GeminiやChatGPTがあるのになぜ? ドコモがAIエージェント「SyncMe」を手掛ける理由 強みはdアカウントにあり

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2026年03月08日 15:50  ITmedia Mobile

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MWCで発表したSyncMe。キャラクターを打ち出したAIエージェントだ

 右を向いてもAI、左を向いてもAI、さらには垂れ幕までもがAI――3月2日から5日にわたってスペイン・バルセロナで開催されたMWC26 Barcelonaのテーマは、まさにAI一色だった。ここに合わせてドコモが発表したのが、「SyncMe」と名付けたパーソナルAIエージェントだ。現在、SyncMeはモニターを募集しており、そこでの意見を踏まえて夏ごろまでにサービスを開始する。


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 このAIエージェントは、2025年のMWCで代表取締役社長の前田義明氏が導入を表明していたもの。ちょうど1年たち、サービスの具体像が見えてきた形だ。とはいえ、AIエージェントはプラットフォーマーのサービスも既に存在する。ドコモが手掛ける意義や、その展望を読み解いていきたい。


●iモード時代からの悲願を生成AIで実現、より賢いパートナーに


 ドコモはiモードの頃から、エージェント型のサービスを継続的に導入してきた。先駆けといえるのは、前田社長自身もサービスに携わった「iコンシェル」だろう。このサービスでも、ユーザーの生活エリアや趣味嗜好(しこう)に合わせて生活にひも付く情報を届けるといったことをしていた。


 また、スマホ時代にはiコンシェルの流れを受け継ぐ「my daiz」を導入しており、こちらのサービスは現在も継続中。ホーム画面上を縦横無尽に動くマチキャラが、吹き出しでおすすめの情報を届けてくれるというコンセプトは、まさにエージェント的だ。前田社長も、「もともと携帯電話自体が究極のパーソナルエージェントで、それを進化させていくことがミッションだと考えていた」と話す。


 一方で、これらのサービスは情報の出し方がパターン化しており、エージェントとしてできることは少なかった。ワンパターンの情報しか出ず、実際に何らかの手続きをしてくれないとなると、ユーザーにとっては邪魔な存在になってしまう。筆者もかつてはmy daizを契約していたが、鉄道遅延情報ばかりであまり役に立たないというのが率直な印象だった。


 ここに生成AIを活用することで、エージェントとしての能力を高める道筋が見えてきた。前田氏は、「今われわれが持っているアセットと、世の中に勃興するテクノロジー(生成AI)を組み合わせることで、その世界が見えてきた」と話す。


 SyncMeを手掛けたドコモのエンタメマーケティング担当部長の浜田尚氏も、「当初思い描いていたものをiコンシェル、my daizではやりきれなかった。生成AIがこれだけ拡大する中で、われわれが想定していたエージェントとしてお客さまをサポートすることがテクノロジーとしてできるようになってきた」と口をそろえる


 実際、SyncMeは既存のAIモデルをAPI経由で呼び出しており、これまでのどのサービスよりも多彩な会話が可能。「ワラピィ」と「ヨミドーリ」というキャラクターが前面に出ているため、“緩いサービス”を想像してしまうが、できることはGoogleのGeminiやOpenAIのChatGPTに近い。チャットを通じてユーザーの行動を支援する、会話型のエージェントといえる。


●パーソナル化を実現したdアカウントの情報、正確なユーザープロファイリング


 とはいえ、同じことができるのであればGeminiやChatGPTを使えばいい。あえてドコモが開発する必要もないだろう。SyncMeが面白いのは、ドコモがdアカウントに蓄積したユーザーのパーソナルデータを活用しているところにある。これによって、他社のAIエージェントにはないユーザーの理解が可能になる。


 dアカウントには、ユーザーの位置情報はもちろん、住所やdカード、d払いでの決済情報、dポイントの取得状況などが蓄積されている。これらの情報を組み合わせていくことで、ユーザーのことをかなり高い精度で予測することが可能だ。


