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スペインのマドリード自治大学や日本の金印(わさびなどを販売する食品メーカー)などに所属する研究者らは論文「Hexaraphane as a potential therapeutic strategy for tauopathies」を発表した。この研究では、本ワサビに含まれる成分が、脳内でタウタンパク質の異常なリン酸化を抑え、アルツハイマー病などの神経変性疾患の進行を食い止める可能性があることを報告している。
アルツハイマー病をはじめとする認知症の脳内では、本来正常に機能すべきタンパク質が異常な形に変化し、いわば「ごみ」のように蓄積していく。こうした脳内のごみの代表格が、アミロイドβの凝集体と、タウタンパク質の異常な塊だ。
特にタウは、リン酸が過剰に結合する過剰リン酸化が起きると、神経細胞内に異常な構造物が蓄積し、神経の炎症や細胞死を引き起こしてしまう。これまでこの過剰なリン酸化を防ぐために、リン酸を結合させる酵素(キナーゼ)の働きを抑える治療薬の開発が進められてきたが、臨床において十分な成果は得られていなかった。
この研究では、本ワサビ(Wasabia japonica)に含まれる成分「ヘキサラファン」(HXN)が、このタウの異常に対して有望な治療効果を示すことが報告された。
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ヘキサラファンは、これまでも細胞を保護し炎症を抑えるシステムを活性化する物質として知られていた。しかし、研究チームがアルツハイマー病のマウスから採取した神経細胞を用いて実験したところ、ヘキサラファンはこれまで知られていた保護システムとは別のメカニズムで異常なタウを減少させることが明らかになった。
詳細に解析すると、ヘキサラファンはリン酸を結合させるキナーゼの働きを邪魔するのではなく、逆にタウからリン酸を取り除く酵素である「タンパク質ホスファターゼ2A」(PP2A)を活性化させることで、タウを正常な状態に戻していることが判明した。
実際に、タウの異常を再現したマウスにヘキサラファンを5週間にわたって飲ませる実験を行った。結果、大脳新皮質や脳幹といった脳領域において、病的なタウの蓄積が減少し、記憶力や運動能力の改善傾向が見られた。また、近年アルツハイマー病の早期診断の指標として重視されている血液中の異常タウ(TAU-pThr217)の濃度も低下していた。
※Innovative Tech:2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
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