4年半乗ったテスラ「モデル3」を総括――気になるバッテリー劣化率、クルマには満足も唯一の不満点とは

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2026年04月29日 21:00  ITmedia NEWS

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 「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現される米Tesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、このクルマを連載形式でレポートします。


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 連載55回目の今回は、納車から4年半、約4万kmを走行した筆者が所有する21年型Model 3の近況やユーザーとして感じていることを読み物風にまとめました。主に動力バッテリーの劣化率、トラブル履歴などに言及しつつ、Teslaの良い点、悪い点に触れています。


●動力バッテリーの劣化について


 結論からいうと、動力バッテリーは、納車時との比較で6%強、劣化しています。納車時、満充電で535kmだった航続距離が、502kmまで減少しました。これは、「TeslaFi」というサードパーティー製ログサービスが計算上で示した数値です。サードパーティー製とはいえ、Teslaが公式に提供しているAPIから車両データを取得・蓄積しているので一定程度は、信頼にたり得るものだと考えています。


 また、納車直後から継続的に利用しているので、相対的な関係性の範疇においても参考になるものだと思います。ちなみに、TeslaFiには、同サービスを利用しているフリートの情報もあり、それによると、筆者の個体に近い走行距離のユーザーは12台存在し、それらとの比較において、2%程度優れているそうです(他ユーザーは、劣化率8%)。


 AC/DC充電比率は下図のように、自宅等普通充電が84.2%、スーパーチャージャーが12.1%、CHAdeMO等が3.7%なので、バッテリーに優しいと言われる普通充電率の多さも低劣化に貢献しているのかもしれません。ただ、急速充電を多用している個体の中にも低劣化のものがあるようです。バッテリーの劣化率と急速充電の因果関係は個体差によるものなのでしょうか。


 1.EV→2.動力バッテリー劣化→3.リセールバリューの低下→4.不人気という連想ゲームから、EVに対し懐疑的な見方をする人々が依然多いように思いますが、Teslaにおいては、バッテリーマネジメントシステム(BMS)の仕組みやバッテリーそのものの進化で、劣化に対する心配は以前ほど気にする必要はなくなったようです。


 日本における、新車登録から廃車までの期間(平均使用年数)は、約13年(自動車検査登録情報協会)、平均的な走行距離は、約12万km〜15万kmだそうです。Teslaが公開しているレポートを見ると、Model 3や「Model Y」において、20万マイル(約32万km)走行時点で、平均して初期容量の約85%を維持しています(劣化率は約15%)。


 以前、本連載で「2年で劣化率約5%」と言及したところ、「ならば、8年で80%、10年で75%だな」というコメントを頂きました。ただ、劣化はリニアに進行するわけではありません。次の図は、24年版のTeslaのインパクトレポートからの抜粋です。


 初期段階では使用開始から最初の1〜2年、あるいは数万kmの間は、BMSのキャリブレーションや初期の化学変化により、数パーセント(3〜5%程度)の劣化が発生します。しかし、その後は安定期に入り、劣化のスピードが緩やかになり、長期間にわたって高い残存率を維持する平坦な状態に入ります。


 筆者の21年式Model 3ロングレンジAWDは韓国LGエナジーソリューション製のNMC系バッテリーを搭載しています。バッテリーを保護するために普段は80%充電での運用が推奨されています。ただ、遠出する際には100%まで満充電しており、頻度としては1〜2カ月に1回といったところです。


●大きなトラブルもなく平穏無事な日々


 約5年前にModel 3の購入を決め、Webから注文した際には、生まれて初めての電気自動車なわけですから、正直言ってTesla生活に対する不安を感じていました。当時は、現在と比較するとSNS等での情報も少ない状態でしたが、そういう時に限ってトラブル系のネガティブな投稿などが目に入るわけです。Teslaユーザーが集まるオンラインコミュニティーテスカスは当時から存在し、大いに参考になりました。


 ただ、筆者は、1990年代初期から約20年にわたり新車で4台のシトロエンを乗り継いで来ました。新車とは言え、当時のシトロエンはトラブルの巣窟でした。2台目となる96年式の「エグザンティア」などは、納車から3カ月もしないうちに、出先で立ち往生してしまうトラブルに見舞われ、ほとほと閉口したものです。このときは油圧システムを駆動するベルトにテンションを加えるプーリーが破損してしまい、ブレーキ系統、ハイドロニューマチックサスペンション、パワーステアリングなどの油圧システムすべてが機能しなくなりました。


 そのような苦い経験をしてまで、その後もシトロエンを乗り継いだわけですから、当時の筆者は、シトロエンの独自性に対しある意味、惚れ込んでいたわけです。ならば、Teslaという「未知」のクルマについても乾坤一擲、腹を括りトラブル等を受け入れることができるのではないかと考え、「注文」ボタンをクリックしルビコン川を渡りました。


