限定公開( 2 )

パナソニックが初カテゴリーとして発売したファインバブルシャワーヘッド「ファインベール」(3万3660円、オンラインストア価格)が好調だ。2025年9月下旬に予約販売したところ、予約数は想定の約10倍に。11月1日の発売後も好調が続き、2026年3月までの売上高は計画比2倍以上になったという。
開発に5年を要したという同製品は、“バスタイム美容”をコンセプトを掲げ、特に「美髪ケア」に重点を置く。予洗いに使う「プレシャンプーモード」や、トリートメントの効果を高める「ヘアケアモード」など、5つのモードを搭載する。
詳しくは後述するが、業界団体のファインバブル産業会が定めるマイクロバブル性能評価において、家庭用シャワーヘッドで唯一の「クラス4d」を獲得。毛穴よりも小さい超微細な泡(ファインバブル)を大量発生させることで、頭皮や髪、肌への効果が期待できるという。
当初は30〜40代の女性をターゲットに据えていたが、購入者のうち男性が4割を占めるなど、新たな需要の掘り起こしに成功しているそうだ。なぜ、3万円を超える高級シャワーヘッドが想定以上のヒット商品になっているのか。パナソニック ビューティ・パーソナルケア事業部 ビューティ国内マーケティング課 主務・西條琴子氏に「開発の舞台裏」と「好調の要因」を聞いた。
|
|
|
|
●最後発で「美髪」を打ち出した理由
50年以上にわたってドライヤーやスチーマーを販売するパナソニックが、新たな美容製品の開発に向けて着目したのが「バスタイム美容」だった。
「お風呂上がりに使用する美容製品は多く扱ってきましたが、お風呂の中でケアする製品は扱っていませんでした。お風呂で1日をリセットするところから美容が始まるという考えのもと、『バスタイムに使える美容製品』をコンセプトにしました」
そこで、自社で注力する「ドライヤー」や「ヘアアイロン」とも相性がいい製品として、「シャワーヘッド」に着目した。“髪への効果”をウリにした理由は「髪を洗ったり、乾かしたりするのが面倒」という人が多い中で、「髪が美しくなる前向きな体験」を提供する必要があると考えたこと。さらに、開発段階で社内外のモニターだけでなく、西條氏自身も「美髪効果」を実感していたためだという。
「市場には、さまざまな企業のシャワーヘッドが存在しており、当社は最後発です。そんな中で選ばれるには、これまでと違ったアプローチが求められます。多くの製品が打ち出す『肌への効果』や『節水』にもこだわりつつ、『美髪効果』を最大の強みとしました」
|
|
|
|
ファインバブルシャワーヘッドは、サイエンス(大阪市)の「ミラブルシリーズ」と、MTG(名古屋市)の「ReFa(リファ)」が市場を牽引している。リファは、ファインバブルシャワーヘッドシリーズの累計売上が世界1位(※)になった、と2026年2月に発表している。さらに、TOTOやLIXIL、130年以上にわたり水流を研究してきた丸山製作所など、大手競合がひしめく市場だ。
(※)2026年1月 薬事法ドットコム調べ(対象:2019〜25年9月の累計売上) ISOに依拠したファインバブル表現であることが示されており、その売り上げが公表されているメーカーを対象にWebで調査を実施。
パナソニックが開発に5年もの歳月を費やしたのは、性能のカギとなる「ファインバブル」の最高品質を追求したためだ。
●開発5年の舞台裏
ファインバブルは、その数や質がファインバブル産業会が定めるマイクロバブル性能評価でクラス分けされている。家庭用シャワーヘッドでは、それまで「3d」が最高等級だったが、ファインベールはそれを上回る「4d」を獲得した。
|
|
|
|
「開発を進める中で、水中に含まれる不純物(ゴミ)の中にファインバブルと同等サイズが含まれていることが判明しました。ファインバブルと水中の不純物を区別するのは非常に難しく、正しく計測できていないケースもあったそうです。そこで、水に関する知見が深い社内メンバーの協力を仰ぎ、不純物を取り除いてファインバブルだけを計測する技術を確立しました」
さらに、ファインバブルを大量発生させるデバイスの開発でも、水の専門家の知見を生かし、新技術を確立した。これまでは、高い水圧をかけて水の通り道を狭くすることでファインバブルを大量発生させていたが、その代わりに水量が低下して浴び心地が悪くなってしまう。そこで、水の勢いを弱めずに大量のファインバブルを発生させる新たな方法を採用した。この技術は特許出願中だ。
また、ファインバブルの発生量は、デバイスの寸法が0.01ミリ変わるだけでも変化するほど繊細であり、膨大な数の試作を積み重ねた。時間はかかったが、量産して個体差が出ても十分なファインバブルが発生するデバイスを完成させた。こうした新技術を盛り込んだ製品化には、数年の歳月を要した。
●予約は想定の10倍、なぜヒットした?
