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2026年04月17日 13:40 ITmedia Mobile

本は、ちゃんと真面目に読んだ方がいいに決まっている。分かっている。
でも実際、買った本をしっかり読み切るためには時間と労力を要する。その“余裕”を捻出することは、忙しいビジネスパーソンにとっては簡単なことではない。
知的好奇心に駆り立てられて深夜の勢いで買った本の購入履歴を、正気に戻った翌朝の通勤電車で見つけると、「あー、また読まない本を買っちゃった」と切ない気持ちになる。
そんな悲しき“積読(つんどく)本達”と、なかなか本に向き合う時間がない人々に向けて、今回はKindleヘビーユーザーの筆者が実際に電子書籍の積読を消化できた具体的なテクニックと、「全て完璧に読まなきゃ」という“完璧主義あるある”の呪縛を解く、読書の心構えを紹介したい。(※積読:購入した書籍を読まずに積んでいる状態を表す俗語)
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●そもそも積読は悪なのか?
『ブラック・スワン』の著者として有名なナシーム・ニコラス・タレブは、「読まない本にこそ最大の価値がある」として、積読の価値を説いている。
「読んだ本はすでに自分の血肉となった過去の知識にすぎない。しかし、読んでいない本の山は、自分がいかに何も知らないかを常に突きつけてくれる」──というのがタレブの主張だ。
彼は積読のことを「アンチ・ライブラリー」と称し、アンチ・ライブラリーが増えれば増えるほど、人は研ぎ澄まされるという。
知識に対する謙虚な姿勢は素晴らしいが、実際、積読に価値を見いだす彼は一般人がのけぞるほどの多読家だ。彼の膨大なインプットの痕跡が記録されるノートブックでは、難読とされる哲学書のレビューが大量に記録されている。
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積読は普段から本に触れている人にとってはメリットがある。ただ、まったく本を開かない人にとってはストレージを圧迫する罪悪感の塊になる。
全て読み切ることは、必ずしも美徳ではない
結局本の価値は、読むという行為があってこそ生まれる。時間の限られているビジネスパーソンこそ、貴重な自由を割いて得た知識は自分のものにしたいものだ。
しかし、完璧主義の人ほど「一度手を付けた本は全て読み切らなければならない」という義務感にとらわれてしまい、本を読み始めるまでの内面的なハードルをさらに上げてしまう。
本を読むことのゴールは必ずしも最後まで読み切ることではない。本を読んだ後の目的やゴールを限界まで具体化することで、本の中のどの部分が自分にとって重要なのか、正確に抜き出せるようになる。
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特に電子書籍であれば、さまざまな機能を活用することで、効率的に読書を進められる。ここからは、Kindleを活用して完璧主義から脱却するためのテクニックを、「環境づくり」「インプット」「アウトプット」の3つのステップに分けて具体的に紹介していく。
●環境作り:スマホには誘惑が多すぎるので、ホーム画面の「一等地」をKndleに占拠してもらう
世の中は悪魔的な娯楽アプリにあふれている。「YouTube」や「X」はその代表例で、学習コンテンツとエンタメが混在している、末恐ろしい場所だ。
iOSであれAndroidであれ、スマホにはウィジェットという便利な機能が用意されている。ホーム画面の一番目立つ一等地に、一番大きなサイズのKindleウィジェットをドカンと据えてみることをおすすめしたい。
●インプット:いっそ、耳で聞く
筆者は、乗り物の中で文字を追うことが致命的に苦手だ。満員電車で吊革につかまっている間は、急ブレーキの衝撃に備えて踏ん張ることに必死で本を開く余裕などない。そこでたどり着いたのが、目を閉じたまま情報を脳に流し込む“耳読”という妥協案だ。本を音声で聞くには、さまざまな方法がある。
iOS(iPhone/iPad)の画面読み上げ(無料だが、操作に癖がある)
iOSの「設定」>「アクセシビリティ」>「リーダーと読み上げ」から「画面の読み上げ」と「コントローラーを表示」をオンにする。Kindleアプリで本を開き、コントローラーの再生ボタンをクリックすれば、OS側の機能で読み上げが開始され、自動でページめくりも行ってくれる。
音声の速度調整まで可能なのはありがたいが、バックグラウンド再生ができないので“ながら聞き”ができないという欠点はある。
Amazon Alexaアプリを活用(バックグラウンド再生可、速度変更は不可)
スマホ向けアプリ「Amazon Alexa」では、「ミュージックハブ」タブから、Kindleライブラリ内の本を選択して音声で再生できる。バックグラウンド再生も可能な点は、OSの機能を活用するよりも優れているが、こちらは速度調整ができない。
王道の「Amazon Audible」(高品質だが有料)
