液晶なのにE Ink風? 約10万円の価値はある? TCLの異色電子ノート「Note A1 NXTPAPER」徹底レビュー

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2026年04月03日 14:10  ITmedia PC USER

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TCL Japanの「Note A1 NXTPAPER」。実売価格は9万9800円からと、スタイラスおよびカバー込みとはいえ、電子ノートとしてはかなり高価な部類に入る

 TCL Japanから、電子ノート「Note A1 NXTPAPER」が登場した。一般的な電子ノートに多く採用されるE Ink電子ペーパーではなく液晶を採用した製品だが、電子ノート用途にチューニングが施されており、目に優しく指紋も付きにくいことを売りにするユニークなコンセプトの製品だ。メーカーから機材を借用したので、レビューをお届けする。


【その他の画像】


●液晶を電子ペーパー風の表示にカスタマイズ


 まずは外観から見ていこう。ボディーは「Kindle Scribe」やBOOXの一部モデルにも見られる、タブレットの片方のベゼルだけが太いデザインを採用している。この太いベゼルの中央には、かつてのiPadのホームボタンに似た丸型キーが搭載されている。押し込む感覚も似ており、ユーザーにとってなじみやすいものになっている。


 ボディーは約5.5mmという薄さが特徴だが、既存のタブレットでは「iPad Pro」など同水準の製品もあること、また持ち歩く場合はケースを装着することもあり、本体の薄さを実感するシーンはあまりない。重量が実測505gと、電子ノートとしては決して軽量ではないことも、理由の1つと言っていいだろう。


●ディスプレイはE Inkではなく液晶


 画面は電子ノートで採用例の多いE Inkではなく、液晶を採用している。同社は液晶という表現は使わず「トゥルーカラーディスプレイ」という表現を使っているが、色数は約1670万色、リフレッシュレートが120Hz、輝度が最大300ニトなど、スペックは紛れもなく液晶ディスプレイのそれだ。


 一方で、ホーム画面以下のUIはモノクロを主体としたデザインを採用するのに加え、ブルーライト比率が2.44%以下、反射率は76%以上低減、グレアは55%以上最小化など、E Inkの見え方に近くなるチューニングが施されており、見た目はまさに高品質なE Inkだ。


 さらに指紋の跡も目立たず、いい意味で液晶らしくない。こうした特性ゆえ、液晶という表現は使いたくないというのが正直なところだろう。


 一方で、実機を手に取って最初に驚くのが重量だ。本体は500g強と、11型クラスの電子ノートとしては決して軽量ではない上、さらに今回試用機に付属してきたキーボードケースはずっしりと重く、合計では1kgの大台を超えてしまう。


 そもそも本製品は手書き入力がメインで、音声入力にも対応するなど入力方法は多彩であり、キーボードはあまり必要と感じない。少なくともキーボードからの入力が中心になるのならば、本製品以外にも選択肢は多数あるし、何より重量増のデメリットは大きい。オプションにはキーボードを省いた一般的な保護ケースも用意されているので、そちらをチョイスした方がよいだろう。


●電子ノートとしては一般的な機能を網羅 AI支援機能も搭載


 では実際に使ってみよう。ホーム画面は、電子ノートではおなじみとなる作成済のノートのサムネイルが一覧で並ぶデザインだ。新規にノートを作成する場合は右下の「+」ボタンをタップし、手書きで筆記する「手書きメモ」か、キーボードを使ってテキストを入力する「テキストノート」のいずれかを選ぶ。


 メインとなるのは「手書きメモ」で、消しゴム/なげなわ/鉛筆/ペン/ボールペン/署名ペン/マーカーといった一般的なツールに加え、定規/図形/テキストボックスといった補助ツールも用意されている。これらは上部のアイコンをタップして切り替える仕組みだ。


 この他、手書き文字をテキストに変換する機能も用意されている。精度は高く、日本語とアルファベットが混じっていても問題なく変換できる。会議や講義の書き起こしを主目的とした音声入力機能も用意されているが、こちらは試した限り、日本語と英語の混在環境では英語の変換精度が低くなる傾向があるようだ。


 さらに、AIを用いた文章生成機能も備える。イベント計画や招待状、会議通知といったカテゴリーを選択することで文章を自動生成してくれる機能で、「簡略化する」「カジュアルにする」などタップ1つで文章をリライトすることも可能だ。個人的には電子ノートでここまでの機能が必要かは疑問だが、PCやスマホで行っている文章作成をオールインワンで行えることを評価する人もいるだろう。


 新規に作成できるもう1つの「テキストノート」は、手書きではなく最初からテキストデータとして入力する機能で、設定できる項目は見出しや段落、右寄せ/左寄せや行間の調整、箇条書きや画像、ハイパーリンクの挿入など、ワープロ的な機能が主だ。前述のハードキーボードから入力する場合は、こちらを選択することになるだろう。


●外部とのデータのやり取りも容易 自社サービスの縛りなし


 作成した「手書きメモ」「テキストノート」を、外部に書き出す方法について見ていこう。


 まず個別のノートをPCやスマホに書き出す場合は、データをいったんローカルに保存したのち、Android標準の共有メニューを経由して書き出すことになる。フォーマットはPDFおよびPNGで、テキストノートはTXT形式も選択できる。ちなみにQuickShareには対応しておらず、Bluetoothでの共有となる。


