「光速船」40年の時を越えて復活 一人のファンの夢から始まった“愛と情熱の物語“とは?

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2026年03月08日 16:30  ITmedia NEWS

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オリジナルの「光速船」と「Vectrex Mini」

 1980年代、家庭用ゲーム機としては他に類を見ない「ベクトルスキャンディスプレイ」を搭載し、一部のゲームファンに強烈なインパクトを与えた伝説のハード「Vectrex」。日本ではバンダイから「光速船(こうそくせん)」として発売されたこのマシンが、40年の時を経て「Vectrex Mini」として蘇ります。


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 現在、クラウドファンディングサイト「kibidango」にて、日本上陸に向けたプロジェクトが進行中です。2月に開催された発表会を踏まえて、単なる復刻にとどまらない、開発者の熱い思いと現代技術が融合したプロジェクトをご紹介します。


 その熱さを証明するかのように、2月25日にkibidangoでスタートしたクラウドファンディングは、公開初日にして目標金額の100万円を達成。3月7日時点で支援総額は2000万円を超えています。


●「これはビジネスではない、愛だ」


 光速船は、ラスタースキャン方式が主流だった当時、アーケードゲームで採用されていたベクトルスキャン方式を家庭用で実現した唯一無二の存在でした。漆黒の画面に光の線が走り、独特の浮遊感とシャープな描画でプレイヤーを魅了しました。


 この復活劇を仕掛けたのは、フランスのデイビッド・オギア氏。彼自身、若い頃の時にVectrexと出会い、その魅力に取り憑かれた一人です。発表会で彼は「これはビジネスではない、愛と情熱のプロジェクトだ」と語りました。


 プロジェクトは決して平坦な道ではありませんでした。権利元との交渉、資金ゼロからのスタート。頼りになったのは、世界中にいるVectrexファンコミュニティーの熱い応援だけでした。


 しかしゲームイベント「gamescom latam 2025」でプロトタイプを展示したところ、予想をはるかに超える熱狂的な反応が寄せられます。これが大きな追い風となり、プロジェクトは一気に加速。世界中の展示会を巡り、ファンとの交流を深めながら、製品の完成度を高めていきました。


 Vectrex Miniは、単なるミニチュア復刻版ではありません。オリジナルの体験を尊重しつつ、現代の技術でその魅力をさらに引き出す工夫が随所に凝らされています。


 こだわりの一つが、オリジナルと同じ「射出成形」で製造されたプラスチック製の筐体です。手に取った時の質感まで忠実に再現しようという執念が感じられます。


 そして、Vectrexの魂ともいえるディスプレイには、5インチのAMOLED(有機EL)が採用されました。なぜ液晶ではなく有機ELなのか。それは、自発光のOLEDこそが、ブラウン管が描いたベクトルグラフィックスの「光の線」の鋭さ、そして漆黒の闇を最も忠実に再現できるからです。発表会で見たその映像は、まさに"光が走る"感覚そのものでした。


 さらに、画面に重ねてゲーム世界をカラフルに彩る「物理オーバーレイ」も完全再現。各ゲームに付属する専用シートを装着すれば、あの頃の懐かしい没入感が蘇ります。HDMIで外部ディスプレイに出力する際は、このオーバーレイがデジタルで表示されるという現代的な配慮もうれしいポイントです。


 現代のプレイスタイルに合わせた進化も忘れていません。例えば、標準で付属するコントローラーは、自動センタリング機能付きのアナログジョイスティックと4つのアクションボタンを備えたBluetoothワイヤレス仕様。オリジナルの操作感を損なうことなく、ケーブルの煩わしさから解放されます。


 Bluetooth接続であるため、PCや他のデバイスでも使用できる可能性もあり、コントローラー単体でも活躍の場が広がりそうです。もちろん、使わないときは本体にすっきり収納できるギミックも健在です。


 拡張性も驚くほど高いです。電源供給と映像出力(予定)を兼ねるUSB Type-C、大画面で楽しむためのHDMI出力、そしてゲームを追加できるmicroSDカードスロットを搭載。さらに、2つ目のコントローラーを接続すれば、対戦や協力プレイが楽しめるほか、驚くべきことに当時のオリジナルコントローラーが接続できるDB9ポートまで備えています。新旧のファンがそれぞれのスタイルで楽しめる、至れり尽くせりの仕様と言えるでしょう。


 ゲームをプレイしていない時でも、Vectrex Miniはデスクの上で存在感を放ちます。Wi-Fiに接続すれば、時刻や天気などを表示する「多機能クロックモード」として機能。レトロフューチャーなデザインは、インテリアとしても活躍してくれそうです。


●異例の"日本推し"仕様の数々


 今回のプロジェクトで特筆すべきは、日本のファンに対する並々ならぬ配慮です。


 まず、日本で発売されるモデルの本体カラー。6色の候補の中から実施されたファン投票では、「紺色(ネイビーブルー)」が47.3%の支持を集め、圧倒的な人気で選ばれました。日本の伝統色でもあり、夜空のような深みを持つこのカラーは、シックで重厚感のある仕上がりになる予定です。


 発表会では、オプションアイテムとして設定されているVectrexの歴史をまとめた書籍「Vectrex:The Book」も紹介され、会場を大いに沸かせました。


 冒頭でも触れたように、Vectrex Miniは現在、クラウドファンディングサイト「kibidango」にて、日本での正規販売に向けたプロジェクトが進行中です。リターンには、本体とコントローラー、そして14種類の内蔵ゲームが含まれます。発送は9月ごろを予定しているとのこと。


 収録ゲームには「MineStorm II」や「Hyperchase」といった名作が含まれており、microSDカードを使えば、世界中のファンが作成した自作ゲーム(ホームブリュー)なども楽しめます。


 Vectrex Miniは、海外のクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で、すでに目標額の12倍以上となる約6000人の支援を集めるなど、世界的な成功を収めています。これは、単なるノスタルジーに訴えかける製品ではなく、一つのゲーム文化を未来へ継承しようという、開発者の純粋な情熱がファンの心を動かした結果でしょう。


 80年代にゲームをプレイした世代はもちろん、その独特な映像表現に新鮮な魅力を感じる若い世代にも、ぜひ触れてみてほしい一台です。これは、一人のファンの夢から始まった、奇跡の物語なのですから。



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  • 位牌等が正面画面に現れる、新手の仏壇かと思ったよ( ・ิω・ิ)
    • イイネ!16
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