文字を追うことが難しい状況であれば、こうした方法を活用するのもアリだが、やはり耳で聞く読書の王道といえば、「Amazon Audible(オーディブル)」だろう。
筆者は通勤時間の電車内では、このアプリを活用して読みかけの本の続きを聞いている。ただし、月額1500円のコストが発生するため、財布との相談が必要だ。
●アウトプット:実はブラウザから一覧表示できる「ハイライト」で、形に残る読書を目指す
Kindleユーザーなら「ハイライト」という機能を使ったことはあるはずだ。文章を読み進める中で、腑に落ちた内容、考えさせられた部分を蛍光ペンで線を引くようにマーキングできる。ハイライトに記録した部分を反復して振り返るだけでも、理解を深めるのに役立つだろう。
そんなハイライト機能だが、 PCやスマホのブラウザで「Kindle メモとハイライト」にアクセスすると、マーキングした部分が書籍ごとに一覧表示できるのをご存じだろうか。
ここからテキストを一気にコピーし、好みのメモアプリへ貼り付けると、オリジナルの学習記録ノートが完成する。「一番早くて楽」という理由で、筆者はこの手法を愛用している。
●ハイライトはエクスポートもできる
Kindleのエクスポート機能を活用できると、かなり読書意識の高いKindleユーザーといえる。これはハイライトでマーキングした読書メモをファイルとして出力できる機能で、自身でファイル管理したい人におすすめだ。
ファイル添付できる機能を持った読書管理アプリなどと組み合わせれば、読了管理だけでなく、自分だけの要点もまとめられた情報ライブラリが構築できそうだ。
ハイライトをエクスポートする手順
1. アプリ画面上部をタップし、メニューから「注釈(ブックマーク、メモ、ハイライトを表示)」を開く
2. 右上から二番目のアイコンから任意の出力形式を選択すれば、ハイライトがHTML形式で出力される
筆者のおすすめは、出力形式を上から2番目の「APA」を選ぶことだ。出力されたデータが一番見やすいと感じる。
(※出版社の設定により、出力の文字数が制限されている場合があるので注意)
●AIによって読書体験はどう変わる? 多様性を増す読書体験への期待
電子書籍の登場が人々の読書体験を変革したように、AIの存在が読書の概念をさらに変えていくかもしれない。
今現在の日本では、読書体験を向上させるためのピンポイントなAIツールはまだ登場していない。現状の現実的な活用法としては、ハイライトした箇所をGoogleのNotebookLMに読み込ませ、自分専用の検索データベースを構築するくらいだ。
しかし海外に目を向ければ、Kindleで引いたハイライトをメモアプリへ自動転送する「Readwise」や、AIがリアルタイムで内容を解説してくれる「Matter」といった効率化ツールが普及し始めている。
素晴らしいサービスだが、英語メインの対応ということもあり筆者はどちらとも馴染めなかった。早く日本にもこのようなツールが登場してくれればと願う。
●それはそれとして、たまには熟読も楽しもう
大前提、本は自由に読んでいいものだ。特に多忙なビジネスパーソンは、資本である身体を壊さないためにも、自分にとって一番無理のない方法で読書を楽しみたいところ。今回は筆者が考える現時点での最も効果的であろう読書方法を紹介した。
その上で、全ての本を上記の効率的な方法で処理してしまうのはもったいないと思うところもある。
読書好きの筆者としては、自身が熟読したいと思った、いわゆる「良本」については、しっかり集中して読む“余裕”も忘れてほしくないということだ。
良本とは、読みながら疑問が湧き、自分の経験と照らし合わせ、思考が深まる体験ができる本のことだと筆者は定義する。
そういった没入体験が、ただ情報を一方的にインプットするだけの読書では味わうことができない。
脳科学者の毛内拡氏が、短いデジタル情報が溢れる現代において、あえて本を読むことの重要性を解説していた。 長文への深い没入は、わずか6分間でストレスを約70%も軽減させる。また、読書による代理体験は問題解決能力を高め、複雑な日本語の読解は脳の広範囲を活性化、推論能力を向上させるという。
毛内氏いわく、「デジタルであっても、深く読み込める環境さえ整えれば、脳の活性化と劇的な癒やしを両立できる」とのことだ。Kindleユーザーにとっては大変前向きになれるありがたい情報である。
毛内氏著の「読書する脳」について、筆者は2度読んだ。あえて深いレビューは割愛するが、読者へのモチベーションが高まる有意義な本だったので、読書意欲をお求めの方はぜひ読んでほしい。
読書は楽しいものだ。さまざまな読書術が溢れかえるこの情報社会で、無限の多様性を秘めた読書の在り方にうれしさを覚える。効率を求めて空回りした日々を乗り越え、今の筆者は「今の自分に、一番優しい方法で読む」ことに決めている。
もちろん、楽しい読書ばかりではないかもしれないが、忙しさに追われて本を諦めてしまうのはあまりにももったいない。この記事が皆さまと本の縁をつなぐささやかな一助となればと願っている。
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