限定公開( 3 )

国内の香水市場が拡大している。富士経済の調査によると、フレグランス市場は2024年に前年比9.4%増の547億円に達した。コロナ後の外出需要の回復や、SNSを通じた人気の拡大により、引き続き成長が見込まれている。
そのような中で注目を集めているのが、1プッシュ分の香水を試せる香水スプレー自販機 「PERFUMATIC」(パフューマティック)だ。
PERFUMATICは、スペインの企業Perfumatic Group BCNが開発した香水の自動販売機だ。1回のスプレー単位で香水を試せる仕組みで、世界65カ国以上に累計3000台以上が設置されている。
国内では2月10日、大阪駅直結のファッションビル「ルクア大阪」(大阪市)にて初めて、3台を常設した。導入から10日間で2000人以上が利用するなど、好調な滑り出しを見せている。3月18日には、イオンモール津田沼 South(千葉県習志野市)にも、2台を新たに導入した。
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PERFUMATIC1台あたり5種類の香水をラインアップできる。利用者は自販機に搭載されたタッチパネルで好きな香水を選ぶと、1プッシュ分が噴射され、香りを試すことができる。価格は1プッシュ100〜500円程度で、香水ブランドや設置場所に応じて設定している。
取り扱う香水はハイブランドからニッチブランドまで幅広い。フルボトルで買うと数万円する香水でも、少額で気軽に試せる点が特徴だ。
PERFUMATICの内部は国際特許を取得した技術によって香水の揮発・劣化を抑える構造になっており、長期間設置しても香水の品質や衛生を保てるという。
本体の大きさは幅70センチ、高さ44センチ、奥行き18.5センチとコンパクトだ。0.2平方メートルのスペースがあれば設置でき、電源コンセントがあれば稼働する。海外ではトイレや駅構内の壁面などに埋め込んで設置されるケースもあるという。
国内では、香水メディアを運営するAmulette(東京都渋谷区)が正規代理店として展開している。同社はInstagramやTikTok、YouTube、Xなどで香水情報を発信しており、総フォロワー数は約20万人に上る。香水業界のマーケティング支援やブランドプロモーションを手掛けてきた実績から、導入を進めた。
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●香水スプレー自販機が人気のワケ
PERFUMATICの利用シーンとしては、デートや飲みに行く前などおしゃれをしたい時や、自宅で香水を付け忘れた時などが挙げられる。加えて、フルボトルの香水を購入する前に1プッシュだけ香りを試すための利用もあるという。
Amuletteの代表取締役CEOを務める長田寛太氏は「香水はフルボトルで買うと、数万円してしまうので手が届きにくい。特に香水は時間と共に香りが変わるので、そういった変化も含めて試してもらうのが目的。また、フルボトルで買っても使いきれないお客さまは非常に多い。好きな時に好きな香りを1プッシュ試せるというのは非常にニーズがあると思っている」と説明する。
PERFUMATICの香水ラインアップは定期的に入れ替えるため、訪れるたびに新しい香りと出会える。気分やシーンに合わせて、さまざまな香りを気軽に試せる点も魅力だという。
また、百貨店などの香水売り場に入りづらいといったニーズにも対応する。高級デパートなどでは対面販売が基本なため「試したら購入しないといけないのではないか」とプレッシャーを感じてしまう人も多いという。
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こうした心理的負担を減らし、まずは気軽に香りを体験してもらう場として自販機を活用したい考えだ。最終的には、店舗やオンラインでの購入につなげる。
●ルクア大阪に常設した狙いは?
