“パワードスーツ”はもうSFの道具じゃなかった 高尾山でコンシューマー向け外骨格「Hypershell X Pro」を試す

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2026年03月27日 15:10  ITmedia PC USER

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超距離の移動や、階段の上り下りが多いメンテナンス/警備/宅配業の方にも注目されている、外骨格式のパワードスーツ「Hypershell X Pro」

 人間の筋力を増強、補強する「パワードスーツ」と聞くと、どうしてもSFの世界のようなガジェットを思い浮かべてしまいます。もしくは、研究施設や産業用途の装備という印象が強いですよね。ところが実際には、一般ユーザーが購入できるコンシューマーモデルも登場しています。気付けば、もはや未来の話ではなくなっていました。


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 その1つが、脚力の強化を目的とした外骨格式のパワードスーツ「Hypershell X」です。腰から太ももにかけて装着し、歩行時の脚の動きを補助する製品です。


 今回、ミドルレンジモデルとなる「Hypershell X Pro」を試す機会が得られたので、高尾山のハイキングに使ってみました。上りと下りの負担がはっきり分かれる場所で、脚力を補助する外骨格がどう働くのか、試してみました。


●4モデル展開、Proはコスパ重視のど真ん中モデル


 日本では、「Hypershell X Go」「Hypershell X Pro」「Hypershell X Carbon」「Hypershell X Ultra」の4モデルが販売されています。


 今回試したHypershell X Proは、エントリーモデルであるHypershell X Goから出力とアシスト段数を引き上げたモデルです。重量は同じながら、モーター出力を400W→800Wに倍増。バッテリー駆動可能距離も引き上げられ、歩行、上り坂、ランニングなど、状況ごとに適切なアシストを行うアクティブモーション数も増えています。


 Hypershell X CarbonはHypershell X Proと同じ駆動系を用いながら、カーボン素材などを使うことで軽量化したモデルです。Hypershell X Ultraは、さらなるパワーアップを果たしたハイエンドモデルで、この2モデルは高価です。


 そうして見ると、Hypershell X Proは性能と価格の両面でバランスがとれており、シリーズの中心に置かれたモデルだといえます。


●腰と太ももに集中する、シンプルな外骨格構造


 Hypershell X Proは、腰から太ももにかけて装着する外骨格です。バッテリーを備える腰回りが中心となり、左右の腰部にモーターを備え、そこから脚側のパーツが伸びています。足首やふくらはぎまでを覆う構造ではなく、歩行時に大きく動く腰と太ももに機能を集中させた作りです。


 折りたたみ時のサイズは、約430(幅)×260(奥行き)×125(高さ)mmです。使わないときはある程度まとまった形になり、大きめのバックパックで運べます。


 右側モーター部分には制御ボタンとステータスLEDがあり、電源のオン/オフやモードの切り替え、出力調整を行えます。歩行中でも手を伸ばしやすい位置に操作部がまとまっているので、状況に応じた切り替えは本体側で行えます。


 バッテリーは着脱式で、腰部に取り付けます。容量は5000mAh/72Whで、Hypershell X Proには2本付属します。


 充電は本体側のUSB Type-Cポートを使う方式となっており、USB PD(Power Delivery)充電に対応しています。0%から100%までの充電時間は、65WのAC USBアダプター使用時で約88分とされています。


●装着のコツは「位置合わせ」にあり


 装着で重要なのはフィッティング、位置合わせです。まず自分の体形に合わせるべく、専用スマホアプリに自分の身体情報を入力します。推奨値が出たら腰フレームのロックを外し、チューブを推奨値に合わせて調整、腰ベルト/フレームを腰骨の上端に持ってきて固定します。腰ベルトバックルをへその位置に合わせるのもポイントです。


 モーターと腰骨の隙間は約1cmが適切です。腰部分を装着したまま微調整して、腰フレームをロックします。


 脚側の調整も行います。太ももベルトの下端がひざ上約3cm(大人の指2本分くらい)の位置に来るように、スライダーのロックを外して調整します。後脚ストラップがひざ裏に食い込まない位置にしていきます。


 電源を入れるとデフォルトはエコモード(低アシスト)となり、制御ボタンを1回押すと透明モード(アシスト量ゼロ)と前のモードを行き来します。2秒長押しでエコモードとハイパーモード(高アシスト)を切り替え、2回押しでパワーレベルを25%上げ、3回押しで25%下げます。


 右側モーターのステータスLEDは、透明モードでは青、エコモードでは緑、ハイパーモードでは赤、フィットネスモードでは黄で状態を示します。


 アプリ側ではもう少し細かい調整ができます。モードの直接切り替えに加え、パワーレベルバーで強度を調整できる他、アシスト応答速度、急斜面下行制御(HDC)、低速安定制御(LSSC)、左右のトルク分配なども設定できます。


 歩いているときの状況に応じて、アクティブモーションを自動で切り替えられます。さらに上り坂、下り坂といったようにアクティブモーションを固定することも可能です。同じ状況が長い距離続くシチュエーションのときに活用すると楽になります。


●3号路の上り、ハイパーモードで足取りが変わった


 今回、高尾山の上りに選んだのは3号路です。全長は1号路の分岐点から2.4kmとのこと。1号路のような舗装中心の道ではなく、木々の間を抜ける山道らしいコースで、足元にもさまざまな変化があります。


