高給な管理職こそあぶない? AI時代、真っ先になくなる3つの「間接部門」

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2026年05月06日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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長年担当していた仕事がある日なくなってしまうかもしれない

 ある大手メーカーの経理担当者(40代)は、長年担当してきた仕訳業務や月次報告の取りまとめが、AIの導入後わずか2カ月で自動化されてしまったことに驚いていた。


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 東京商工リサーチが2026年4月に発表した調査では、AI活用を推進する大企業の58%が今後5年以内に「配置転換」や「従業員数の抑制」を行う可能性があると回答している。その最初の標的となっているのが、間接部門(バックオフィス)だ。


 今回は、AI時代に真っ先に削減の対象となる間接部門とはどこか? そして、それでも生き残るために何が必要か? について解説する。間接部門に身を置いている方は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。


●間接部門が膨らみ続けた「本当の理由」


 そもそも、なぜ日本企業の間接部門はここまで人員が厚くなったのか。


 根本的な原因は「目標管理」が「情報管理」にすり替わったことにある。


 組織が目標を持ち、その達成に向けてリソースを配分する。これが本来の姿だ。しかし組織が大きくなるにつれて、


・情報をどう管理するか


・誰が何を承認するか


・どのデータをどのフォーマットで報告するか


 といった「情報管理の仕事」が肥大化していった。そしてその仕事を担うために、間接部門が膨張し続けたというわけだ。


 結果として生まれたのが「確認」と「調整」だけを仕事とする層だ。部署間のスケジュール調整、書類の不備チェック、データの転記作業、社内規定の照会対応――。これらは「目標達成のためのリソース配分」には入っていない仕事だ。情報管理のために発生した仕事と言えよう。


 AIが得意とするのは、まさにこの領域だ。データの照合と生成、ルールに基づいた処理、過去の事例の参照。これらは全て、生成AIが高速かつ正確にこなせる。忖度(そんたく)もないし、主観的な判断もしない。人間がやっていた「情報管理の仕事」が、AIに丸ごと代替される(それどころか、バイアスがかからないため、圧倒的に精度も高い)。だから、間接部門が真っ先に削減の対象になるのだ。


●削減対象となる「3つのタイプ」


 では、具体的にどんな人が対象になるのか。以下の3つのタイプが最もリスクにさらされていると考えられる。


「調整」「確認」が主な仕事の人


 部署間のスケジュール調整、書類の不備チェック、データの転記――これらを主な業務とする人は、AIエージェントにその椅子を奪われる。AIは24時間365日、ノーミスでこれらの作業を完結させるからだ。


「前例」「規定」に依存する人


 「以前はどうでしたか?」「規定ではどうなっていますか?」という問いに答えるだけの専門性は、数秒で回答を生成するAIによって価値を失う。LINEヤフーが2026年2月に人事・総務領域で本格導入したAIツールは、社内規定の照合や入社手続きの案内をAIが代行するようになった。そして月間1600時間もの業務を削減したという。もはや「人に聞く」必要がなくなったのだ。


高コストな「中間管理職」


 AIによって業務の透明性が高まった。情報管理が自動化される中で、高給でありながら実務を生み出しにくい層のコストパフォーマンスが、経営層に目をつけられている。つまり間接部門の部門長などは、よほど大きな付加価値を生み出さない限り、削減対象と見られる可能性が高いということだ。


●なぜ、これほど急速に淘汰が進むのか


 日本企業においてもこの流れは急速に進むのではないか。円安の影響や人件費の高騰、深刻な労働力不足というトリプルパンチの中で、間接業務に人を割く余裕はもはや限界に達している。


 みずほフィナンシャルグループは2026年4月、事務グループを「プロセスデザイングループ」へと名称変更した。今後10年で最大5000人分の事務業務を削減すると発表。RIZAPグループは、事務系ホワイトカラーを2027年3月までに約500人、建設業などの現場職へ配置転換する方針を打ち出した。この流れはもう止まらない。


●間接部門が生き残るための「思考の転換」


 では間接部門に身を置く人間は、どうすべきか。直接部門で活躍できるよう、ゼロから再出発すべきなのか? もちろんその道もあるだろう。ただ、間接部門を減らすことはあっても、ゼロにすることはないはずだ。


 生き残る道は、業務を「執行する立場」から、業務を「設計する立場」へと脱皮することだと私は考えている。AIが事務を処理するなら、人間はそのAIが最も効率的に動くためのワークフローを設計すればいい。


 ここで重要になるのが「目標達成のプロセス全体を理解している」という知識だ。例えば営業企画部門を例に考えてみよう。AIによって個別の事務作業が自動化された後に残る仕事は何か。それは、目標達成のための「フェーズ管理」と「マイルストーン管理」だ。


●フェーズ管理・マイルストーン管理が間接部門の生き残る道になる


 フェーズ管理とは、目標達成のプロセスを複数の段階(フェーズ)に分け、各フェーズで何を達成すべきかを設計・管理することだ。マイルストーン管理とは、各フェーズの途中にある重要な通過点を設定し、そこに確実に到達しているかを確認することだ。


 これは、まさに営業企画部門や事業推進部門がやるべき仕事だ。具体的な事例で説明しよう。なお、営業部自身が目標達成の計画を作るべきではないかという意見もあるかもしれないが、そうすると客観的視点が抜けることが多いため、営業企画部などが計画を立て、管理した方が理にかなっているといえる。


 例えば「来月の展示会で来場者500人のリード情報を獲得し、その後3カ月で50件の商談につなげる」という目標があるとする。この場合、フェーズは次のように設計できる。


●目標達成までの各フェーズ


1. 集客フェーズ(展示会の1カ月前まで)


目標:招待状の送付、SNSでの告知、DM配信で見込み客500人を集める。マイルストーン:2週間前時点で予約300人超。


2. 当日対応フェーズ(展示会当日)


目標:来場者全員に個別対応し、アンケートと名刺情報を取得する。マイルストーン:アンケート回収率80%以上。


3. フォローフェーズ(展示会後1カ月以内)


目標:来場者を温度感別にABC分類し、A層には即アポイント、B層には資料送付とフォロー連絡。マイルストーン:1週間以内にA層全員へ初回コンタクト完了。


4. 商談化フェーズ(展示会後3カ月以内)


目標:50件の商談アポイント獲得。マイルストーン:毎月15件ペースで進行しているか確認。


 このようなフェーズとマイルストーンを設計し、各フェーズの進ちょくを管理し、遅れが生じたら原因を特定してリカバリー策を講じる。「何が起きているか」を把握するのはAIでもできるが「なぜそうなっているか」を判断し「次に何をすべきか」を意思決定するのは人間でなければならない。


 このフェーズ管理の考え方は、展示会に限らない。新製品のリリース、新規開拓キャンペーン、社内の業務改善プロジェクト。これら全てに応用できる。どのフェーズにいるのか、マイルストーンを通過できているか、遅れているなら何が原因かを常に把握し、次の打ち手を考える。これが「プロセスを設計・管理する仕事」の本質だ。


 AIが個別のタスクを処理してくれるからこそ、人間はこの「全体を見る仕事」に集中できる。逆に言えば、この「全体を見る力」がなければ、AIが処理したデータの山を前に、何もできない人になってしまう。


 間接部門に身を置く人こそ、「目標達成プロセスの全体像」を理解すべきだ。


 「私の仕事は経理です」「人事です」という職種への帰属意識は、もはや生存を保証しない。AIが代替できない「プロセスの設計力」と「フェーズ管理の能力」を武器にすること。それが、AI時代における間接部門の生き残る道だと私は考えている。


著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)


企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。



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