PERFUMATICの国内での常設設置は、ルクア大阪が初めてだ。設置場所はJR大阪駅・大阪メトロ梅田駅と直結しているフロアで、1日を通して多くの人が行き交う場所だという。
長田氏は「買い物に行く途中や通勤通学中など、トラフィックが多い場所に設置して、日常との接点で香りをもっと楽しんでほしい」と説明する。
ルクア大阪は20〜40代のトレンド性の高い女性の利用が多かったことも決め手になったという。長田氏は「利用客数は場所や香水のラインアップによって変わってくるものの、ルクア大阪では非常に多くのお客さまから良い反響をいただいている」と話す。
香水のラインアップは、設置場所に合わせて変えている。百貨店なのかファッションビルなのか、あるいはショッピングモールなのかで、客層やブランド戦略が異なるためだ。
例えば百貨店では、館内で取り扱う香水の販売につなげる目的で、同じブランドの香水が優先的にラインアップされるケースが多い。一方でファッションビルでは集客手段としての役割も重視され、館内で取り扱っていないブランドを入れることもある。
ルクア大阪では、3台を設置して合計15種類の香水を展開している。女性向けの香水を中心にラインアップする一方で、大阪で販売していないブランドもあえて導入した。
長田氏によると「東京の百貨店に香水ブランドが集中しているので、地方のお客さまが香水を試したくても試せる場所がないという声を非常に多くいただいている。その場でしか試せない香りを創出したいので、場所によってラインアップを意図的に変えている」という。
また、AmuletteはSNSで香水メディアを運営していることから、ユーザー層や香りの人気傾向に関するデータを集積している。SNSでの反応やアンケートなども参考にしながら、施設や客層に合わせて香水を選定しているそうだ。
●体験イベントを開催
2月28日〜3月1日には、ルクア大阪で開催されたコスメイベントで、PERFUMATICの体験イベントを開催した。通常は有料で提供している自販機を無料で試せるほか、限定の香りをラインアップした。
体験後の印象についてアンケートを実施したところ「実際に使ってみたい」と回答した人は74.6%、「今後の普及に期待したい」は21.5%に達し、好評な様子がうかがえた。
また、体験者は女性が75.8%、男性が24.2%だった。コスメイベントの来場者は女性ユーザーが中心とされているものの、今回の体験会では約4人に1人が男性となった。従来の香水売り場よりも自由に体験できるため、香水初心者や男性にとっても試しやすい環境だという。
●香水ブランド側のメリットは?
PERFUMATICは、香水ブランド側にとっても新たな顧客接点を生み出す場になる。一般的に百貨店などのフレグランスカウンターは、香水を試したかったり、購入を検討したりしている人が訪れるケースが多い。
一方、自販機の場合は必ずしも購入を前提としていない人も多い。ルクア大阪でのイベントの来場者アンケートでは、自販機を試した77%が「現在、購入を検討している香水はない」と回答した。つまり、香水に興味はあるものの、これまで売り場に訪れなかった潜在顧客層にもアプローチできる可能性がある。
Amuletteでは自販機を販売の場というよりも、香りを体験してもらうきっかけとして位置付けている。まずは香りを知ってもらい、その後、店舗やオンラインでの購入につなげる狙いだ。
長田氏によると、日本では香りそのものよりも「ブランド名」や「誰が使っているか」といった要素で香水が選ばれる傾向があるという。
そのため、品質の高い香水を作っていても、知名度の低いニッチブランドは試してもらう機会が少ないという課題があった。直営店を持たず、実店舗は期間限定のポップアップストアしかないブランドも多い。
好立地に出店したくても資金面などで難しい場合があるが、自販機であれば比較的手軽に設置できる。より多くのブランドを「知ってもらいたい」という思いもあるそうだ。
また、ルクア大阪に設置したPERFUMATICでは、本体の下部分にデジタルサイネージを導入しており、広告枠としても活用している。広告内容としてはフレグランスや化粧品、ファッション、美容家電などのカテゴリーを想定しているという。
●“香水砂漠”で今後、人気を集められるか
Amuletteは2026年中に30台以上の設置を目指す。連携しているブランドは100以上で、商業施設からの問い合わせも50件以上に増加しているという。
国内の香水市場は拡大している一方で、欧米などと比べると日本は香水が売れづらい市場だとも言われている。
長田氏は「日本は“香水砂漠”と揶揄(やゆ)されるほど市場規模が小さい。香りをまとうことは、自信につながったり、自分を他人にどう見せるか表現したりなど、情緒的な価値のある素晴らしいものだと思っている。今後は親和性のある場所に設置していきながら、事業を広げていきたい」と意気込んだ。
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