
イランとの戦闘をどう終わらせるのか。世界が注目するなか、アメリカ・トランプ大統領が演説を行いました。国民向けに「まもなく軍事目標を達成する」と強調しましたが、肝心の“出口戦略”は示されず、かえって不安をあおる結果となっています。
トランプ氏演説 戦闘終結は?「2〜3週間のうちに…」イラン国旗が記されたミサイルらしきものに書かれたのは、「死ぬまでイランのために」という文言。
イラン国営テレビが公開した映像には、イラン側が中東にあるアメリカの拠点に向けて発射したとする、ミサイルやドローンが映っていました。人々は空を見上げ、飛び立つ兵器を見送ります。
アメリカとイスラエルによる攻撃にイランが応戦する…報復の応酬がとまりません。
アメリカはこの戦いをいつまで続けるのか。テレビの視聴者が多い、夜のいわば「ゴールデンタイム」に、トランプ大統領は国民向けの演説を行いました。
トランプ大統領(アメリカ 東部時間1日 午後9時ごろ)
「この4週間、我々は迅速かつ決定的で圧倒的な勝利を収めてきた。これほどまでの勝利は今まで誰も目にしたことがないだろう」
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まずは、攻撃によって「イランの海軍や空軍は壊滅状態になった」と成果を誇りました。
今回の会見で最も注目されたのは、戦闘終結への道筋が示されるかでしたが、今後2週間から3週間、さらに激しい攻撃を行うと表明したのです。
トランプ大統領
「アメリカはまもなくすべての軍事目標を達成する。今後2週間から3週間のうちにイランに強烈な打撃を与え、奴らを本来いるべき石器時代へと引き戻してやる」
並行して戦闘終結に向けた協議を進めるとも話しましたが…
トランプ大統領
「(2〜3週間中に)合意が成立しなければ、イランのすべての発電所に対し、極めて厳しい攻撃をするつもりだ。それもおそらく同時多発的に」
演説を受けて、イラン軍の報道官は声明でこう警告しています。
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イラン軍 報道官(2日)
「全能なる神への信義のもと、この戦争はお前たちが屈辱と恥辱を味わい、永遠に後悔し、降伏するまで続く。これまでお前たちが受けてきた甚大かつ痛烈な打撃に続き、より強力で破壊的で、広範囲に及ぶ攻撃を覚悟しろ」
またイラン国営メディアによると、トランプ氏の演説直後に「イランのミサイルがイスラエルの港湾都市ハイファに到達した」と報じられています。
トランプ演説後に原油価格 10%以上急騰戦闘開始から1か月が経ち、トランプ氏が懸念しているのがガソリン価格の上昇です。
1ガロン(=約3.8リットル)あたり4ドルを突破しましたが、その理由をイランに押しつけようとしています。
トランプ大統領
「(ガソリン価格の)一時的な上昇は、イランが紛争とは無関係な石油タンカーや近隣諸国に常軌を逸したテロ攻撃を仕掛けた結果だ。イランは事実上壊滅した。この紛争が終われば(ホルムズ)海峡は自然と開放され、ガソリン価格もすぐに下がるだろう」
トランプ氏の期待とは裏腹に、演説開始からニューヨークの原油市場では原油価格が急騰。WTI原油先物価格は一時、1バレル=110ドルを超えました。
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記者(2日 午前10時半ごろ)
「トランプ大統領の演説を受け、日経平均株価は下げ幅を拡大しています」
日経平均株価も2日、1276円値下がりし、取引を終えました。
トランプ大統領「日本にやらせればいい」ホルムズ海峡の安全確保世界の経済に影響を与える中東の原油。供給の鍵を握るのが、事実上の封鎖状態になっているホルムズ海峡の状況です。
トランプ大統領
「ホルムズ海峡を通じて石油を輸入している国々は、その航路を自ら守らなければならない。自ら掴み取って大切にするんだ」
「海峡に行って石油を奪い、守り、自分たちのために使え」
ホルムズ海峡の開放について、トランプ氏はアメリカではなく、石油を輸入している各国の責任で取り組むべき問題だと、改めて強調しました。
この会見に先立ちトランプ氏は、キリスト教の復活祭 「イースター」のイベントで演説。 ホルムズ海峡の安全確保について日本などを名指しして、対応を任せるべきだとの考えを示していました。
