「金麦」「本麒麟」「クリアアサヒ」が第3のビール→ビールに「昇格」へ……物価高でも各社が「第3のビール」を切り捨て始めたワケ

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2026年05月06日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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サントリーは「金麦」をビール化する(編集部撮影)

 キリンビールは10月以降、第3のビールに該当する「本麒麟」の麦芽比率を引き上げ、ビールとして販売する。サントリーも「金麦」ブランドで展開する飲料をビール化。アサヒビールも「クリアアサヒ」をビール化する予定だ。


【画像】第3のビールのパイオニアとされる「ドラフトワン」


 背景にあるのが、10月に予定されているビール系飲料の税率見直しだ。現在はビールと発泡酒で税率が異なるが、酒税改正によって一本化される。ビールと発泡酒の価格差が縮まることから、各社はビール化に踏み切る構図だ。


 デフレ時代に飲料各社は酒税を回避しビールを安く提供するため、発泡酒や第3のビールなどを生み出してきた。国と飲料メーカー間の裁判に発展したこともある。だが税率の一本化により、両者の駆け引きに終止符が打たれることになる。


●そもそも「ビール」「発泡酒」「第3のビール」の違いとは?


 ビール系飲料といえば「ビール」「発泡酒」「第3のビール(新ジャンル)」の3種類が知られている。第3のビールは2023年10月の税率改定で「発泡酒(2)」に改定されたが、分かりやすいよう本記事では第3のビールと表現する。


 ビール系飲料は大麦の種子を発芽させ、糖化酵素を活性化させた「麦芽」を原料とする。原料中に含まれる麦芽の重量が50%以上で副原料を最低限に抑えたものが「ビール」だ。


 「発泡酒」は麦芽の使用比率が50%未満であり、多くの商品は25%未満に抑えている。


 「第3のビール」には発泡酒にスピリッツを加えたものや、麦芽を使わずに大豆を発酵させたものなどがある。2023年10月の税率改定で前者は「発泡酒(2)」、後者は「発泡酒(3)」となった。


 発泡酒や第3のビールは麦芽の量が少ないため、ビールらしいコクや旨味が弱い一方、軽い口当たりが特徴的だ。


●メーカーと国税が裁判も……発泡酒・第3のビールの歴史とは?


 発泡酒は1994年にサントリーが発売した「ホップス」をきっかけに各社が参入したとされる。当時は酒税法上、麦芽比率が67%以上のものをビールと定義していたが、ホップスはこれを65%に抑え、税の回避を図った。当時、350ml缶のビールは220円台で販売されていたが、その内約78円を酒税が占めていた。一方で発泡酒の場合は約54円であり、サントリーはホップスの350ml缶の希望小売価格をビールより安い180円に設定できた。


 当時はバブル崩壊後の不景気が世を覆っており、他社もホップス以降、発泡酒市場に参入した。発泡酒の出荷量は節約志向の高まりで1998年にはビール系飲料の15%を占めるようになる。


 同様に第3のビールも酒税を安く抑える目的で開発された。サッポロビールが2003年に発売した「ドラフトワン」が第3のビールの火付け役とされる。サッポロは主要原料として大麦ではなくエンドウ豆などを採用。350ml缶の税額は24円であり、発泡酒よりも安い120円台での販売を実現した。


 以降、ビール離れが進む中、苦味が少ないなど味の面でも第3のビールは消費者に選ばれるようになっていく。なお国はこれに対抗する形で、2006年以降、第3のビールの増税を段階的に行ってきた。


 複雑な税制は国と飲料メーカーの争いに発展した。


 サッポロビールは2013年に「極ゼロ」を第3のビールとして発売した。


 だが2014年に国税当局から製法の照会を受け、発泡酒として再発売。サッポロは延滞税が膨らむのを避けるため一度は納税したが、極ゼロが第3のビールに当たるとして2017年に国を相手に提訴し、酒税約115億円の返還を求めた。高裁まで争われたのち、最高裁がサッポロ側の上告を受理せず、発泡酒として確定した。


●ビール市場の競争は、より激化へ


 発泡酒・第3のビールは複雑な税制をかいくぐる飲料メーカーの施策として現れたが、冒頭の通り2026年10月以降は税率が統一されることとなる。


 国はこれまでも統一する方向へと段階的に税率を変更してきた。2020年10月には第3のビールの税率を350ml換算で28円から約38円へと引き上げた一方、ビールの税額を77円から70円に引き下げた。2023年10月には第3のビールを税額約47円の発泡酒(麦芽比率25%未満)と一本化し、ビールの税額は約63円に引き下げた。2026年10月にビールと発泡酒など、ビール系飲料の税額は54.25円に統一される。


 サントリーは金麦のビール化にあたり、増税分を値上げしつつも価格は可能な限り据え置く方針だ。金麦の350ml缶は150円台前後で販売されていることが多く、160円台になる見込みだ。キリンビールも本麒麟と同等に据え置く。


 各社がビール化を進めるのは、税額統一により価格面での第3のビールの優位性が失われるためだ。また、第3のビールのシェアも2020年ごろの4割ほどから近年では2割ほどまで減少しており、ビール回帰の流れに合わせたと考えられる。


 ビールといえば、アサヒスーパードライやキリンの一番搾り、サントリーのザ・プレミアム・モルツ、サッポロの黒ラベルなどが代表的だ。旧第3のビール勢の参入で競争はさらに激化するだろう。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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  • クリアアサヒは安いから買ってたけど、高くなってから買わなくなった。
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