
Intelが「Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)」を正式発表して約4カ月が経過し、同プロセッサを搭載するPCは少しずつ市場で勢力を増している。
「Core Ultra X9 388H」は、12コアGPU「Intel Arc B390」(※1)を搭載する同プロセッサの最上位モデルだ。今回、Core Ultra X9 388Hを搭載するASUSTeK Computer製ノートPC「Zenbook DUO(UX8407)」をインテルから借用できたので、このCPUの“実力”をチェックしていく。
なお、今回レビューするZenbook DUO(UX8407)は米国仕様で、キーボードが米国英語配列となる。ASUS JAPANが販売する日本向けモデルは日本語キーボードが付属するなど、一部の仕様が米国仕様と異なる。
(※1)Intel vPro対応PCの場合は「Intel Arc Pro B390」となる
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●Zenbook DUO(UX8407)ってどんなノートPC?
今回レビューするZenbook DUO(UX8407)は、先述の通りCore Ultraプロセッサ(シリーズ3)の最上位モデルとなるCore Ultra X9 388Hを搭載する。CPUコアはパフォーマンスコア(Pコア)4基+低消費電力コア(LP Eコア)4基+高効率コア(Eコア)8基の合計16コア構成、GPUコア(Xeコア)は12基構成となっている。
今回は、これらのCPU/GPUコアがどれだけ強いのかを中心に検証していくことになる。
レビュー機はメモリが32GB(LPDDR5X規格)、ストレージが1TBのSSD(PCI Express 4.0接続)という構成となる。この点は、日本向けモデルとスペック上の変わりはない。
ディスプレイは2800×1800ピクセル解像度の14型有機ELディスプレイを2基搭載し、デュアルスクリーンとして利用できる。キーボードは着脱可能で、基部側の画面の上に載せて使うと普通のクラムシェル型ノートPCとしても利用できる。
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●Core Ultra 7 258V搭載機と比べつつCPUコアをテスト
ここからは、Zenbook DUO(UX8407)を通してCore Ultra X9 388Hの実力をチェックしていく。
今回、インテルから比較用に同じくASUSTeK Computer製の「Zenbook S 14(UX5406)」を借用している。これはITmedia PC USERで以前レビューしたものと同じ仕様で、CPUとして「Core Ultra 7 258V」(Pコア4基+Eコア4基/32GBメモリ)を搭載している。
CPUコアやGPUコアの数に違いはあるものの、「異なる世代の最上位CPUの性能の違い」を見るには良い比較材料となるだろう。
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。
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CINEBENCH R23
まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH R23」を実行した。結果は以下の通りだ。
・シングルコア
・Core Ultra X9 388H:2129ポイント
・Core Ultra 7 258V:1922ポイント
マルチコア
・Core Ultra X9 388H:1万5245ポイント
・Core Ultra 7 258V:8283ポイント
Core Ultra 7 258Vと比べると、シングルコアスコアは10%ほど向上し、LP Eコア/Eコアの増量も相まってマルチコアスコアは約1.8倍となっている。
LP EコアとEコアは性能よりも消費電力の低さ(効率性)を重視したCPUコアだが、それでも増量すればマルチコア(マルチスレッド)性能の向上に貢献することが良く分かる結果となった。
3DMark CPU Profile
続いて、3Dグラフィックスのベンチマークテストアプリ「3DMark」から、CPU単体の性能チェックが行える「CPU Profile」テストを実行した。結果は以下の通りだ。
・1スレッドテスト
・Core Ultra X9 388H:1153ポイント
・Core Ultra 7 258V:1159ポイント
2スレッドテスト
・Core Ultra X9 388H:2189ポイント
・Core Ultra 7 258V:2145ポイント
4スレッドテスト
・Core Ultra X9 388H:3989ポイント
・Core Ultra 7 258V:3360ポイント
8スレッドテスト
・Core Ultra X9 388H:6144ポイント
・Core Ultra 7 258V:4830ポイント
16スレッドテスト
・Core Ultra X9 388H:9950ポイント
・Core Ultra 7 258V:5394ポイント
1スレッドテストのみ、少しだけCore Ultra 7 258Vが上回ったものの、それ以外のテストではスレッド数が増えるほどCore Ultra X9 388Hの方がスコア上で優位性を増していく。
もっとも、Core Ultra 7 258Vは最大8スレッド、Core Ultra X9 388Hは最大16スレッドとなる。LP Eコア/Eコアが増えた分、Core Ultra X9 388Hのマルチスレッド性能も上がっていることは確実にいえる。
●CPUコア以外の性能が加味されるとどうなる?