 しかし、4年半、約4万kmを走行した今、拍子抜けするほどにクルマ由来のトラブル経験はありません。納車2カ月で機械式駐車場でタイヤサイドをえぐったたり、住環境の影響で、アルミホイールがガリガリ状態になるといった自分のミスに起因するトラブルは枚挙にいとまがありませんが、本当にトラブルらしいトラブルを経験していないのです。


 後は、常識的な範囲内での消耗品(ワイパーブレード、エアコンフィルター、タイヤ)のリプレイスを実施した程度です。3年、約3万6000kmの車検時に、補機類用低電圧(鉛)バッテリーの交換を実施しましたが、これは基本車両保証期間中だったので、保証の対象として無償でした。


 強いて言うなら、晴天時のオートワイパー作動という大間抜けな「持病」がありますが、OTA(オーバー・ザ・エア)アップデートで、いつしか直る可能性に期待しています。そういえば、以前は、スクリーンのブラックアウトが希に発生しましたが、インフォテイメントシステムを再起動すれば、すぐに復旧しました。このブラックアウトも最近では遭遇することもありません。アップデートでバグが修正されたのかもしれません。


 以前も、本連載で紹介したように、21年式上海工場製のModel 3は、エアコンのコンプレッサーやラジアスアームとそのブッシュなどのトラブルが多いという話をちょくちょく耳にします。それゆえに、2年間の延長保証を大枚はたいて購入し27年9月18日までのクルマ由来のトラブルに対する安心を得たわけです。


●このままではユーザー体験が危険水域に達する


 最近、Teslaの販売が急増したためサービス体制がキャパシティーオーバーになり、Tesla Japan直営のサービス拠点では、一部のユーザーに点検や車検を受けられない事例、あるいは、納車が予定よりも遅れる事態も発生しているようです。サービスについてはTesla Japanは外部の認定工場を紹介しているようですが、販売増ゆえのサービス地獄に陥っているのでしょう。


 製品自体が満足し得る出来映えであっても、クルマはその後のサービス環境が悪ければ、ユーザー体験の低下による客離れが容易に起きるものです。前述のシトロエンの事例を思い返すと、たくさんのトラブルに見舞われても、ディーラーやサービス担当者の対応に満足していたからこそ、20年以上も乗り続けることができました。


 当時、シトロエンは、「ユーノス」というマツダ系列のディーラーで購入したのですが、そこのチーフメカニックは、西武自動車販売時代からのシトロエン職人みたいな人で、問題点があれば「修理」をしてくれました。ハイドロニューマチックのような独自機能へのきめ細かい対応は言うに及ばず、例えば、ラジオの受信感度が悪いと訴えたら、ルーフの外板と内張の間に銅線を加工した独自のアンテナを設置してくれました。


 また、電装系の配線やパーツが経年劣化を起こしライト類の調子が悪くなったときは、国産のより高性能な電装系(確かRX-7のものと言っていた)にリプレイスしてくれたりました。現在の電子化が進むクルマ、ましてや「走るガジェット」たるTeslaに同じサービスを求めるつもりは毛頭ありませんが、このような充実したサービス体制が整っていれば、幾度のトラブルを経験してもユーザー体験が大きく下がることはありません。


 Tesla Japanにも国産車のディーラー制度を取り入れろとは言いませんが、人員やサービス拠点を増やしアフターフォローの体制を整え、日本でビジネスを展開する以上、日本人が満足する体制を敷いてもらいたいものです。


●満足度は、下がるどころか上がっている


 4年半、約4万kmを乗った今、所有するModel 3の満足度は、下がるどころか上がっています。OTAアップデートによる機能追加が大きな要因です。前回の本連載でお伝えしたように体調を崩し、入院や自宅療養等で長くModel 3に乗れない日々が続きました。体調が戻り久しぶりにModel 3を運転したときの感動は他に得がたいものでした。5年前にTeslaを選んで心底良かったと思ったものです。


 そのModel 3も23年に新型(通称「ハイランド」)が登場し進化を遂げました。ガジェット的な視点だと筆者の21年製Model 3は「陳腐化が進んだ」と言えます。実際、新型のスクリーン表示や操作感、内装の充実ぶりを見ると正直「うらやましい」という気持ちになります。ただそれは、Teslaに限ったことではないでしょう。内燃機関も含めSDV化が進む現在のクルマは、モデルチェンジをしたら前モデルが一気に色あせて見える程に大きな進化を遂げるようになります。


 例えば、グローバルでModel Yと人気を争うTOYOTAの新型「RAV4」の進化には驚かされました。「Arene(アリーン)」OSの搭載とそれを生かすための大型スクリーンやSDVとしての必須条件たるソフトウェアアップデートへの対応などです(Tesla並の更新が可能かどうかは別にして...)。このRAV4の事例からもTeslaに限らず、どのような車種でも前モデルが陳腐化して見えるSDV化の流れは今後も拡大していくものと思われます。


 現在のModel 3をいつまで乗るのか? 次もTeslaにするのか、と問われると今ここで明快な答えを出すことはできませんが、これからも、普段遣い、旅行、仕事にと、Model 3のある生活を大いに満喫したいという気持ちに偽りはありません。



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