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このMacは安い。
MacBook Neoの価格は9万9800円で、学生や教職員割引であれば8万4800円から購入できる。10万円を切るノート型Macは2009年10月のMacBook以来約17年ぶりとなる。そんな製品を円安が進み、ストレージ価格高騰といった逆風のさなかで作ってしまうところに、Appleの企業としての力強さを感じる。
もちろん、安いからといって質が悪いと感じることはない。手が届きやすい価格を優先させるべく、何かの仕様を妥協した製品を作るPCメーカーもあるが、AppleはPCメーカーである前に一流ブランド企業でもある。
Apple製品として満たすべき製品の品質の基準があり、それを下回る製品を出すことはあまりない(直近でソーシャルメディアで話題になっている日本語文字入力の品質はまれな例外だ)。
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●幅広い層の日常用途をカバーする1台
このMacBook Neoも、ボディーは頑丈なアルミニウム製でLiquid Retinaディスプレイを搭載し、macOSがサクサクと動く。作業内容によって異なるが、パフォーマンスはだいたいM1とM2搭載MacBook Airの中間くらいだ。
動画編集や3D関係のプロアプリをガンガン使うには不向きだが、Webブラウジングをしたり文章や企画書、プレゼン用のスライドを作成したり、写真を加工したり、Webを使ったり、生成AIを使ったり、簡単な動画作成/音楽作成をしたりといった一般的な学生やビジネスパーソン、経営者、主婦/主夫層のニーズはほぼ満たしている。
本体重量は約1.23kgと、最新のモバイルPCに比べると軽くはないが、一日中持ち歩けるサイズ感にまとまっている。
Appleも、MacBook Neoは同社が最近出したサブスクリプション型のクリエイティブアプリのコレクション「Apple Creator Studio」を使うのにも理想の製品としている。ただし、条件付きでコレクションに含まれる映像編集用の「Final Cut Pro」と音楽制作用の「Logic Pro」は例外に挙げ、これらのアプリをメインに使うのであれば「MacBook Air」の方を推奨している。
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推奨しないとはどういうことだろうか。アプリが動かないのか気になって試しに「iPhone 17 Pro Max」で撮影した4K/30fpsの動画をFinal Cut Proを使って編集してみたが、普通に動画を取り込んだり、切り貼りして流れを入れ替えたり、文字タイトルを加えたり、ちょっとしたエフェクトをかけたりといった編集ではストレスを感じることがなかった。
今、Appleではこれらのツールにも高度なAI機能を続々と追加しているところだ。今後、そういった高度な機能まで積極的に使っていきたい人であれば、劇的に性能が伸びた新型MacBook Airは価格こそMacBook Neoの2倍近く(18万4800円〜)になるが、それ以上の性能向上をもたらす魅力的な選択肢になっているので、MacBook AirかMacBook Proを選んだ方が良い。
しかし、そこまで特殊な用途で使うことがないという人、とりあえずはPCでどんなことができるかを試したい人であれば、まずはMacBook Neoで入門するというのは良い選択ではないかと思う。
これは個人的な意見だが、学生であれば一度、PCを限界まで使って「PCの処理能力が自分の要求に追いつかない」というのはどういうことかを体感してみるのも悪くない経験だと思う。そういう状況に直面してこそ、人は製品を工夫して使うことを覚えるからだ。
もっとも、MacBook Neoはそう簡単には性能の限界を感じさせてはくれないと思うので、使う学生にも頑張りが必要になる。
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もう1つ個人的洞察を加えると、製品として使い続ける寿命は3年くらいと考えておいた方が良い。昨今、Appleは1台の製品を最低5年くらいは使い続けられるように製品やOSの開発計画を行っている。