ここからは、CPUコア以外の要素も影響するテストを進めていく。
PCMark10
まず、PCの総合的な性能をチェックする「PCMark 10」の総合スコアを比べるとこうなる。
・Core Ultra X9 388H:9531ポイント
・Core Ultra 7 258V:8454ポイント
以前であれば、一般的なノートPCの総合スコアは3000〜6000ポイントくらいが相場で、それ以上を狙うなら独立GPUを搭載する必要があった。
その点、Core Ultra 7 258Vでも十分に高いスコアを記録しているのだが、Core Ultra X9 388Hはそれを上回るスコアで、あと少しで1万ポイントに到達するレベルとなっている。最新世代のデスクトップ向けのミドルレンジCPUに、エントリー/ミドルレンジの外部GPUを組み合わせた環境の結果にも近い。
外部GPUを搭載しなくても、とても快適なノートPC――その現実味がより増したといえる。
3DMark
次に、3DMarkで“本業”である3Dグラフィックスの描画性能をチェックしていく。
今回はDirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」、そしてDirectX 12におけるリアルタイムレイトレーシング性能をチェックできる「Port Royal」を実行した。結果は以下の通りだ。
・Fire Strike(フルHD)
・Core Ultra X9 388H:1万3558ポイント
・Core Ultra 7 258V:8458ポイント
Fire Strike Extreme(WQHD)
・Core Ultra X9 388H:6508ポイント
・Core Ultra 7 258V:4247ポイント
Fire Strike Ultimate(4K)
・Core Ultra X9 388H:3405ポイント
・Core Ultra 7 258V:2257ポイント
Time Spy(WQHD)
・Core Ultra X9 388H:7271ポイント
・Core Ultra 7 258V:4364ポイント
Time Spy Extreme(4K)
・Core Ultra X9 388H:3485ポイント
・Core Ultra 7 258V:2059ポイント
Port Royal
・Core Ultra X9 388H:4070ポイント
・Core Ultra 7 258V:1729ポイント
仕様面で断りを入れると、GPUのコア数はCore Ultra X9 388Hが12基、Core Ultra 7 258Vが8基で、アーキテクチャ的には大きな変化はない。そして最大動作クロックは、Core Ultra X9 388Hの方が少し高い。
コア数だけで単純計算すると「Core Ultra X9 388HはCore Ultra 7 258Vの1.5倍の性能」となるが、Fire Strikeシリーズのテストはおおむねその通りとなった。
しかし、負荷がより大きいDirectX 12を使ったテストでは、軒並みそれを上回る性能向上を果たしており、特にPort Royalでは約2.35倍のスコア向上を果たしている。 これは、Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)において、Xeコアを中心に細かい改善を積み重ねた“たまもの”だろう(参考記事その1/その2)。
少なくとも、Core Ultra X9 388HのIntel Arc B390は、エントリークラスの外部GPUと同等かそれ以上の性能は確保できている。語彙(ごい)力がなくて恐縮だが、正直「これはすごい」とうなってしまった。
ベンチマークを実行中の動作を見ていてもフレームレートが高い、動きがなめらかだと感じられるシーンは多かったことも付け加えておく。
FF14/15 ベンチマーク
もう少し「実際のゲーム環境」に寄せたテストをしてみよう。まず試したのは「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」だ。これをあえて「最高画質」にして、フルHD(1920×1080ピクセル)とWQHD(2560×1440ピクセル)の2種類の解像度で実行してみた。
結果は以下の通りだ。
・フルHD
・Core Ultra X9 388H:8376ポイント
・Core Ultra 7 258V:4169ポイント
WQHD
・Core Ultra X9 388H:5391ポイント
・Core Ultra 7 258V:3282ポイント
WQHD解像度になると差は縮むものの、Core Ultra X9 388Hのスコアは「これは本当に外部GPU積んでないんですか?」と疑問が湧くほどに高い。フルHD解像度なら、最高画質設定でもストレスなく遊べる。
続いて、FF14ベンチマークよりも負荷の高い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」を高品質設定でフルHD/WQHD解像度で実行してみよう。
PC版FF15は、約8年前にリリースされたゲームだ。しかし、現在でも比較的負荷の重い部類に入り、少なくともCPU内蔵のGPUで遊ぶのは厳しいことが多い。果たして、Core Ultra X9 388Hはどうなのか?