2025年9月下旬、ようやく発表にこぎつけ、予約販売を開始した。すると、予約数は想定の10倍になった。11月1日の発売後も反響が大きく、2026年3月までの売上高は計画比2倍以上になっている。
購買層も、当初の想定を超えて広がっている。現状、30〜40代が6割、性別では女性が6割、男性が4割となる。備え付けのシャワーヘッドから交換する人が約62%に上るなど、新たな需要を掘り起こせているという。
「当初のターゲットは家族と暮らす30〜40代の女性で、かつ、すでに高機能シャワーヘッドや当社のナノケアドライヤーを使用している方を想定していました。というのも、シャワーヘッドを初めて買う場合、『自宅の浴室環境で使えるのか』という疑問があり、購入のハードルが高いと考えていたためです。すでに利用している方に買い替えを検討いただけたらと思っていたのですが、想定外の反響でした」
「髪のツヤ感アップ」や「トリートメントが髪に行き渡りやすい」など、女性に響くような訴求が多かったが、予約開始時に最も早く反応したのは、ガジェット好きの男性だったという。
「発売に先駆けて予約数を増やしたく、発売前の9月から家電レンタルサービス『Rentio(レンティオ)』での取り扱いを開始したところ、男性からの『試してみた』という口コミが多く得られました。特に、勢いのいいジェット水流で頭皮の汚れを落とす『プレシャンプーモード』が男性に好評です」
レンタルサービスとの相性は良く、レンタル後に購入する人が多いという。購入の決め手として「美肌ケアに加えて美髪ケアもできる」「独自技術で大量のファインバブルが発生する」「プレシャンプーモードで頭皮の毛穴汚れを落とす」が上位に挙がった。
加えて「パナソニックの製品だから(メーカーの安全性・信頼性)」という声も多かった。すでにドライヤーなどのパナソニック製品を使っている人が購入するケースも少なくないようだ。
●普及のカギは「体験機会」の提供か
今後のマーケティング施策を尋ねると、ヘアケアを軸にしたアプローチを継続していくとのこと。女性向けの訴求だけでなく、すでに男性向けの広告なども開始しており、良い反応が得られているそうだ。
近年は「艶髪ブーム」ともいわれ、ヘアケア製品の市場規模が拡大。女性を中心にヘアケアに投資する傾向が見られる。これに対し、「髪そのものを美しくしたいニーズが増しているのではないか」と西條氏は見解を示した。
「髪を美しくする習慣は以前からありますが、最近はヘアスタイルをアレンジしてデザイン性を高めるよりも、髪そのものを美しくしたい方が増えているのかなと。『素肌を美しく』という考え方と同様に、『素髪』をより良くしたいと考える方が増え、結果として3万円以上の『高機能シャワーヘッド』や『高機能ドライヤー』の人気が高まっているのだと思います」
富士経済によると、ファインバブルシャワーヘッドの市場規模は、コロナ禍の2020〜22年に急増。2023年以降は「節水」重視のシャワーヘッド(本市場に含まない)に需要が移行しており、鈍化が見込まれる。ただ、現時点では使用者がまだ限定的で、メーカーの注力度も引き続き高いことから、体験機会の提供による認知度向上や、高価格帯製品の投入などにより、今後も市場拡大が予想されている。
サイエンスやMTGは、まさに体験機会の提供を加速させている。サイエンスでは、三交インホテルズの全15店舗・2092室に「ミラブルzero」の導入決定を発表。3月から順次設置している。MTGでは、4月1日から全国約70カ所の温浴施設に「ReFaファインバブルシャワー」を順次設置。約3カ月にわたって入浴体験を提供する予定だ。各社の施策により、ファインバブルシャワーヘッド市場のさらなる拡大が期待される。
(小林香織、フリーランスライター)
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。