「お米だけで成立する」市場は生まれるか “おかず前提”を崩す、日清食品の一手

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2026年04月11日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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レンジ不要の白ごはん、その実力は?

 日清食品は「日清ふっくら釜炊き ごはん」(以下、釜炊き ごはん、希望小売価格224円)を3月30日に発売した。熱湯を注いで、5分で白ごはんができあがるカップタイプの製品だ。


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 「日清カレーメシ」(以下、カレーメシ)や「日清ハヤシメシ デミグラス」(以下、ハヤシメシ)などのカップライスシリーズを展開してきた同社が、「白ごはん」だけの商品を投入した理由はなぜか。


 「釜炊きごはん」はお茶碗約1杯分の容量で、カップ内に具材をのせられるスペースを設けている。レトルトカレーや牛丼の具、納豆などと組み合わせて、そのまま食べられる設計だ。皿に移す手間や洗い物がいらず、手軽に食べられる点は、忙しい日常や外出先での利用シーンの広がりにもつながりそうだ。


 パックごはんと異なり電子レンジが不要のため、オフィスやアウトドアでも使えるほか、常温で1年間保存できることから防災備蓄にも対応する。軽くてかさばりにくいため、備蓄用としてまとめ買いする場合でも扱いやすい。


 時短ニーズの高まりを背景に、パックごはん市場は拡大が続いている。一方で、日清食品が20〜39歳の男女を対象に実施した調査では、「電子レンジがない環境だと食べにくい」「容器が浅く、ごはんの上に具材をのせにくい」といった声が寄せられた。


 拡大する市場の中にも、まだ満たされていないニーズがあると考え、電子レンジ不要で、具材ものせやすい仕様で商品化した。


 「近年はお米への注目度が高まっている。幅広いメニューや食シーンに対応できる白ごはんをカップタイプとして発売することで、即席ライス商品の新たな価値や需要を創出できると考えた」と同社は説明する。


●数百回の試作で確立した「新・釜炊き製法」


 今回の商品は「カレーメシ」など、既存のカップライスで使われている日清食品独自の「釜炊き製法」をベースに、新たな工程を加えて開発したものだ。釜炊き製法とは、釜で炊いた米を熱風で乾燥させ、熱湯を注いで5分で、ふっくらとした食感のごはんに戻せるようにする技術を指す。


 1967年に日本初のインスタントライス商品「日清ランチ」を発売して以来、同社は約60年にわたりカップライス製品の研究・開発を手がけているが、今回は開発に約1年を要した。


 電子レンジの高い熱量で一気に温められるパックごはんと比べて、熱湯を注ぐだけの調理方法では、ふっくらとした食感や、炊きたてのような風味・甘みを再現するのが難しい。低い熱量でも米の芯まで水分を行き渡らせ、ふっくらと仕上げることが課題だった。


 そこで、開発したのが「新・釜炊き製法」だ。直火で釜全体を一気に加熱して炊き上げた米を、乾燥・膨化させることで、熱湯を注ぐだけでも芯までふっくらとした食感に仕上がるという。既存の釜炊き製法をベースに、炊飯や乾燥の条件を数百回にわたって調整し、完成させた。


●カップライス市場の拡大を目指す


 日清食品は、この商品を通じてカップライス市場全体の拡大を狙う。インテージSRI+によると、同社のカップライス商品の市場規模(販売金額ベース)は、2021年度の100億円から2024年度には150億円を突破。2025年度には、200億円を超える見込みだ。


 一方で日清食品の調査では、年に1回以上カップ麺を購入する消費者が8割以上に上るのに対し、カップライスは1割強にとどまる。「カップライスのユーザーが拡大すれば、市場はさらに伸長していく」(同社)と期待を込める。


 お湯を注いで待つという点ではカップ麺と同じだが、カップライスの歴史はまだ浅い。ただ、白ごはんという身近な食事を入口にすることで、商品自体の認知は広がりそうだ。一方で、手軽にごはんを食べたい需要には、すでにパックごはんという定番がある。本商品がその市場に食い込めるかが焦点となる。


 お湯だけで調理できる手軽さや、カップにおかずを入れてそのまま食べられるアレンジ性は、パックごはんにはない強みだ。さらに、価格面でも優位性がある。パックごはんの売れ筋商品の希望小売価格は1食295〜321円(インテージSRI+調べ)だが、「ふっくら釜炊き ごはん」(224円)は、それより手に取りやすい価格帯となっている。


●カップライスは食卓の定番になれるか


 「釜炊き ごはん」の発売に合わせ、日清食品は「ふっくら釜炊き」という新ブランドを立ち上げた。同社によると、「カレーメシ」が“カレーを楽しむためのごはんメニュー”であるのに対し、「釜炊き ごはん」はさまざまなメニューにアレンジできる“白ごはん”という位置付けだという。用途が異なるため、既存のカップライスとはブランドを分けた。


 4月には、カップライスの新商品を3週連続で投入する。「釜炊き ごはん」に続き、4月6日には「世界のキッチンカー」シリーズから、「スペイン シーフードパエリア」「台湾 ルーローハン」の2品(希望小売価格、各321円)を発売した。


 4月13日には「日清山盛カレーメシ」シリーズから、「欧風ビーフ」「ハヤシメシ デミグラス」の2品(同、各408円)を投入する。


 白ごはんで新たな層を取り込み、海外グルメ路線で女性層を開拓。さらに、大盛り商品で既存ファンの満足度を高める。価格帯もすみ分けながら、複数の切り口でユーザーの裾野を広げていく考えだ。


 カップ麺も当初は限られた味から始まり、ラインアップの拡充とともに利用者を広げてきた。カップライスは、いままさにその成長段階にある。


 成熟したカップ麺市場に比べると、カップライスのユーザーはまだ少ない。ただ、日本人の主食である米を使う商品であるだけに、伸びしろは大きいともいえる。カップ麺が食卓の定番となったように、カップライスもそれに続けるかが注目される。


(カワブチカズキ)



このニュースに関するつぶやき

  • 今自分が購入しているお米の実売価格から1食分の価格を割り出すと70円くらい。炊飯に必要な雑費や時間を考えても224円も出すなら自分で炊く。
    • イイネ!8
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