トランプ大統領
「韓国や日本にやらせればいい。彼らは石油の90%を(ホルムズ)海峡から得ている。中国にやらせればいい。 みんなにやらせればいい。一体何のために我々がやってるんだ?」
原油の確保は待ったなしの日本。都内のガソリンスタンドでは、価格はリッター168円。「原油価格高騰に伴い、ガソリン価格も高騰しています」と書かれた張り紙もありました。
そんな店に届いたのが「出荷停止の通知書」でした。
西綾瀬サービスステーション 三枝直樹 店長
「ファックス来たと思ったら、こうやって空欄で。ゴールデンウイーク来たら、こんなんだったらどうなるだろう」
全ての項目が空欄になっていて、この取引先からは次にいつガソリンなどが入ってくるのか分からない状態です。
国内の石油の備蓄量は、まだ230日程度あります。しかし、一部で供給に偏りがあり、目詰まりが起きていると見られます。
現在の状況が改善されない限り、夏までに事業の閉鎖も考えられるといいます。
西綾瀬サービスステーション 三枝直樹 店長
「トランプさんに振り回されて、全てにおいて言葉にならないですし、商売が成り立ってないっていう事態で、もう終わっている」
原油を輸入に頼る日本ですが、その採掘現場、実は意外な場所にもありました。
日本の油田“救世主”になるか!?住宅街の一角で採掘その場所は秋田県秋田市。市街地を走ると、水飲み鳥のような動きを続ける機械が設置されています。
記者
「住宅や保育園などが並ぶ一角なんですけれども、私の3倍くらいはありそうな大きな機械が動いています」
ここは「八橋油田」。国内にある数少ない原油や天然ガスの採掘場です。周囲には住宅が広がり、川が流れています。その一角にポンプが設置され、原油などがくみ上げられているのです。
記者
「あったかいというか、ちょっと熱いですね」
インペックス秋田鉱場 金子伴己 場長
「地下から上がってくる原油の温度が感じられる」
原油や天然ガスは地下1400メートルから採掘され、パイプラインを通じて巨大なタンクに貯蔵されていきます。
日本で採れる原油とは…
記者
「真っ黒ですね。ちょっと金属っぽいというか、油のにおいもして、すごく独特な香りがします」
ホルムズ海峡の事実上封鎖が続く中、“救世主”となるのでしょうか。
インペックス秋田鉱場 金子伴己 場長
「ちょっと厳しいと思います。地下の資源が枯渇してきている」
この「八橋油田」は、最盛期の1960年代には、年間30万キロリットルと国内最大の生産量を誇りました。
しかし、現在は年間生産量がわずか7500キロリットルほど。他の“国産原油”を含めても、国内生産は0.3%ほどです。
イラン情勢でアメリカの“出口戦略”が見えない中、安定的な調達先の確保が求められています。
小川彩佳キャスター:
世界中が注目したトランプ大統領の演説、どうご覧になりましたか。
教育経済学者 中室牧子さん:
トランプ大統領は「この状況は自分がコントロールできている」とアメリカ国民に伝えたかったのだと思います。
現在の戦闘の見通しを「短期で終わらせる」として、戦闘の成果を強調しましたが、具体的な停戦条件や交渉の枠組みについては触れていません。その反面、今後2〜3週間で追加の攻撃をする可能性があることを伝えました。
経済面においてもリスクはないことを強調しましたが、原油供給のボトルネックであるホルムズ海峡の問題は全く解決されていないので、依然として供給不安はあります。
そのため、トランプ大統領は「状況をコントロールしている」と主張したものの、その主張をサポートする材料はなく、市場からの評価も非常に辛いものになっています。
藤森祥平キャスター:
トランプ大統領の狙いとは逆に、原油価格が演説前より約10%も上がっています。
中室さん:
非常に急な上昇だったので、市場はトランプ大統領が期待した通りには動かなかったと言えます。
小川彩佳キャスター:
アメリカ国民が多く見るゴールデンタイムに行われた演説を、国民はどのように受け止めているのでしょうか。
ワシントン支局長 涌井文晶記者:
新しい話が出なかった、ということで非常に厳しい受け止めが広がっています。政治専門メディアPOLITICOでは「2〜3週間激しく攻撃する」という発言が見出しになっており、ニューヨーク・タイムズは、トランプ大統領の発言後、原油価格が上昇したことを報じています。まさに、トランプ大統領の期待とは逆の結果が受け止められている状況だと思います。
