「わずか50席」離島に住む人が使うプロペラ機に“マイル修行僧”殺到で大迷惑 JAL多良間島騒動が起きてしまった根本原因

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2026年04月08日 05:40  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:ゲッティイメージズ

 沖縄の宮古島と結ぶJALグループの航空便が、1日に2往復だけ離発着している多良間島・多良間空港。同便はプロペラ機で運航され、席数はわずか50席だ。


【画像】マイル修行僧が狙うランク


 このマイナーな路線が、1月から2月にかけて話題となった。満席が続き、島民が予約しにくい事態が発生したのだ。


 急に多良間島の観光客が増えたわけではない。マイルを貯めて会員ステータスの向上を狙う「マイル修行」目的の利用客が殺到した。島民の生活路線であるため、多良間村は運行会社の琉球エアーコミューター(RAC)に増便を要請。JALは同路線をポイント2倍キャンペーンの対象外とした。今回の騒動を引き起こしたポイントプログラムの制度とその問題点を解説していく。


●「1年ごと」と「生涯」で分かれるステータス制度


 航空会社各社のマイルは飛行機に乗るなどして貯められる。「航空券に交換」「累計マイルによって特定の会員ステータスが付与」といったことが可能だ。JALでは「FLY ON プログラム」と「JAL Life Status プログラム」を通じて、会員のランク付けを行っている。


 FLY ON プログラムは1年間の搭乗実績で翌年のステータスを決定する単年性のプログラム。3万FOP(FLY ON ポイント)を貯めると「クリスタル」、5万FOPで「サファイア」といったステータスを設定している。いわゆる「マイル修行僧」と呼ばれるポイント獲得に積極的な人たちが目標とするのは8万FOPの「プレミア」会員以上とされる。


 プレミア会員は航空券の優先予約ができるほか、搭乗時にJALの最上級ラウンジを使える。8万FOPを貯める以外には「80回搭乗+2万5000FOP」でもステータスを獲得可能だ。


 JAL Life Status プログラムは単年性ではなく、毎年のポイントを積み立てられるサービスだ。FLY ON プログラム同様にポイントでステータスが変動し、空港ラウンジが利用できるなどの特典がある。1500LSP(Life Status ポイント)が必要になる「スリースター」が修行の目安とされる。


●「1日12便乗れる」メリットに修行僧が飛び付いた


 今回の騒動は、JAL Life Status プログラムが要因とされる。同プログラムは2024年1月にスタートしたもので、国内線は距離に関係なく1回の搭乗で5LSPを貯められる。単年性のFLY ON プログラムよりも修行のハードルが低く、初心者も参入するようになった。


 2月に国内線でLSPを2倍付与するキャンペーンを実施したこともマイル修行僧を引き付ける要因となった。騒動になった便の所要時間はわずか25分。うまく活用すればその他の路線も含めて1日12便に乗れてしまう点に目を付けられた。


 仮にスリースター会員を目指す場合、キャンペーン期間中でも150回搭乗しなければならない。多良間〜宮古島便の料金は片道1万円前後であり、100万円以上が必要になる。旅行時に使うだけなら、その都度有料ラウンジを使った方が金銭的に得だ。


 だが、マイル修行僧はステータス自体を求めているため、単純な損得勘定で割り切れない。中にはマイルを貯めることが趣味と化している人もいる。国内の消費者はポイントにハマりやすいと言われており、特定の小売店を使い続ける「ポイ活」も同様だ。


 つまり、航空会社側は修行僧の行動を認識した上でポイントプログラムを設計しなければならない。前述の通り多良間〜宮古島便の定員は50人であり、JALグループ全体からすると、収入の大きな路線ではない。同便は島民を対象とした特定路線離島割引の対象であり、公共性の高い路線であることを考慮する必要もあった。


●「回数制限」にも限界がある


 まとめると、今回の騒動はJAL Life Status プログラムそのものに加え、2倍キャンペーンがもたらしたものと言える。FLY ON プログラム単独であればステータスが1年しか維持されないため、マイル修行僧もここまで集まらなかっただろう。総じてみればステータスの安売りが要因と言える。


 余談だが、一部クレジットカードなどで無料利用できる主要空港のラウンジは昨今、混雑することが多い。カード会社が顧客獲得を目的として「ゴールドカード」などの対象を拡大しているためだ。百貨店など小売店のラウンジも混雑する事例があり、同様にステータスの安売りが要因である。


 航空会社において、ビジネスまたはファーストクラスの売上高比率は小さいものの利益では大部分を占めるというのが定説だ。航空会社は近年、富裕層向けのサービスを強化しており、JALも2025年に年会費24.2万円のクレジットカード「JAL Luxury Card」、完全招待制で年会費が約60万円の「JAL Luxury Card Limited」をリリースした。同カードではJALの「サクララウンジ」も利用可能としている。


 高額な年会費を設ければ、ラウンジの混雑を防止できる。一方、昨今よく目にする利用回数による制限は対象となるユーザー間口が広くリピーター獲得が目的と考えられる。


 悩ましいのは、エコノミークラス客の連続利用は利益率が小さいばかりか、ラウンジの混雑をもたらす可能性があることだ。今回の便のようにマイル修行僧が大量発生する事態も発生し得る。利用回数を設ける場合は対象となる航空券をビジネスクラス以上に制限するなど、ハードルを上げる必要があるだろう。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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