これから5年くらいはAIがさらに劇的に進化する時期であり、コンピューターに求められる性能要求も大きく変わる可能性が高い。いつまでも基本の使い方だけに限定して製品を使うなら問題がないが、時代の歩みと共に成長していくつもりの人は、2〜3年後には最新のAIトレンドを反映したモデルに乗り換えることが、自身の成長を止めないことにつながると意識すべきだろう。
●「iPhoneのチップ」がMacに来た理由
さて、以下では製品の特徴をさらに深く読み込んでみよう。
MacBook Neoの安さの秘密は、そのプロセッサにある。現行の他のMacは全て型番が「M」で始まるプロセッサを採用しているが、MacBook Neoのプロセッサは「A18 Pro」だ。このAで始まるプロセッサは本来iPhone用に設計されたもので、全く同じA18 Proは2024年に発表された「iPhone 16 Pro」が搭載していた。
iPhoneがあれだけ高度な処理をサクサクとこなせるほど、実は昨今のiPhoneのプロセッサは、Macのプロセッサと肩を並べるほどの性能を備えているのだ。ならば、その安価なプロセッサを使って、圧倒的低価格の製品を作ってしまえと作られたのがMacBook Neoだ。
日本の価格を見ると、安いと言ってもそれなりに感じる人がいるかもしれないが、米ドルでの価格は599ドルだ。これは完全に中堅スマートフォンの価格帯でもある。
MacBook Neo搭載のA18 ProはCPUコア数が6コア(うち高性能コアは2基、高効率コアは4基)で、MacBook AirのM1〜M3が8コアCPUだったことを考えると、数字の上では2基「少ない」構成だ。GPUコアも5コアで、iPhone 16 Proの6コアと比べても1基少ない。
これは「削った」と見るか、「最適化した」と見るかだが、私はどちらでもなく「MacBook Neoのターゲットユーザーに合わせて選んだ」と解釈している。
既に述べたように、本機は毎日PCを使い倒すプロや、動画編集に何時間も費やすクリエイターのためのマシンではない。Webを見たりメールを書いたり書類を作ったり、ときどき写真を編集する――そういった「普通の使い方」をする人たち向けだ。
そうしたユーザーには、8コアのフル性能よりも瞬発力が高く、バッテリーが長持ちし、薄くて軽く、そして安いマシンの方が、ずっと大きな価値がある。
AppleはMacBook Neoをゼロから設計したというが、それも既存のMacを安く再設計したのではなく、このマシンの想定ユーザーから逆算して、必要なものを必要なだけ積み上げ、この驚きの価格に納めた、という意味なのだろうと思う。
●ベンチマークが示す「変則的な性格」
ベンチマークツールのGeekbench 6でスコアを計測してみた。CPUのシングルコアは3550で、M1 MacBook Airが2347、M2が2587、そしてM3でも2964〜3065程度なのに対して、MacBook NeoのA18 Proはそれらを全て上回っている。
AppleがiPhone用と位置付けるチップが、MacBook Airを上回るシングルコア性能を持っているというのは、なかなか驚きの結果だ。
このシングルコア性能が何を意味するかというと、1つ1つの処理の速さのことだ。アプリを起動する、Webページを表示する、写真にフィルターをかける、メールを送信するといった日常の作業のほとんどは、このような“1つ処理”の積み重ねで成り立っている。そういう使い方では、MacBook NeoはM3 MacBook Airにも引けを取らず、むしろ勝っている。
一方で、CPUのマルチコアスコアは9020だった。M1 MacBook Airの8500台のスコアは上回るが、M2の9500台には届かない。6コア構成の宿命で、複数のコアをフルに生かす長時間の並列処理では、8コアのM系MacBook Airには及ばない。ただ、これが実際の使用感に影響するのは、重たい処理を長時間続ける場面だ。普通に使っている分には、まず気にならない。
