都内の出生数は9年ぶりのプラスに。
26日夜、小池知事は…
東京都・小池百合子 知事
「結婚がリスクであるとか、子育てがリスクであるといったような空気が変化を見せてきていると期待を込めて考えている」
少子化に歯止めはかけられるのか?独自の支援策に力を入れる自治体は、東京以外にも…
都心から車で1時間ちょっと。牛久大仏も見える茨城県阿見町です。
子育て支援や住宅地の開発を進めた結果、30代前後の世帯が多く移り住み、出生数は5年間で30人ほど増えました。
町内にある小学校は8年前に増築。半数以上が町外から来た子どもです。
子供たちの楽しみの一つの給食。ここにも“独自の支援策”が隠れていました。
小学校の給食費は月4100円ですが、阿見町の小中学校では、第2子以降は無料。さらに、ランドセルも無料で支給。医療費も高校生まで無料です。
支援の手は、こんなものにも。中学校の制服や体操服の購入には、2万円分が補助されます。
阿見町の住民
「入学に向けて制服や自転車など、購入する金額が大きいのでとても有り難い」
また、阿見町が人気な理由はほかにも…
阿見町の住民(子ども3人)
「主人は(東京に)通勤するという形で茨城に住むことになった」
それは、都心へのアクセスのしやすさ。電車などで約1時間もあれば、都内への通勤も可能という立地も人が集まる理由です。
阿見町の住民
「子育て世代が増えているとは思う。周りに同世代の方が多いのは、子育てしていく中で助け合えるというか、心強いなとは感じる」
藤森祥平キャスター:
東京都の手厚い支援を見ていきます。
【東京都の主な子育て支援】
▼無償化
・保育料
・高校
▼一部助成
・不妊治療費
▼一律給付
・018サポート 月額5000円支給
・赤ちゃんファーストギフト10万円相当
東京都は2026年度の当初予算案に「チルドレンファースト予算」を2.2兆円計上しています。これは前年度から2000億円積み増しされています。
神奈川県の2026年度当初予算案の一般会計全体は2兆3700億円。ほぼ一緒です。
小川彩佳キャスター:
豊富な財源があるからこそ、できる支援ですね。
教育経済学者 中室牧子さん:
子育てや教育に地方自治体や政府がお金をつけてくれるのは望ましいことだと思いますが、東京都の税収は法人税が多いんです。法人税は景気に非常に大きく左右されます。
今は税収が多いから大きくお金をつけられるが、税収が減ったら少なくなる。子育ては0歳から20歳までずっと継続して育てていかなければならないので、保護者の方からすると安定的にお金をつけてもらえることが重要。持続可能性も見ていく必要があると思います。
藤森キャスター:
一方、周辺の自治体の出生数は下がり続けています。東京都と比べて格差を感じている人たちの声を聞きました。
川崎市民
「特に一番、高校(無償化)のところがこの子たちが大きくなると気になって。産むときも(東京の)友達はいろいろ支援があった」
「いろんなイベント事とかあっても、結局、東京に行ってしまうことが多いので便利だなとは思います」
「東京都民にはなってみたいなと思うんですけど、家賃が高いなってイメージが根強い。(支援を)もっと増やして欲しいな」
小川キャスター:
結局、産み育てたいという思いと、その予定があった方たちが東京に移動しただけのようにも感じてしまいます。全国で見ると出生数は減り続けているので、東京だけ増えることが喜ばしいかというと、そうではないですよね。
中室牧子さん:
元々子供を持とうと思っていた人が東京に流入してるだけではないかというふうに見られますね。なのでやっぱり、全国でどうなってるかが大事ですし、もう一つは長期的なトレンドがどうなっているかも非常に重要だと思います。
過去の経済学の研究によると、例えば育休の給付や児童手当といった現金給付が、出生数に与える影響はあまり大きくないと言われています。
10万円、20万円(の給付)で子供を産もうと思う人はあまり多くないが、1000万円のような金額になると「もう1人産もう」となる。もし現金給付といった手当で少子化を改善するなら、相当大きな額の支出をしないと出生数の改善には繋がらないのではないかと思う。
一方で、子供を育てるには「時間」や「体力」がどうしても必要になります。これはなかなかお金で買えない。やはり保育所をきちんと整備するとか、男性の育休をきちんと取ってもらえるようにするとか、そういったことの方が出生数を改善する効果が大きいという研究もある。こうした支援もしっかりやっていく必要があると思う。
小川キャスター:
支援の格差を国がどう見るか。そのメッセージをもっと聞きたいなと感じます。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
