
昔からなくなることがない、既婚男性が独身と偽り女性と交際する「独身偽装」。まして、SNSで知らない者同士が簡単にコンタクトを取れる現代。“婚活ツール”として浸透しているマッチングアプリを使っての出会いでは、「独身偽装」がより簡単に、そして巧妙になっている。
悪質な独身偽装
パートナー探しをする女性の“思い”を食いものにし、既婚者だとバレたら逃げてしまう男たち。裏切られたショックで心身に不調を来し、仕事を辞めざるを得なくなったり男性不信になったりと、後遺症に悩まされている女性は少なくない。中には自死をしてしまった痛ましい事例も。
図らずも“不貞”に巻き込まれたあげく、泣き寝入りを余儀なくされ、少額の解決金程度で示談の末に、口をつぐまされていた女性たちだが、
「女性の“性的同意”が今までは軽視されていたんです。相手を訴えたとき、同意の上で“身体の関係”になったといわれてきましたが、既婚者が相手とわかっていたら、会うことすらありません。独身と信じていたから、身体も心も許したんです」
こう話すのは、2024年6月にXで「独身偽装被害者の会」を設立し、活動を開始したマイコさん(仮名)。マイコさん自身も「独身偽装」の被害者だ。
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“既婚者・彼女持ちお断り”とプロフィールに明示した独身限定マッチングアプリで、大手広告代理店勤務のAと出会ったマイコさん。長期旅行や頻繁なデートを重ね、濃密に交際した。
旅行を控えたある日、Aと連絡が取れなくなり、探偵事務所に調査を依頼すると、妻と子どもがいる既婚者だったことが判明。後に、Aはマイコさんとの関係が妻にバレて、連絡を遮断させられたことがわかった。
「“東京に家を買ったら一緒に住もう”と言われてましたし、土日に会えないとか連絡が取れない、勤務先を教えないなどもまったくなく、独身を信じて疑いませんでした」(マイコさん)
Aの自宅に内容証明を送り謝罪を求めたが、返ってきたのはAの代理人弁護士から解決金20万円での示談の申し出のみだった。納得がいかないマイコさんは東京地裁に提訴。東京地裁はAに対し「既婚者であることを意図的に隠したのは貞操権の侵害にあたる」と、相場より高額である約150万円の賠償を命じた。
マイコさんの勝訴が全国で報道されたことををきっかけに、「独身偽装」で被害に遭った女性たちも、勇気づけられ声を上げられるようになった。そんな「独身偽装被害者の会」に寄せられた例を見ていこう。
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「家族になろう」平気でついた嘘
ケース1
自宅に招かれ男女の関係に。性病をうつされても信じたかった婚活女性
40代の派遣社員で都内在住の優美さん(仮名)は、2022年に真剣交際を目的とした有料の婚活マッチングアプリに登録した。同年5月に女性向けヘルスケアサービス会社の社員で、当時45歳の木村(仮名)と出会う。
1か月のやりとり後、木村と初めて会った。第一印象は誠実そうな人。2回目のデートで「交際しよう」と告白される。だが優美さんは本当に独身者なのか、それを確かめるため、「自宅に行きたい」と、木村に頼んだ。
すると、「大学院生の腹違いの妹と住んでいる」と話しながら、3回目のデートで港区にある共同住宅の2LDKに優美さんを招いた。冷蔵庫にはコンビニのサラダとフルーツのみ。家の中をくまなくチェックしたが、家庭的な雰囲気がまるでなかった。優美さんは木村を信用し、その夜、初めて男女の関係になったのだが─。
「しばらくセックスしていないから家にコンドームがない」
と言い訳しつつ「君との間に子どもが欲しいから避妊具なしでやりませんか」と、木村は結婚をほのめかしてきた。これまで避妊具なしで行為をしたことがなかったため、優美さんは躊躇したものの“結婚”という言葉に説き伏せられるように、木村を受け入れてしまった。