GPUのスコアはOpenCLで1万9775と、M1 MacBook Airの1万6000台は明確に超えているが、M2の2万3000台には届かない。ちょうどM1とM2の中間という位置付けだ。ゲームや3Dを本格的に楽しみたいという人には物足りないかもしれないが、写真編集や軽い動画編集、日常的なグラフィックス処理には十分な水準だ。
まとめると「シングルコアのキレはM3 Air超え、長時間の並列処理能力はM2 Air前後、グラフィックスはM1とM2の中間」というのがこのマシンの性格だ。これはM系MacBook Airの「何でも均等に強い万能型」とは異なる、iPhoneチップ由来の特性がそのまま出た結果で、既存のMacのどのモデルとも違う個性を持った製品に仕上がっている。
●色が指先まで届く――デザインと使い勝手
次に、デザインと使い勝手について触れておこう。
MacBook Neoでまず目を引くのは、ボディーカラーだ。シルバーとブラッシュ、インディゴ、そしてシトラスの4色があり、何よりシトラスが強烈な個性を放っている。明るく鮮やかな黄緑がかった黄色で、これまでのMacBookのカラーラインアップには存在しなかった色味だ。
ブラッシュの淡いピンク、インディゴの深みのある青紫も、従来のMacにはなかった新鮮さがある。
今回のMacBook Neoで初めて実現したのが、キーボードのキーキャップへのカラー展開だ。ボディーと同系色のキーキャップが採用されており、Appleが使う「色が指先まで届く」という表現がぴったりくる。
この統一感は、実際に手を置いて使ってみると写真で見る以上に気持ちいい。Appleがこのモデルに「フレッシュで楽しいパーソナリティ」を持たせようとしたのが、ここでもよく分かる。
1つ正直に書いておくと、ディスプレイの縁(ベゼル)はMacBook Airと比べて太い。MacBook AirやMacBook Proはノッチデザインを採用することで狭額縁を実現しているが、MacBook Neoのベゼルは一回り広めだがノッチがない。
ディスプレイ上部にカメラの出っ張りがないすっきりしたデザインを好む人にとっては、これはむしろ歓迎できる仕様だ。ディスプレイそのものは2408×1506ピクセル表示に対応し、輝度は最大500ニト/10億色表示対応で、日常の使い方では品質に不満を感じることは少ないはずだ。
トラックパッドはForce Touchと呼ばれる2段階のクリックに対応したものではなく、ディープクリックと呼ばれる深く押し込む機能はない。他のモデルでは、このディープクリックを使って「コンテクストメニュー」というメニューを、カーソル位置に表示でき利便性が高いが、MacBook NeoではControlキーを押しながらクリックをすることで「コンテクストメニュー」を表示できる。
また他のMacBookシリーズではトラックパッドの振動でクリック感を出しているだけでパッドが動いていないが、MacBook Neoのトラックパッドは押すと実際に沈む物理的なトラックパッドだ。
このため、上下どのあたりを押すかによってクリック感に違いが少しだけ出るが、Appleはこれをほとんど感じないように丁寧な作り込みをしている。
内蔵のWebカメラは、1080p対応のFaceTime HDカメラだ。指向性ビームフォーミングを備えたデュアルマイクと組み合わさることで、ビデオ会議やオンライン授業での映像と音声の品質は十分に高い。試したいくつかのZoom会議でも、相手から「映像も音もきれいだね」という感想をもらった。
そして、内蔵スピーカーにも驚いた。デュアルサイドファイアリングスピーカーと呼ばれ、空間オーディオとDolby Atmosに対応している。この価格の製品、このボディーからこんな音が出るとは思っていなかった。映画を鑑賞したり、音楽を聞く際も、スピーカーの存在を忘れるくらいの体験ができる。これはぜひ実機で体験してほしいポイントだ。
バッテリーは公称で最長16時間動作する。朝から夕方まで充電なしで使い続けることに不安は一切なかった。ファンレス設計のため、どんな作業をしていても動作音はほぼ無音だ。カフェや図書館での利用にも向いている。
●「New Life」――Appleが日本市場に本気を出した?