結果は以下の通りだ。
・フルHD
・Core Ultra X9 388H:4994ポイント(やや快適)
・Core Ultra 7 258V:2893ポイント(やや重い)
WQHD
・Core Ultra X9 388H:3797ポイント(普通)
・Core Ultra 7 258V:2357ポイント(重い)
Core Ultra X9 388HはフルHD解像度なら「やや快適」、WQHD解像度でも「普通」判定となった。さすがにシーンによっては画面がカクついたように見えることもあるので、実際のゲームプレイは高品質よりも少し画質設定を落とせば快適に遊べるだろう。
Cyberpunk 2077
では、もっと重いゲームは動かすことができるのだろうか。「Cyberpunk 2077」の設定画面内にあるベンチマーク機能を使って平均フレームレートをチェックしてみよう。
Core Ultra X9 388HやCore Ultra 7 258Vの内蔵GPUを使う設定にしてCyberpunk 2077を起動すると、プリセット画質設定は「レイトレーシング:低」となる。今回は、この設定をベースに、Intelのフレーム補間機能「Intel Xe Frame Generation」と、超解像技術「Intel XeSS Super Reolution 2.0」を有効にして出力解像度をフルHDとWQHDの2種類で計測することにした。
参考に、より負荷の重い画質設定プリセット「レイトレーシング:オーバードライブ」でも同じ設定を有効にして計測している。結果は以下の通りだ。
どちらも解像度設定はフルHD(1920×1080ピクセル)、WQHD(2560×1440ピクセル)でテストを行った。結果は以下の通りだ。
・レイトレーシング:低
・フルHD
・Core Ultra X9 388H:83.85fps
・Core Ultra 7 258V:44.08fps
・WQHD
・Core Ultra X9 388H:65.32fps
・Core Ultra 7 258V:34.27fps
レイトレーシング:オーバードライブ
・フルHD
・Core Ultra X9 388H:32.68fps
・Core Ultra 7 258V:13.13fps
WQHD
・Core Ultra X9 388H:24.87fps
・Core Ultra 7 258V:10.15fps
「レイトレーシング:低」の設定だと、Core Ultra X9 388HではWQHD解像度でも平均フレームレートが60fpsを超える。さすがに、デスクトップPCでも現行のミドルレンジ以上のGPUでないと動作が厳しい「レイトレーシング」の設定では、平均30fps前後と滑らかとはいえない状況にはなるものの、「内蔵GPUでもCyberpunk 2077をそこそこ遊べる」という事実は、進化を感じるポイントだ。
アーマードコア6
ついでに「アーマード・コア6」の平均フレームレートもチェックしてみた。こちらは特別に高負荷なゲームというわけではないが、発売以降筆者がずっと楽しんでいるので「ノートPCで遊べたらいいな」という思いもあって試した次第である。
今回は画質設定は「最高」にした上で、フルHDとWQHDの2つの解像度でゲーム前半の難所である「ウォッチポイント襲撃」を120秒間プレイした際の平均フレームレートを計測している。フレームレートの計測は、「CapframeX」を使っている。
結果は以下の通りだ。
・フルHD
・Core Ultra X9 388H:65.9fps
・Core Ultra 7 258V:31.5fps
WQHD
・Core Ultra X9 388H:43.7fps
・Core Ultra 7 258V:30.8fps
アーマード・コア6はフレーム生成はもちろん、超解像技術にも対応しない。しかし、フルHD解像度では平均60fps以上、WQHD解像度でも43.7fpsと、ノートPCの内蔵GPUとしては良い成績を出している。
同作はゲーム機向けにも供給されている。一般的なTVのリフレッシュレートが60Hzであることを考えると、解像度こそ最新ゲーム機には及ばないものの、4K未満のTVと組み合わせた際の動作と近いゲーム体験が得られそうだ。
●バッテリー駆動時間も長い
これだけ処理能力が高いとなると、「バッテリー駆動時間が犠牲になっているのでは?」と思ってしまいがちだ。しかし、当のIntelは「Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)のバッテリー駆動時間は長い」と主張している。
それは本当なのか――PCMark 10に内包されているバッテリーベンチマークテストの「Modern Office」シナリオでテストをしてみることにした。満充電から強制的に休止状態に入るまでの駆動時間は以下の通りとなった。
・Core Ultra X9 388H:21時間53分(1313分)
・Core Ultra 7 258V:16時間3分(963分)
バッテリー容量(定格)は、Core Ultra X9 388Hを搭載するZenBook DUO(UX8407)は99Whと、Core Ultra 7 258Vを搭載するZenbook S 14(UX5406)の1.3倍弱の容量を備えている。一方で、ZenBook DUO(UX8407)は有機ELディスプレイを2基搭載しているため消費電力的には不利となる。
それでも、ZenBook DUO(UX8407)のバッテリー駆動時間はZenbook S 14(UX5406)の約1.36倍となった。不利な状況下にもかかわらず、バッテリーの容量が増えた分以上に駆動時間が伸びている。これは、Core Ultra X9 388H自体の消費電力の改善も効果によるものといえる。
●Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)は全方位に優れたCPUだった
今回のテスト結果の通り、Core Ultra X9 388Hは従来のIntel製モバイルCPUと比べても高性能でありながらも、消費電力を改善できていることが分かった。
今回試したZenBook DUO(UX8407)は、有機ELディスプレイを2基搭載する“変態仕様”ではあるが、パフォーマンスとモビリティーをきちんと両立できていることは素直に素晴らしいことだと思う。
Core Ultra X9 388Hを含むCore Ultraプロセッサ(シリーズ3)は、タイル(チップレット)構造を取っているため、各種タイルの組み合わせでさまざまな形態のPCに最適なCPUを作りやすい。今後、ポータブルゲーミングPCを含めてさまざまなPCにおいて従来以上に高性能な製品が多数登場することが予想される。
今後の展開に、どうしても期待してしまうCPUだ。
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