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そうしてデートを重ねたある日、生理が遅れたので検査を受けた優美さん。結果は陰性だったが木村は、「子どもができたら家族になろう」と、優しく声をかけてくれた。
ところが交際2か月後に異変が起こる。トイレに行くと普段感じたことのない腟の痛みを感じた。婦人科で検査をすると、クラミジアの陽性判定が。優美さんはショックを受けたが、そのころ木村とは音信不通になっていた。
「性病の検査の前に卵巣嚢腫が見つかり、不安だから病院についてきてほしいと連絡したが、返信がなかった。しかしLINEはブロックはされていなかったので、優美さんは彼からの返信を待ちました」(マイコさん)
2023年4月、8か月ぶりに木村と再会した優美さんが性病に感染したことを伝えると、
「ごめん、すぐに治療代を振り込む。性病は心当たりがあるとしたら、20代当時の上司と関係を持ったときのものかもしれない」
その後、治療代が振り込まれることはなく、請求しても「体調不良が続いて、入院している」と言い訳をするばかり。さすがに木村の言動を不審に思った優美さんが弁護士に相談。任意交渉依頼をして戸籍謄本を取ると、木村は既婚者であることが判明した。その後、連絡を無視する木村に対し民事訴訟を起こす。
2025年3月に訴状を提出、木村は裁判においても欠席を繰り返し、7月に木村に330万円を請求する判決が下されたが、木村はまたもや無視し、謝罪もなかった。
「優美さんの担当弁護士は、木村の言い訳である“体調不良”を信じ、勝手に支払いの先延ばし要求をのもうとしていました。そこで優美さんが同年10月末に地裁に強制執行の申し立てをすると、その数日後に全額が振り込まれたそうです。でも優美さんの心はズタズタ。深刻な男性不信に陥っています」(マイコさん)
服装のセンスや見た目に違和感
ケース2
「真剣に交際しています」女性の母親や子どもまでもだました男の言い分とは
「“独身偽装”というのは親や家族といった周囲の人、たくさんの人を傷つける行為なんです」
こう憤るのは、シングルマザーのサクラさん(仮名・35歳)。彼女のケースは、母親や子どもといった家族まで巻き込んだ悪質なものだ。
初婚は20歳。5年間の結婚生活で長男を授かったが、夫の借金や酒癖の悪さが原因で離婚。別れてからは長男と2人の生活を守るのに必死で、恋愛どころか出会いを意識する余裕もなかったという。
そんな生活を送る中、サクラさんには35歳までにもう1人子どもが欲しいという気持ちがあった。そこで2023年3月、彼女が32歳のときに登録したのが、離婚経験者同士が出会えるアプリ。相手をバツイチに限ったわけではないが、バツイチ同士なら子どもがいることについても理解し合える、と思ったからだ。
そのアプリで出会ったのが2022年11月に離婚したばかりの、小児科の看護師で3歳年上の斎藤(仮名)。お互い、好きなアニメの話題で盛り上がり、毎日のようにチャットで話す中、そのアニメ映画を見に行こうと初デートが決まった。
「チャットの文面も丁寧で、誠実な人というのが第一印象でした。実際は、服装のセンスや見た目が“あれ?”と思ったけど、話はすごく合ったんです」(サクラさん)
何日も空けず、2回目のデートで食事をしていると、
「僕の夢は将来、子どもと酒を飲むこと。君の息子ともうまくやっていきたいんだ」
斎藤はプロポーズをほのめかすような言葉をささやいた。あまりにもグイグイくる斎藤にサクラさんは引きつつも、
「君みたいな人はモテるだろうから、普通にしていたら誰かに持っていかれてしまう」
という斎藤の言葉に気持ちは近づいていったという。ただ気になるのは斎藤の離婚理由。そこを聞いてみると、
「妻が子どもを床に叩きつけた虐待の疑いがあってね。彼女はベッドから落ちただけと否定しているけど、絶対にやっていると思う。そんな暴力的なところや、子ども優先ではないことがわかって気持ちが冷めたんだ」