最近、インタビューなどでAppleの重役と話をすると、たまに「New Life」という言葉を口にする。最初は何のことかと思っていたが、どうやら日本で大々的に行われている「新入学・新生活応援キャンペーン」のことらしい。他の多くの国よりも圧倒的にカレンダー通りに動く国が日本だ。
入学も引っ越しも転職も、ほとんどがこの時期に集中しているからこそ慣行として続いている一大キャンペーンだが、Appleもこの4〜5年ほどで、その重要さに気が付き始めたのではないかと思っている。
だからこそ、学生や社会人のフレッシュな人たちが自分用に製品を買うこの時期に合わせてiPhone 17eやMacBook NeoといったiPhone、Macのエントリーモデルをそろえてきた。それも日本市場では10万円を切るか上回るかがかなり重要なポイントなので、この円安とメモリ価格高騰の中でも、何とか日本で10万円以下の価格で提供できるように仕様を決めた、というのがMacBook NeoとiPhone 17eの開発背景ではないかと私は思っている(Appleは、そうは語っていないが、10万円以下にすることが非常に重要だったとは認めている)。
9万9800円の価格は既に十分に安いが、学生や教職員であれば「学生・教職員向けストア」でさらに安く購入できる。学割価格は8万4800円で、通常価格から1万5000円引きだ。対象は大学/高等専門学校/専門学校の在学生で、進学が決まった合格者も含まれる。教職員(小/中/高/大学/専門学校)も対象で、学生本人だけでなく父母が代わりに購入することも認められている。
これを併用すれば、MacBook NeoとiPhone 17eをセットで、実質負担額では18万4600円でそろえることができる。これは何かと物入りな多くの学生にとっても、かなり魅力的かつ現実的な価格なのではないだろうか(ちなみに、延長保証のAppleケア+も学割で約10%引きで加入できる)。
●価格が安いのはiPhoneを同時購入してもらうため?
実際、Appleの本当の狙いは、このように新しいMacとiPhoneをセットで使ってもらうことにあるのではないかと思っている。他社には真似ができないApple製品ならではの最大の強みは、iPhone/iPad/MacといったApple製品同士での自然な連携だ。
例えばiCloudを使っていれば、MacのPagesで書いていた文章が自動的にiPhoneにも同期されるため、電車移動中に続きをiPhoneで書くといったことも可能だ。同様にMacのWebブラウザでコピーしたテキストを、iPhoneのアプリの文字入力画面にペーストしたり、Keynoteでのプレゼン時にiPhoneをリモコンに使ったり、友達との長文になりそうなメッセージをMacに切り替えてキーボード入力したりもできる。
さらにiPhoneが寝室で充電しっぱなしでも、かかってきた電話にMacで応答したりと、ほとんど意識することなく異なるデバイスを行ったり来たりして同じ作業を続けられる。
このiPhoneとMac間の連携で、特に利便性が高いのが「iPhoneミラーリング」という機能で、別の部屋で充電しっぱなしのiPhoneの画面をMac上で呼び出して、Macのトラックパッドとキーボードで遠隔操作できる(日本語入力は少し難がある)。
例えば、この「iPhoneミラーリング」の遠隔操作でiPhone専用のビデオ編集ソフトのCapCutを起動し、そこにMacで編集していた動画ファイルをドラッグ&ドロップして転送といったことも可能だ。この連携に慣れてしまうと、他のPCとスマホの組み合わせにはなかなか移行できなくなる。
もっと安い低価格なPCは他にもある。もっと安いスマートフォンもあるだろう。だが、バラバラに動くそれらの機器の組み合わせと、まるで1つの製品のように連携するMacとiPhoneとでは日々のちょっとした作業のしやすさに大きな差が生まれる。
●Macの新しい入口に適したMacBook Neo
MacBook Neoは、Appleが目指す「Macの魔法を、もっと多くの人に」という思いを、価格という最も訴求力のある形で示した製品だ。シングルコアの瞬発力でM3 MacBook Airを超え、日常の使い方では「遅い」と感じる瞬間がほとんどない。
シトラスやブラッシュという、これまでのMacになかったフレッシュなカラーバリエーションも備え、新入学や新生活に彩りと楽しみを添えてくれる。
「安いから妥協する」のではなく、価格を通して新たな可能性の門戸を開く――そんなポジティブな姿勢が製品の随所から感じられる。
Macを使ったことがない人の最初の1台として、あるいはiPhoneとの連携をフルに生かしたい人の入口として、MacBook Neoはかなり説得力のある選択ではないかと思う。
※記事初出時、MacBook Neoが2万4000円分のApple Gift Cardのクレジットがもらえるキャンペーンの対象と紹介しておりましたが実際には対象外でした。また、MacBook Airに関する表記も修正しております。合わせて、おわびして訂正します。
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