 これ以外に、対応するクラウドストレージへのアップロードも行える。標準で対応しているのはGoogle ドライブとOneDrive、さらにDropboxの3種類で、アプリを連携させておくことで書き出しが可能になる。ちなみに、連携したアプリからはエクスポートだけでなくインポートもできるので、PDFなどを取り込みたい場合に役立つ。


 さらに、これとは別に本体内のファイルを同じLAN上にあるデバイスから読み出す機能もある。他のデバイスのブラウザに本製品のIPアドレスを入力してアクセスするという、スマホなどでよくあるファイル共有の仕組みで、読み取り用のQRコードも用意されている。こちらも読み出しだけでなく、書き込みも可能だ。


 といった具合に多彩な方法が用意されており、他のデバイスとの連携という意味では十分過ぎるほどだ。他社製品によくみられる、自社クラウドサービスの縛りがないのも高評価である。初心者にはもう少しシンプルであった方がよさそうにも感じるが、中級者以上であればそれぞれの違いを理解した上で使い分けられるはずだ。


●Androidアプリにも対応するが限定的


 続いて、電子ノート以外の機能について見ていこう。


 まずはPDFビューアだ。本製品は外部から取り込んだPDFファイルを、「TReader」というビューアで表示できる。電子書籍などのPDFも快適に閲覧できる――と言いたいのだが、縦スクロールもしくは左とじのみなので、日本語書籍に多い縦書きのファイルや、コミックの閲覧には向かない。右とじ対応のPDFビューアを自前でインストールした方が快適だろう。


 次はブラウザだ。Edgeがプリインストールされており、一般的な液晶タブレットと変わらぬ使い方が可能だ。この場合、画面の色合いは電子ペーパー似ではなく完全な液晶のそれで、スクロールもスムーズとあって、電子ノートであることを忘れてしまうほどだ。余談だがブラウザがChromeでなくEdgeである以外にも、OneNoteやOutlookが使えるなど、アプリの構成は全体的にMicrosoftに寄っている。


 この他、本製品は独自のアプリライブラリである「APK Download Center」が用意されており、そちらからはWord/Excel/PowerPointの他に、Kindleもダウンロードして利用できる。ただし、アプリの顔ぶれが今後増えるかは保証されていないので要注意だ。またこのライブラリを経由してアプリが継続的にアップデートされるかは定かではなく、そこは自己責任での利用になるだろう。


 ちなみに、本製品のOSはAndroidベースということで、外部からAPKファイルを持ち込めば、さまざまなAndroidアプリを利用できる。とはいえ実際に試した限り、複数のベンチマークアプリがブロックされているのかインストールできず、例えAPKファイルが用意できても、あらゆるアプリが動作するわけではないので気を付けたい。


 ストアを経由しないため、インストールに成功しても次回以降のアップデートは手動になる点も覚えておこう。


●中級者向けの製品 実売価格をどう見るかで分かれる評価


 以上のように、液晶の表示を電子ペーパー風にカスタマイズすることで、電子ペーパーの欠点である発色やリフレッシュの問題を解決したとアピールする本製品だが、実機を使ってみると意外なほどオーソドックスな液晶タブレットというのが率直な印象だ。


 これは決して悪い意味ではなく、既存の電子ノートと比較しても機能や操作性が破綻しておらず、堅実に使えることによるものだ。こうしたデバイスにありがちな、理想だけは高いがさっぱり使い物にならないという機能も、ざっと試した限りでは見当たらないことも評価できる。


 ただし使えば使うほど、どのような層に向けた製品なのか、見えなくなってくるのも事実だ。筆者は実機を使ってみるまでは、液晶なのかE Inkなのかといった技術的背景はあまり深追いせず、実際の使い勝手を重視した製品という印象が強く、それゆえ中級者よりも初心者を狙った製品なのだろうと予想していた。


 しかし実機を見ていくと、表面的には確かにそうだが、実際に使いこなすにはAndroidの知識をある程度備えた中級者向けの製品であるとの印象を強く感じた。「Androidを知っていればより深く使いこなせる」と、「使いこなすにはAndroidの知識が必要」は似ているようで全く違うが、本製品は後者であって前者ではないイメージだ。


 例えば、外部への書き出しメニューは共有やエクスポート、クラウドアップロードといった複数の選択肢があるが違いが分かりにくく、またどれを選んでも以降の操作は別アプリが受け持つので、Androidの利用経験がなければ戸惑いがちだ。基本的な操作においても、ある程度ベースとなる知識を必要とすることは、特に初心者は注意した方がよいだろう。


 あとは価格だ。スタイラスと保護ケースが込みで実売価格は9万9800円からと、容量256GBのタブレットとしては比較的リーズナブルだが、電子ノートでは同等価格帯の選択肢は他にもある。


 電子ノートの利用割合がそれほど高くないのであれば、汎用(はんよう)的なタブレットを購入した方が、対応アプリが多いなどのメリットもある。E Ink製品に比べてつぶしが利くとはいえ、こと価格面では強みを感じないというのが正直なところだ。


 クラウドファンディングで1億円を超える出資を集めている本製品だが、E Inkながら本製品に近いコンセプトを備えていたファーウェイの「MatePad Paper」が発売から4年経ち、現在では同社のラインアップに跡形もないことを考えると、本製品も安泰とは言えないだろう。


 とはいえ、発売時点での完成度は本製品が明らかに上で、かつAI関連ではさらなる機能追加も予定されているようなので、そのあたりの進化にも期待したいところだ。



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