親権は看護師という不規則な仕事のために、母親に持っていかれてしまったと斎藤は話した。しかし、斎藤の車にチャイルドシートが付けられたまま。サクラさんがそのことについて彼に聞くと、
「月1の面会と、子どもが妻に何かされたとき、すぐに迎えに行けるように付けている」
こう説明したという。
斎藤の押しの強さもあり、サクラさんは出会ってから約1か月、3回目のデートで交際を始める。頻繁に逢瀬を重ね、斎藤はサクラさんの母親にも、
「真剣に交際しています」
と、挨拶。父や弟、義妹とも交流を持ち、サクラさんの息子の“父親”として行事に参加までしていたという。3人で旅行にも行き、婚約指輪も贈られた。順調に2人の日々を重ねていたように見えた、2024年の8月─。
独身偽装をする男性の特徴
サクラさんの自宅に、知らない女性が訪ねてきた。その女性は初対面なのにサクラさんを名前で呼び、彼女が斎藤と一緒に写った写真を見せながら、この男が結婚しているのを知っているのか、と聞いてきた。
女性は斎藤の義母だった。彼の行動がおかしいと、探偵を雇って調査した結果、斎藤が不倫している証拠を手にして、サクラさんに話を聞きにきたのだ。
事の成り行きを知った義母は、義父とサクラさんの3人で斎藤の自宅へ。そのスリーショットを見た斎藤は驚きつつも、開き直ったという。
サクラさん、斎藤、両方の家族が集まった場で斎藤は、
「再婚活者限定のアプリに登録したのは、本当に離婚したいと思っていて、次の相手を探すため」
「今までで、サクラさんがいちばん好きだった。性欲処理というつもりはなかった」
など、自己中心的な言葉を並べるだけ。斎藤の妻や義母は、サクラさんもだまされていたことを知ると、「やっぱり」という反応だった。周囲から非難の言葉が降り注ぐ中、サクラさんに向けた最後の言葉は、
「もう、僕は終わりでいいです」
の、ひと言だったという。サクラさんは斎藤と過ごした日々について、
「35歳までに、子どもが欲しいという夢はもう叶いません。それ以上に、息子にも心の傷を負わせたことが何よりもつらいです。彼の今後の人生にも影響しかねません。絶対に許せることではないです」
と、振り返る。独身と偽ることで結果、一人の女性の人生を狂わせてしまう「独身偽装」。軽い気持ちでウソをつきました、で許されるものではない。
サクラさんのその後を、マイコさんがこう続ける。
「サクラさんは2024年10月から示談交渉をしていたのですが、結局まとまりませんでした。300万円の慰謝料を請求したのですが、交渉の中で125万円まで減らされ、示談の条件として斎藤の奥さんからの慰謝料請求があった場合は、斎藤が払うということに。
しかし斎藤が“どうして自分が払わなければいけないんだ”と、認めなかったそうです。ほかにも条件があったのですが、ことごとく外され、サクラさんは2025年4月に『貞操権侵害』で訴訟を起こしました」
しかし訴訟を担当した裁判官は、自分はこの種の事件には数十万円の低額判決しか出さないから125万円で和解しろ、という見解を示していたという。
そんな裁判官に対し、サクラさんが今年の1月16日の和解期日に、マイコさんの裁判例を含む、同被害者の会から提供された高額認容例を持っていくと─。
「強硬な見解を持っていた裁判官が“自分の考えが偏りすぎていた。間違っていました”と、それまでの認識の誤りを認めるような発言があったそうです」(マイコさん)
3月3日、この訴訟の尋問期日を迎えるはずだったが、斎藤側の都合で延期になりそうだという。彼はどんな心境で逃げ続けているのだろうか。
独身だと偽り、結婚を前提に交際を続けても、金銭搾取がない限り詐欺罪には問われない。だが既婚者だと偽らなければ、彼女たちは交際すらしていなかった。サクラさんは、独身偽装をする男性の特徴をこう話す。
「私を含め被害に遭った女性の話で共通するのは、性行為で妊娠したら責任を取ると言って、避妊をしないということ。そのひと言で安心させようとするんです」