 例えば、位置情報の推移から、出勤情報を推定できる。その情報とdカード、d払いでの決済情報を組み合わせれば、ある程度まで職業や年収、ライフスタイルまで推定することが可能になる。また、SyncMeは利用時に複数の写真をユーザーにアップロードさせ、「言葉にしづらいユーザーの感性も推定していく」(浜田氏)。


 MWCでは、SyncMeを開発するあたり、ドコモがどの程度までユーザーをプロファイリングできるかのデモも見せてもらった。筆者自身のdポイント会員番号を入れ、写真を数枚選んだところ、出勤、退勤の時間や一般的なサラリーマンではないこと、さらには都市型の生活で比較的オン・オフをはっきり切り替えていることなどがズバリ言い当てられていた。


 また、d払いの利用状況や利用金額、支払いソースを見ており、キャッシュレス決済の利用頻度が高いことも推定されていた。dアカウントには、筆者という人物を多角的に分析するのに十分な情報が蓄積されているというわけだ。MWCで見たデモは、あくまで最大値のものであり、SyncMeで活用されるデータはその一部だというが、dアカウントの情報にはかなり高いポテンシャルがあると言えそうだ。


 この点は既存のAIチャットとの大きな違いになる。


 GoogleのGeminiもGoogleアカウントにひも付いた検索履歴などのパーソナルデータを参照するようになっているが、決済データはなく、何を購入したかやどのようなお店を実際使ったのかまでは把握しきれていない。そのため、「ランチのおすすめを教えて」というような質問をすると、ユーザーがよく検索していた情報に結果が偏ってしまう。精度高くユーザーを把握できているのは、ドコモならではの強みだ。


●操作の代行までつなげていけるか、デバイス開発も視野に


 こうしたデータは、「多くがAIと相性がいい。今まではルールベースだったものを、ユーザーごとにカスタマイズできるようになった」(同)という。また、既存のAIサービスとは違い、iコンシェルやmy daizのときのように、「興味のありそうなことは(キャラクター側から)アシストする」(同)。


 また、アプリとしては、用途に応じてエージェントを切り替える使い方も想定しているという。実際、SyncMeアプリでは、先に挙げたワラピィとヨミドーリから、「ドコモサポート」に切り替えることが可能。ドコモのサービスについての質問を行える。将来的には、ここから直接、契約情報を変更できるようにすることも想定しているという。


 ただし、このドコモサポートのアカウントと同様、ワラピィとヨミドーリも現時点ではキャラクターが会話を通じて情報を提供するところにとどまっている。実際にエージェントとしてふるまい、他のサービスを実行させることはできない。この点は、カレンダー登録やメッセージ送信など、アプリ連携でタスクをこなせるGeminiとの違いといえる。


 もっとも、ドコモ自身もこのような進化は織り込み済みで、「将来的にはいろいろなエージェントが連携していく世界も想定している」(同)という。前田氏も、「“推し”がライブをやっていることを教えてくれる。でも忙しくてそんなことをやっている余裕がないときにはチケットを買ってくれる。エージェント同士がやりとりするということを、コンシューマーの中でも作っていく」と語っており、将来の拡張には期待が持てる。


 その先にあるのが、スマホを超えたAIエージェントだ。MWCでは、SyncMeのキャラクターを用いたコンセプト端末を出展。家ではキャラクターを模した据え置き端末が、持ち運び時にはペンダント型端末の中に入ったAIエージェントがユーザーを支援する形を提案していた。


 こうしたコンセプトはシャープの「ポケとも」にも近く、MWCでの展示はコンセプトながらも具体性があった印象だ。一方で、課金するのかといった収益化の方法などもまだ定まっておらず、モニターサービスの段階では未知数な部分が多い。生成AIのサービスは進化の速度も速いため、スピード感を持ってサービスを立ち上げていけるかが課題になりそうだ。



このニュースに関するつぶやき

  • 日本独自のには頑張ってもらいたいもんだが・・・まぁ、淘汰されるんじゃないかな。
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