

デザインフィルのプロダクトブランド「ミドリ」の製品として発売されていた人気のノートシリーズ「MDノート」を中心にした「MD PAPER PRODUCTS」などの製品が、新しいブランド「MD PRODUCT」として独立しました。
ミドリのブランドからは、以前「トラベラーズノート」とその周辺アイテムが「トラベラーズカンパニー」として独立ブランドになりましたが、それと同じく、製品としての個性を際立たせるための新ブランド設立ということのようです。
「ミドリ」からブランドを分けた背景
「トラベラーズノート同様、MD関連のプロダクトも、ミドリのほかの製品とは少し性質が異なってきたと感じていました。紙はミドリもトラベラーズもMD用紙を使っているのですが、佇まいや世界観は、例えばミドリの『ダンボールカッター』と一緒ではないと思うんです。また、MD PRODUCTのプロダクトは、ユーザーの海外比率もおよそ5割ほどあります。売上構成比や売上金額なども含め包括的に考えると、別ブランドにして違う道を選んだほうがブランドのためにもいいだろう、ということで独立しました」と、MD PRODUCTブランドマネージャーの田中風実さん。実際、ミドリといえば、「ゆるログ」(誰でもゆるく楽しく日々の記録がつけやすいノートシリーズ)に代表されるような、柄や意匠を楽しむプロダクトも多く、「MDノート」などの素材感を大切にしてシンプルに「紙」のよさを見せる製品とは趣も随分違います。そのあたりも考えて、デザインコンセプト的にもブランドを分けるというのはストーリーとしてもうなずけます。
「余白は、可能性。」をメインコンセプトに

「新しいブランドとしては、3つのテーマを考えました。1つは『書く』を愉しむ、これは、従来のMD用紙を前に出したノートなどの製品で中心となるテーマです。2つ目は自分と向き合う環境づくりのサポート、3つ目は『らしさ』を解放する体験ができる場・空間の提供。日記を書くことや、本を読むことなどの“自分と向き合う時間”に使うものの1つとしてノートがあったり、その場を整えるものとしてお香があったり。この3つのテーマを軸にデスク・インテリア周りのアイテムも今後展開していきたいと考えています」と田中さん。
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余白を見つけてそれを埋めてもいいし、余白があることに気付いて安らいでもいいし、余白を見つける助けになるのもいいといったように、幅広く捉えているからこその「可能性」としての余白なのでしょう。
香りでゆっくりと過ぎる時間を楽しむ「MD香時計」

その意味で、ブランドを象徴するような製品が約1時間で燃え尽きる円形のお香と、専用の香台で構成される「MD香時計」です。お香を時計代わりに使うのは、古典落語の『たちきり』や『お直し』などにも登場する古くからの活用法です。実際、「香時計」で検索すると多くのお香メーカーからも発売されています。
ただ、この「MD香時計」のように、ノートのブランドがデスクトップアイテムとしてデザインし開発して発売するというのは、相当に珍しいことと言えるでしょう。しかも、使ってみれば分かるのですが、見事に「机の上で、ノートなどに向かう時に使いたくなる」アイテムになっていました。
「新ブランドのコンセプトができた後、自分と向き合ったり、自分を解放する時間をつくるために、どのようなプロダクトならメッセージが伝わるのか、ちょうど1年ほど前から考え始め、最初は時計を作ろうと思っていました。すでにペンもノートも、万年筆もあり、書ける環境はあったので、その時間をどう過ごすかというところまで考えようとしたんです。
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過ぎていく時間を視覚と嗅覚で楽しむための円形のお香

プロトタイプを見せてもらったところ、お香をセットする台が時計の形をしているものもあって、時間を表現する形としての「時計」というアイデアは、香りと時計を融合させようと考え始めたあともかなり引きずったのだそうです。ただ、時計だとステーショナリー的な流れから離れられていないと判断し、そこから現在の素材感を見せる「塊」としての「台」というデザインに行き着いたといいます。