一方で、この2〜3週間の攻撃の先に戦闘終結があるのかは示されませんでしたが、「トランプ大統領には終わらせたい気持ちがあるのだろう」ということは国民が皆感じています。
というのも、トランプ大統領にはこの先、非常に重要な政治日程が控えています。5月の中旬には米中首脳会談、7月にはアメリカの建国250周年を迎え、11月には中間選挙が行われます。そのため、トランプ大統領が早くそちらに集中したいというのは明らかです。
さらに、4月下旬にはチャールズ国王をイギリスから迎えます。トランプ大統領はイギリス王室を重要視しているため、この日程にも集中したいはずです。しかし、トランプ大統領は現在NATOを厳しく批判しているので、NATOに加盟しているイギリスとの緊張関係がある中で、どのような訪問になるのかも注目されます。
小川キャスター:
ホルムズ海峡については、国際法を顧みない攻撃で世界経済を混乱に導いておきながら「アメリカとして関与しない」と、無責任と言わざるを得ない姿勢をとっています。ホルムズ海峡の問題には対応しないのでしょうか。
ワシントン支局長 涌井記者:
トランプ大統領は最近「停戦に至れば自然に開放される」という表現をよく使いますが、これは「アメリカは具体的な行動をとらない」ということを示しています。アメリカは、イラン側が封鎖のため使っているホルムズ海峡周辺の島への上陸作戦を展開するのではないか、とも言われていますが、それを行えば2〜3週間という目途を大きく超えることは確実ですし、アメリカ軍に犠牲者が増えることも避けられません。トランプ大統領にとってはできるだけ取りたくない選択肢なので、日本やその他欧州諸国の名前を挙げて、責任を押し付けている状況です。演説前にも日本の名前を出して、「石油を利用している国がホルムズ海峡の安全を確保するべきだ」と強調しています。
小川キャスター:
今後、トランプ大統領が一方的に勝利宣言をする流れになっていくのでしょうか。
ワシントン支局長 涌井記者:
11月の中間選挙に向けて、イランに対する攻撃が成功だったとアピールするはずです。トランプ大統領の辞書には失敗という文字はありません。実態にかかわらず、成功を国民に向けてアピールしていくと思います。
藤森キャスター:
中東支局長の松尾さんにも伺います。アメリカには2〜3週間で決着させたい思いがあるようですが、イランやイスラエルはどうするのでしょうか。
中東支局長 増尾聡記者:
トランプ大統領は演説で「イランのミサイル能力などの軍事力は破壊された」と強調していますが、今のところその兆候はありません。イランは演説直後にイスラエルに対して大規模な攻撃を仕掛けており、一定の軍事力を維持しているとみられます。
イラン側はこれまで一貫して徹底抗戦を主張しています。今後もイスラエルや湾岸諸国への攻撃を続けていくことになると思います。
一方のイスラエルは、ここにきてネタニヤフ首相の論調が少し変化しています。演説でネタニヤフ氏は「イランの核とミサイル能力に打撃を与えた。もはやイランは脅威ではない」と戦果を強調して、目標として掲げたイランの体制転換がないままアメリカが幕引きとなった場合に備えて、保険をかけているようにも聞こえました。
ネタニヤフ首相自身は攻撃を続ける意向があると報じられていますが、アメリカの支援なしで立ち向かうことはできませんので、この現状に焦りを感じているのだと思います。
藤森キャスター:
イランは各国と交渉していますが、日本との交渉を表向きにすることはあるのでしょうか。ホルムズ海峡に通行料を課すのではないかという話も出ていますが、いかがですか。
中東支局長 増尾聡記者:
イランのアラグチ外相は繰り返し「ホルムズ海峡は敵国以外には開放されている」と話しています。2国間の交渉で通行が認められた国もわずかながらあります。一方イランの国会では、ホルムズ海峡を通過する船に料金の支払いを義務付ける法案の審議が始まりました。現場で実際に適用する意図が本当にあるのかは分かりませんが、いずれにせよイランにとってホルムズ海峡は極めて重要な切り札です。今後もこのカードを効果的に使いながら、対アメリカの戦いを進めるのだと思います。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」

