
2025年4月にスタートしたKDDIとSpaceXの「au Starlink Direct」は、上空300キロを飛ぶ低軌道衛星(LEO)とスマートフォンが直接通信するサービス。当初はメッセージサービスのみの対応だったが、通信可能な衛星の数を増やすなどして、一部アプリのデータ通信も利用可能になった。
一方で、KDDIとSpaceXの独占期間が終わり、4月10日にはソフトバンクが「SoftBank Starlink Direct」を開始。ドコモも4月27日に「docomo Starlink Direct」のサービスインを控えており、楽天モバイル以外の3社が衛星とスマホのダイレクト通信で並ぶ形になる。
このような状況の中、サービス運営で1年先行してきたKDDIが、新たなサービスやUQ mobileへの拡大を発表し、差別化を図ろうとしている。同じStarlinkを使うサービスだが、それぞれのキャリアごとにやや味付けが異なる印象だ。ここでは、KDDIが打った先手を解説するとともに、Starlink Directで競争する3社の特徴を比べていきたい。
●ユニークユーザーは400万を突破、料金で追うドコモとソフトバンク
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KDDIは、2025年4月にau Starlink Directを開始した。直後の5月には、データ容量無制限の「使い放題MAX+」に「Pontaパス」をセットにした「auバリューリンクプラン」を発表。対価として料金を値上げしつつ、空が見えればどこでもつながることを訴求してきた。人口カバー率は99.9%を超える大手3キャリアだが、国土カバー率は6割程度にとどまる。衛星との直接通信は、その残り4割をカバーできるサービスとして注目度が高い。
当初はメッセージサービスのみの対応だったが、2025年7月にはサービスを改善しており、SMSの送受信を30秒以内に短縮している。これは、43度の軌道傾斜角を飛ぶ衛星を追加したためで、衛星の数を増やすことで通信品質を向上させている。さらに、2025年8月には衛星通信対応のAPIを組み込んだアプリのデータ通信に対応。マップや天気、防災、アウトドア、ニュースなどが利用可能になった。3月には、米T-Mobileとの海外ローミングにも対応している。
また、KDDIは他社やサブブランドのUQ mobile、オンライン専用ブランドのpovo2.0を契約するユーザーにもau Starlink Directを提供するため、データ通信専用の1GBプランで同サービスを利用できる「au Starlink Direct専用プラン+」を提供。UQ mobileとはセット割引も用意し、1650円のプランを550円で利用できるようになっている。
こうした取り組みが奏功し、サービス開始から1年でau Starlink Directを利用したユニークユーザー数は400万を突破。対応端末も89機種、1100万台に広がった。2026年1月に北海道で発生した遭難事故では、au Starlink Direct経由で知人に連絡を取り、110番通報してもらうことで救助につながったとのことで、クリティカルな場面で利用されるシーンが広がっていることがうかがえる。
一方で、Starlinkの衛星通信はあくまでSpaceXが提供しているサービス。独占期間が切れれば、他キャリアもこれを利用できるようになる。実際、4月10日にはソフトバンクがSoftBank Starlink Directを開始しており、対象をサブブランドのY!mobileにも広げた。6月までは、オンライン専用ブランドのLINEMOでも、SoftBank Starlink Directを無料で利用できるなど、KDDIとは料金面で差別化を図ってきた。
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また、ソフトバンクはSoftBank Starlink Directの開始に合わせ、傘下の事業者が運営する“キラーサービス”のアプリを、衛星との直接通信に対応させている。LINEやPayPayなどがそれだ。アプリ自体はどこのStarlink Directなのかまでは判別しておらず、他キャリアでも利用可能なため差別化にはつながらないものの、グループ一丸となってSoftBank Starlink Directに取り組んでいることをアピールした格好だ。
さらに、ドコモも既にdocomo Starlink Directを4月27日にサービスインすることを発表済み。ドコモは、ソフトバンク以上に料金面で踏み込んでおり、データ容量無制限の「ドコモMAX」だけでなく、小容量プランの「ドコモmini」やオンライン専用プランのahamoでも、無料で利用できることをアピールしている。ドコモにはいわゆるサブブランドがないため、対象者を一気に広げられる見込みだ。
●1年のリードタイムをどう生かす? サービスで差別化するKDDI
ドコモやソフトバンクがStarlink Directにキャッチアップしてきた中、1年先行して提供してきたKDDIはどのように差別化を図り、サービス面でリードしていくのか。KDDIのパーソナル事業統括本部兼事業戦略本部長の執行役員、門脇誠氏は「サービスを先に提供することで、データやお客さまの声が集まり、それを見た上で何が必要かを考えて提供できる」と話す。
その具体例として新たに追加されたのが、「au Starlink Direct SOSセンター」だ。このセンターは、対応するアプリから送信されたSOS情報を受け、警察や消防、海保といった緊急通報受理機関への通報を行う。24時間365日休まず稼働しており、ユーザーの安全を守る。こうしたサービスは、「先にやっているからこそ提供できる」(同)ものだという。