女性をだまして同意を得る独身偽装は、決して許してはならない性搾取であり、性暴力だといえるだろう。
両親にもはっきりと言葉にしていたのに…
ケース3
優しい態度も言葉も全部ウソ。両親にも“結婚”を誓い、騙した男の手口とは
保険会社で営業職についている都内在住の裕美さん(仮名、33歳)は、普通に恋愛をして、男性とも気が合えばすぐに仲良くなれるほど社交性が高かった。だが、ある出会いがきっかけで、男性に対して心を開くことができなくなってしまったのだ。
話は4年前、彼女が29歳のときに遡る。仕事が終わると、よく飲みに行っていた裕美さん。その日も女性の友達と2人で六本木のバーに向かい、混み合う店内で空いている席を見つけていつものようにお酒を飲み始めた。
その隣にいたのが篠山(仮名)だった。彼は6歳年上の35歳で会計士。10年前に1回結婚したが1年で離婚して子どもはいない。半年くらい前まで5年間付き合った相手がいたが今はフリーだと自身の身の上話をしてきた。
裕美さんからすると、別に顔が好みというわけでもなく、それまでに店で出会い、仲良くなってきた男性のうちのひとり、という感覚だったという。意気投合し、いつものようなノリで「お寿司を食べに行こう」と約束した。
翌週、バーで一緒だった女性の友達と、篠山が連れてきた仕事関係の男性を合わせた4人で食事。その帰り際に裕美さんは、1週間後に篠山と2人で会う約束をした。
「その3回目のデートのとき、相手から“付き合ってくれないか?”と告白されました。そこで私もOKしたんです。どこに惹かれたのか? んー……、まじめそうで本当に優しい人だったんです。強いて言うならそこかな。私としては軽い気持ちでした」(裕美さん)
そこから毎週金曜日には必ず会うようになり、夕方から気になるお店で外食しては、そのまま裕美さんの自宅に土曜日の午前中まで泊まっていくようになった篠山。付き合って3か月後の誕生日には「薬指にして」と、指輪も贈られた。
週末に会えないことについて彼は「個人事務所を立ち上げたばかりで、収入が不安定だから土日に監査のバイトをしている」と説明。そんな中でも国内外の旅行に10回ほど行くなど、彼の優しさにだんだんと気持ちが近づき、付き合って半年ほど経つと、裕美さんも結婚ということを漠然と考えるようになった。
そんな生活が1年も続いたころ、裕美さんは「付き合っている人です」と、結婚も考えていることも合わせて自分の両親に篠山を紹介した。裕美さんのいないところで「1年後くらいに結婚を考えています」と、篠山も両親にはっきりと言葉にしていたそうだ。しかしーー。
「同棲することになって、私が住んでいたマンションを退去する手続きをすると“仕事のトラブルがあって今すぐは同棲できない。初期費用を払うから、とりあえず1人で住む家を借りて”なんて言われたり……」(裕美さん)
付き合って2年がたち、篠山に対してうっすらと不信感を抱き始めた中、裕美さんの父親が不倫をしていることが発覚する。篠山に相談すると、
「飲み屋の女性とかじゃないの?」
と、そっけない返事が。そして不思議なことに、それから篠山と連絡が取れなくなってしまったのだ。もしかしたら、父親の不倫を許せないのかも、と思った裕美さん。
「まじめな人だとずっと信じていたので、自分の付き合っている相手の親が、そんなことしているのが嫌になったのかな、って。あのときはそう思っていました」(裕美さん)
しかし、もしかしたら何かあったのかもしれない、と篠山が仕事場兼自宅にしているマンションに向かっても誰もいない。警察に安否確認を頼んでも、身内ではないので詳細は教えてくれなかった。
裕美さんは父親に不倫について問いただし、そのせいで篠山と連絡が取れなくなった責任を取るように迫った。そこで父親から不倫相手の連絡先を聞いた裕美さんは、父親と別れるようにとその女性に直接交渉したのだ。すると、ここから事態は意外な方向に進むことになる。