 実際に歩いてみると、平たんな場所ではエコモードで十分でした。補助が強く出すぎず、歩調を乱される感じもほぼありません。


 一方、上りのシチュエーションになるとエコモードではアシストが不足気味だと感じます。そこでハイパーモードに切り替えると印象が変わります。足が斜め上から引かれるような感覚が出て、腿を上げる動きがスッと軽くなりました。パワーレベルや動作モードでも挙動は変わりますが、少なくとも登りでは、本体側の制御ボタンで切り替えしやすいというのもあって、ハイパーモードがおすすめですね。


 面白かったのは、単に足を持ち上げるだけではなかったこと。脚を前に出すだけじゃなく、反対の脚を引いて腰を回す動きまでサポートしてくれているフィーリングで、歩行全体を助けられている感覚がありました。効率の良い歩き方、階段の上り方を身体にたたき込んでくれそうという期待もできます。


 なお、石や木でできた階段が続く場所に来たときは、上り階段アクティブモーションがおすすめです。大中小さまざまなサイズの根が露出した場所では、可動範囲が広い山地アクティブモーションを選ぶと快適でした。


 上りにかかった時間は、休憩を除いて50分ほど。最後に階段が続くシーンを除けば、ハイキングをしているというより散歩感覚になりました。軽い足取りで歩き続けられましたね。


 3号路は高尾山の中では歩きやすいコースですが、それでも細い場所や段差はあります。その中で終始、歩くリズムを保ちやすかったのは確かでした。


 心拍数は計測し忘れてしまいましたが、汗はしっかりかきました。半袖になりたくなったくらいなので、モーターの力でアシストされたといっても確かな運動量があったことを実感しました。


●バックパックとの相性がある


 途中で1つ「失敗した」と感じたことがありました。今回はHypershell X Proを運ぶために、メイン室が30Lほどある縦長バックパックを背負っていたのですが、これが腰に装着した本体の上に乗る形になってしまったのです。


 歩いているうちに、バックパックの重みでHypershell X Proの装着位置が少しずつ下にずれていき、最初に感じていたアシストの効き方が薄れてきてしまいました。そこで装着し直すと、感覚は元に戻りました。Hypershell X Proは腰側の位置合わせが重要な製品なので、大きくて縦長のバックパックとは相性が悪いといえます。


 車で行くなら現地で装着すればいいのですが、公共交通機関を使うなら、ハイキング中に背負う荷物はできるだけ軽く、薄いものにするのがポイントでしょうか。具体的には、Hypershell X Pro自体を(例えばIKEAの青バッグのような)大きく薄いトートバッグで運び、歩くときは10L前後の薄めのバックパックにする(トートバッグはバックパックに入れる)、といった運用の方が扱いやすいかもしれません。


●下りで膝が楽になる感覚、これは本物だった


 下りは、山頂からリフト乗り場までの大半が舗装区間となる1号路を使いました。階段や傾斜が続く場面もあり、膝への負担が気になりやすいコース。というのも筆者はちょっと膝を痛めていましてね……。そうした場面で使ってみた時の第一印象は


 「楽!!!」


 まじですか。膝への負担が大幅に減っているんですが。


 下り坂モードや下り階段向けの動きに合わせると、一歩ごとに膝への衝撃が軽くなります。一歩一歩、足で体重を受け止める都度、膝へ集まりがちな負担がやわらいでいます。特に段差の大きい階段を降りるときに、その印象が強くなる。「最近、足腰が疲れ気味で……」という方でも、散歩したくなる魅力があります。


 舗装された平たん路では、競歩モードも試しました。こちらはハイパーモードとは少し違い、斜め上に引き上げられるというより、前から引かれるような感覚が強く出ます。


 歩幅を広げやすく、テンポよく前に進めるのですが、高尾山の1号路のように人が多い場所で常用するのは少し気を使います。周囲に人が少ない散歩道や、ある程度真っすぐ進めるランニングコースの方が、このモードの持ち味は出しやすそうでした。


 今回は、行きにケーブルカー、帰りにリフトを使ったので、実際に歩いた距離は長くても4.5km前後でした。その条件で使ったところ、バッテリーの消費量は3分の1ほど、Hypershell X Proのバッテリー駆動可能距離(公称)は、バッテリー1本あたり約17.5kmです。アシスト量が多いハイパーモードや、安定性を高める低速安定制御などの機能を多用すると、もっとバッテリー消費量は増えるだろうと考えられますが、今回のような1〜2時間規模のハイキングでは、バッテリー切れを心配する場面はありませんでした。


●「歩くハードルを下げるガジェット」として考えると身近になる


 Hypershell X Proは医療機器ではありません。膝や脚の不調を治療するものではなく、安全を保証するものでもありません。その点は念頭に置いておく必要があります。ただ、高尾山で実際に使ってみると、膝に不安を感じ始めた筆者のような人間でも、Hypershell X Proがあれば、散歩もハイキングもおっくうではなくなるデバイスだと感じました。


 海外では、中国の観光地で登山者向けに外骨格ロボットを貸し出すレンタルサービスが広がりつつあります。既にパワードスーツは、現実の移動を助ける道具として使われ始めています。


 外骨格と聞くとどうしてもゴツいイメージがありますが、それよりずっと身近で、歩くことのハードルを下げるためのガジェットとして考えると身近な存在になりそうだ、と感じました。



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