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対応アプリは「auナビウォーク」や「auカーナビ」といったKDDI純正アプリの他、サードパーティーの「ヤマレコ」にも対応する。au Starlink Direct接続時に表示される「衛星SOS」のボタンを押すと、救助に必要な情報を簡単に入力できるフォームが現れ、それを埋めていくとSMSにデータが引き継がれて送信できる仕組みだ。
iPhoneの「衛星経由の緊急SOS」の場合、Appleが運営する中継センターに直接メッセージを送信でき、緊急通報受理機関に取り次いでもらえるが、au Starlink Directにはこうした仕組みがなかった。KDDIがアプリ側にそれを実装することで、au Starlink Directの安心感を高めた格好だ。また、海上の情報を提供する「マリンコンパス」や、山岳捜索サービスの「COCOHELI」が提供するサービスも「KDDIが開発をサポートした」(同)。
この発表に先立ち、KDDIはau Starlink Directのエリアを24海里に拡大しており、12海里にとどまるdocomo Starlink DirectやSoftBank Starlink Directよりもエリアが広い。これも、「当初は領海12海里でサービスを開始したが、その後、漁業関係者の皆さまとお話ししたところ、12海里では足りない、24海里であれば十分だというお声を受け、拡大を実施した」(パーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業企画部長 秋田翼氏)からだという。
現時点で、Starlink Directの海外ローミングに対応しているのも、au Starlink Directのみ。4月23日の会見では、先行提供している米T-Mobileに加え、カナダのROGERS、フィリピンのGlobe、ニュージーランドのSparkに拡大していく方針が明かされた。これにより、米国に加え、カナダ、フィリピン、ニュージーランドでの利用が可能になる。
日本では、国土カバー率が6割にとどまるものの、人が頻繁に訪れる観光地などはへき地でもモバイルネットワークのエリアになっていることが多い。一方、海外では、広大な国立公園やそこに至る道のネットワークが整備されていないケースも見受けられる。その意味では、日本にいるときよりも海外ローミングの方が活躍する機会が多いサービスになるかもしれない。この点で先行しているのも、KDDIの強みになる。
●UQ mobileの料金も対抗、ソフトバンクはオプション化も予定
一方で、上述の通り、ドコモは低容量のプランまでdocomo Starlink Directの対象、ソフトバンクはY!mobileもSoftBank Starlink Directに対応させており、UQ mobileが有料だったKDDIと差別化を図ってきた。これに対し、KDDIも5月利用分から、UQ mobileの一部ユーザーのau Starlink Direct専用プラン/専用プラン+の料金を無料化することで対抗する。
対象になるのは、2025年に導入された現行の料金プランである「コミコミプランバリュー」と「トクトクプラン2」。これらのプランを契約している場合、au Starlink Direct専用プラン/専用プラン+の料金が全額割り引かれる。現在、新規受付を終了している「ミニミニプラン」や「トクトクプラン」などの旧料金プランは、550円のまま据え置かれた。
他社に素早く対抗できた背景には、au Starlink Direct専用プラン/専用プラン+という仕組みがある。これにより、特定の料金プランのみau Starlink Directを有効にする顧客・課金管理システムの開発をせず、コミコミプランバリューとトクトクプラン2だけを無料にできている。海外では特定の料金プランや有料オプションにStarlinkのダイレクト通信をひも付ける事例もあるが、日本のキャリアにはこうした仕組みが導入されていないようだ。
門脇氏はau Starlink Directを「全体のお客さまの便益に貢献するサービスとして事業全体の中でまかなっていく」と語っていたが、料金の安いUQ mobileでは、そのコストを賄い切れない恐れがある。コストとメリットのバランスを取るためにも、料金プランは制限する必要があったといえる。実際、ソフトバンクも、7月以降はY!mobileの「シンプル」より古い料金プランやLINEMOへの無料提供をやめ、オプションとしてサービスを提供する方針を打ち出している。
もっとも、KDDI方式は回線契約が別途必要になり、利用時にSIMの切り替えも行わなければならない。新規契約というハードルがある上に、利用する際にもユーザーに手間がかかる。現状の仕組みは、コストとのバランスを取りつつ早期導入するための過渡期的なものと見ていいだろう。門脇氏も、「今後は専用プランにご加入いただかなくてもご利用いただける、準備をしていく」と語っており、ソフトバンクのように顧客・管理システムと連携させていく方針を示唆している。
このように、同じStarlinkのダイレクト通信でも、その上に載せるサービスや海外ローミングを含めたエリア、さらに料金体系にも3キャリアで違いがある。特に、サービスやエリアでは、1年先行しているぶん、KDDIに一日の長がある印象だ。これに対し、ドコモやソフトバンクは料金面での差別化を図っている。特にソフトバンクは、7月にオプション化も予定しており、必要な人に必要なコストで届ける仕組みを整えるのが早い。ここにUQ mobileがどう対抗していくかも、注目しておきたいポイントといえそうだ。
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