「私が父親の不倫相手に電話したときの会話を録音したデータを聞いた友人が、相手の言葉にキレて警察に通報。実は相手の夫が警察官で、自分の妻の不倫を知ることになり、彼は私の身辺のことを調べたそうです。その結果を聞いた妻で不倫相手が、父親に“私に別れろと言ってる娘も同じように不倫しているじゃないか”と……」(裕美さん)
娘が結婚を考えている、と紹介された相手が妻子持ちとは父親にとっても寝耳に水。自分の口から裕美さんに告げることはできず、裕美さんは姉を通してこのことを知ったという。
「でも、バツイチと言っていたし、そのことで誤解されているのでは、と弁護士さんに頼んで住民票を調べてもらったら、本当に既婚者だということがわかったんです」(裕美さん)
裕美さんが事務所兼自宅だと思っていた場所のほかにマンションを持っていて、そこが自宅だった。奥さんはもちろん子どもも2人いて、あろうことか、2人目が生まれたのは、裕美さんと付き合って半年のタイミングだった。
「騙されていた」
このことを知った瞬間、彼女の心は一気に冷めた。すぐに篠山に対して、慰謝料500万円の請求をした裕美さん。そこからは弁護士同士の話し合いとなり、篠山と2度と顔を合わすことはなかった。
結局、175万円という金額で示談が成立したのは約1年後のこと。最初は謝罪すると言っていたが、示談金を支払うことになると、謝罪は一切しないと告げられたという。
「今思うと、優しかったのもすべてウソだったんだな、って。付き合っていたころを振り返って、都合よく使われたことがいちばんムカつきますね」(裕美さん)
騙されたことで、男性を信じることもできなくなり、結婚どころか付き合うことすら考えられなくなってしまった。
示談金は、払えば許されるという“免罪符”ではない。女性ひとりの人生を狂わせた罪は重いーー。
謝罪文はテンプレをコピペ
ケース4
結婚式の写真を突きつけられても完全否定。
示談交渉中もアプリで相手を探す気持ち悪さ
会社員の友香さん(仮名・39歳)は2016年、30歳のときに結婚し、4年後に性格の不一致が理由で離婚した。
「もう再婚するなんて気も起こらず、このまま一人で暮らしていくのだろう、と思っていました」(友香さん)
しかし2023年1月に祖父が亡くなったとき、友香さんの気持ちにちょっとした変化が起きたという。
「人はいつか死ぬんだな、って思ったら、寂しくなってきて……。母親は健在ですけど、私は長女ですから、亡くなったときに喪主をしなくてはいけない。自分1人でそれを背負うのはしんどいかな、と」(友香さん)
結婚はしなくてもいいが、パートナーとして一緒にいてくれる人がいたらーー。そんな思いが、マッチングアプリへの登録を決意させた。
2023年3月、自分のプロフィールに“離婚経験があっても気にならない方だけお願いします”と書き、アプリに登録。翌月に10歳年下で、有名企業の子会社に勤めているという豊田(仮名)と知り合った。チャットで何回か話した後、豊田と直接会った友香さんは彼の印象を、
「好青年という感じでした」
と振り返る。そこから何回かデートを繰り返し、1か月後に「お付き合いをお願いします」と、豊田から告白された友香さん。
「当時、彼は27歳で年の差もあるし、私は離婚したときすごく傷ついたので、真剣に付き合う人じゃないと無理です、と言いました。そういうこともわかった上で付き合ってくれますか? と聞いたら“そういうことはすべてわかっています”と言ってくれたんです」(友香さん)
そこからは毎日のように電話やLINEでやりとりし、豊田は月に5〜6回は友香さんの自宅に泊まるようになった。平日も時間が合うときには食事に行ったり、土日も一緒に過ごすことも多かったという。
豊田との幸せな日が半年ほど続いたある日、友香さんの親族が結婚式を挙げることになり、その2次会に豊田を誘った。しかし“その日はちょうど友人の結婚式に呼ばれている”と、断られてしまった。