そして、お香が円形というのも案外珍しく、作ってもらえるメーカーを探すのも大変だったそうです。しかも、約1時間で燃え尽きるようにするには、かなりお香自体は細くする必要があり、蚊取り線香のように皿に直接置くと火が消えてしまいやすくなってしまいます。これまでにない形と機能だけに、開発にも時間がかかります。また、デスクトップに似合う香りは何かということも考えなければなりません。

「香りはフォレスト、フローラル、コーヒーの3種類です。フォレストは『やはりMDといえば紙で、紙は木からできていて……』などと考えて入れたいと思いました。フローラルはルームフレグランスの定番ですが、環境を整える上で落ち着く香りは入れたいということで決めました。コーヒーは、ノートを書いたり本を読んだりする時にとても似合う香りだと考えたんです。コーヒーを飲むことを、自分と向き合う時間にしている人もいますし、変わり種だけどやってみたいねと。カフェインが苦手な人でも、コーヒーの香りだけ楽しめるといいかなとも思いました」と齋藤さん。
3種類の香りと、3種類の素材を使った香台

香りや煙が邪魔にならないように、煙がなるべく出ない調合にして、香りもデスク周りだけで楽しめるように控え目にしたということでした。実際に試すと、確かに煙も最初と最後だけ少し多めに出ますが、途中は出ているかどうかよく分からないほどです。香りは、フローラルはやや強めというか、残り香が長く残りますが、コーヒーとフォレストは、確かに控え目だと感じました。個人的にはコーヒーの香りが実際のコーヒーを淹れたときに、その香りを邪魔しないほどに控え目なのが気に入りました。
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香台はカリモクとコラボした木製のものは、広葉樹のナラとウォールナットの2種類。そのほか、塊の素材感が面白いモルタル製(ライトグレー、グレーの2色)、透明感と重量感が同居するガラス製(氷、雪の2種類)の計6種類や、お香をセットする部分だけを独立させて、好きなお皿などと組み合わせて使う真鍮製の香台も用意。

この、円形のお香を1カ所で固定する金具の形状がよくできていて、ざっくり挟んでもしっかりお香を浮かせて固定できます。香炉ではなくただお香を焚(た)くだけの台というのは、蚊取り線香以外ではあまり見ることのないスタイルですが、ゼロベースでこの形状を製品化できるのは、さすがデスクトップアイテムを長く作ってきたメーカーならではという感じがします。
「書く」を助けつつ、デスクトップも飾れる円形の「ペンレスト」

MD PRODUCTの新製品としてはもう1つ、「MDペンレスト」も発売されました。こちらも「MD香時計 香台」同様、木製、モルタル製、ガラス製の各2種類ずつ、計6種類が用意されています。香時計の香台を一回り大きくした円形のフォルムに3つの溝があって、そこにペンを置けるようになっています。

「1本だけ置けるペンレストというのに憧れていたので、最初は1本用もいいなと思ったんです。結局、何本置けるようにするかは、実際に1〜5本置けるものまで作ってみて、使ってもらったりしながら決めました。3Dプリンターでほとんど製品と同じ性能のものが作れるので、溝の幅なども含め、作っては試しの繰り返しを社内だけで行えたのは、チームで実物を見ながら、スピードと深さのある検討ができた点が大きなメリットでした」と言いながら、齋藤さんがたくさんの試作品を見せてくださいました。

ペンレストなどは長方形のものが多いのですが、このペンレストは円形なので、ユーザーが好きな角度でペンを置くことができます。一度に使うペンの種類も、個人的にも3本くらいかなと思います。そこは好みもあるでしょうが、それ以上の数だとペンケースを使う方がいいような気もします。クリップのない万年筆を愛用している筆者は、このペンレストがとても気に入ってしまいました。一見、コースターのようなさりげない佇まいがいいのです。
ノートとペンが中心にあり、その一番外側に「香時計」があって、それをつなぐような形で「ペンレスト」があるというのが、新しいブランドMD PRODUCTのスタートの形ということなのでしょう。今後、どのような製品が出てくるのか楽しみなブランドです。筆者は個人的に、「いいペン立てがあるといいんですけど」とリクエストしてみましたが、さて、どうなるでしょうか。
納富 廉邦プロフィール
文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。(文:納富 廉邦(ライター))