親族の結婚式の4日後、いつものように友香さんの家に泊まりにきた豊田。翌年(2024年)に友香さんのいとこの結婚式が決まっていて、そのことを話しながら「これから結婚式とかいろいろな予定が入っているから楽しみだね」と結婚式場の話になった。そのとき「友達の結婚式はどうだった?」と聞く友香さんに、
「あまり覚えてない」
と、曖昧な返事を返す豊田。そのときは結婚式とか興味ないのかな、と友香さんは思ったという。だが、
「彼が帰った後、いとこがどんな式場で挙げるのだろうと思って、インスタで検索してみたんです。そうしたら“昨日は長男の結婚式でした”という投稿が出てきて。アップされている写真を見ると……」(友香さん)
投稿者のアイコンは家族4人の写真で、その1人はどう見ても豊田本人。しかも、結婚式の“主役”として写っているのは彼なのだ。偶然にもいとこの挙式予定の式場と、豊田が挙式した式場が同じだった。投稿者はどうやら豊田の父親のようだった。
「わけがわからなくなったんですけど、LINEで彼を問い詰めたらブロックされてしまうかもしれない。だから、次に会うときに聞いてみようと、思ったんです」(友香さん)
デートの後、友香さんの車で豊田の家に送り届けるタイミングに、インスタの写真を「これはどういうこと?」と彼に見せた。
「“結婚しているの?”と聞くと“いやいや、してないしてない”と相手は完全否定。“じゃあ、これは誰なの?”と聞いたら“知らない、誰なんだろう”って、絶対に自分だと認めないんです」(友香さん)
そんな豊田を見ながら「疑ってごめんね」と、友香さんはその場は矛を収めた。そして絶対に言い逃れができない証拠をつかんでやる、と見つけ出したのが、豊田の結婚相手のインスタ投稿。次に会ったときにそれを見せても、
「そんな知らない人が書いてることと僕のこと、どちらを信じるんだ」
と逆ギレする始末。すると翌日に豊田から「もう別れよう」というLINEが届いた。
「完全にバレたと思って逃げようとしたんでしょうね。でも絶対に逃さないと思って、最後にもう一度だけ会ってほしいとLINEしました。そして会ったとき“本当に結婚してないんですね? 私が疑ったから別れるんですね”と念を押したら“そうです”と」(友香さん)
実は初めに疑いを豊田にぶつけたときから、会うときにはボイスレコーダーを回していた友香さん。その録音データを証拠にして、貞操権侵害として内容証明を彼に送り、慰謝料250万円を請求した。
「慰謝料と共に謝罪文も出せ、と要求しました。相手側は文面にして送ってきましたが、弁護士事務所のHPにあるテンプレをコピペしたもの。誠意も何もありませんでした」(友香さん)
謝罪文は出してきたが、250万円という金額は払えない、と弁護士を通じて通告してきた。友香さんは弁護士を立てずに、自ら交渉。最終的に107万円で示談に応じた。
結婚していることがわかってから豊田について調べてみると、2022年10月にはすでに籍を入れていたことが判明。式を挙げたのは、入籍してから約1年たってからのことだった。また、友香さんとの示談交渉中もマッチングアプリに登録したまま、ほかの女性を探していたのだ。
「本当に気持ち悪い。もう、アプリに登録している男性が、みんなウソをついているのでは、と思うようになりました」(友香さん)
豊田が既婚者だとわかってから心労のために、2か月で10キロも体重が落ちたという友香さん。自分と同じことで悩んでいる人がいたらと、こんな言葉をくれた。
「本当に好きで、でも既婚者だとわかったら明日から会ってはいけない人になっちゃいますよね。そこから不倫でもいいから、と続けてしまう人も多いと聞きました。でも、その好きという気持ちをエネルギーに変えて、慰謝料を請求してほしいと思います。
不倫でいい、なんて続けていたら、自分が訴えられる側になってしまいますし。つらいですけど、人を騙してきた人なんて、絶対にパートナーとしてふさわしくないですから」
