
5月5日は「こどもの日」ですが、AIなどテクノロジ―の進化により学校教育はいま、“劇的”に変わろうとしています。「AIが“先生役”になる」ことで、子どもの学びにどんな影響があるのでしょうか?
“第3の先生”? 変わる授業風景 生成AIで「オリジナル風刺画」神奈川県にある相模原市立中野中学校。3年生の生徒たちがこの日、学んでいたのは「日清戦争」の歴史です。
日清戦争といえば、魚を釣ろうとする日本と清をロシアが横から狙う、フランスの画家・ビゴーの風刺画が有名です。
この授業では、生徒が生成AIをつかってそれぞれオリジナルの風刺画を作成。授業で学んだ知識を1枚の絵に落とし込むことで、日清戦争への理解を一層深めてもらおうという狙いです。
男子生徒
「日本が中国に日清戦争で勝ったけど、この3つの国が日本を責めてきて中国が待機してるよみたいな話でしょ」
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また、出来上がった風刺画を再びAIに読み込ませ、作品の意図を説明します。
生徒のプロンプト
「日本ではなくロシアが遼東半島を取ろうとしていることを意識して画像を作りました」
AIから質問
「では、『なぜロシアは日本が清から遼東半島を得ることをそこまで嫌がった(自分たちが欲しがった)のだと思いますか?』」
AIが“先生役”となって問いを投げかけることで、生徒の思考をさらに掘り下げていきます。
女子生徒
「あたふた困惑している。他の国、ドイツとかが日本をおさえ込もうとしている。能力は使わせないよみたいな」
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かつて、先生の話を一方的に聞くことが当たり前だった教室。その授業風景は、AIの導入で一変しました。
中学2年生
「解説の解説がほしくなる時があるが、AIに聞くとそれができて、第3の先生みたいな、第3の教科書みたいな感じ」
中学2年生
「自分から発言するのがちょっと苦手だから、AIがあると自分が分からなくなった所とかも気軽に聞ける」
AIは、長時間労働が指摘されてきた教員の働き方にも、大きな変化をもたらしました。
「生徒と関わる時間増えた」AIで教員の負担も減少英語を教えて5年目になる坂本先生。
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相模原市立中野中学校 坂本真也先生
「定時が部活動でマックスになってしまうので、その後にやっと授業準備をしたり、保護者連絡をしたり、やらなきゃいけないことが多かった」
AIが導入される前は、月の残業時間が80時間を超えることもあったといいます。それが今は…
相模原市立中野中学校 坂本真也先生
「リスニングのデータと自分の作った(前回の)テストを、NotebookLMにまずデータを入力します」
資料を読み込ませた上で、「定期試験の解答・解説の作成」を指示すると、わずか10秒で出来上がりました。
授業の準備にかける時間が短縮されたことで、先生にとって「最も大切な時間」が増えたといいます。
相模原市立中野中学校 坂本真也先生
「生徒と関わる時間が本当に増えた」
「生徒に寄り添ってコミュニケーションをとったり、悩んでいる子がいたら悩みを聞いてあげたり。そういったところが、AIにはできなくて自分にできること」
相模原市立中野中学校は2023年度から、文科省が「生成AIパイロット校」に指定。全国に先駆けて、AIを教育に活用する取り組みをスタートさせました。
「大切なのは好奇心を育てること」教育×AI 考える力どう育てる?前例がないなか、重視したのは“AIと対話しながら学ぶ”こと。
相模原市立中野中学校 梅野哲統括教諭
「先生に構ってほしい、先生を独り占めしたい。だけど聞きたいけど聞けないっていう状況がいっぱい教室の中であった。それが、先生の意図を組み込んだ生成AIだから、先生と同じような質問とかが来る。うれしいですよね」
一方で、使い方によっては、逆効果になる懸念もあります。
相模原市立中野中学校 梅野哲統括教諭
「ある程度、自分で課題解決できる力があるのに、全て(AIに)丸投げしてしまうと考える力が衰える。だから使いようかな」
これからの時代、教育現場はAIとどう向き合うべきか。
Googleで生成AIの開発を主導する教育担当役員は、“能動的な学び”こそが教育を進化させると語ります。
Google教育担当役 ベン・ゴメス チーフテクノロジスト
「いまは情報と“能動的に”対話することができる。疑問をもって質問したり、納得がいくまで深掘りしたり」
「AIを正しく使いこなせれば、これまでにはないほど思考を深められる」
「生徒たちにとってなにより大切なのは、なぜ?と問いかける好奇心を育てること。学びを助けてくれるツールはいくらでも手に入るのだから」
藤森祥平キャスター:
学校でのAIの活用は、55の国と地域の中で54位と、日本は活用の頻度が低く、遅れを取っているということです。
大人のAI利用の経験も、日本は26.7%、アメリカは68.8%、中国は81.2%と差が開いています。
エストニア政府は2025年の9月から国内の高校生や教師を対象に、「ChatGPT」の有料版を無料で使える環境を整備したといいます。
小川彩佳キャスター:
AIを教育に取り込むとどのように変わっていくのか。子どもたちの学習に役立つのでしょうか。
TBS CROSS DIG 中川雅博:
「AIを教育に活用すれば万事解決」ではありません。むしろ使い方を間違えると、AIの答えをそのままコピペしてしまうなど、考える力が弱くなることもあり得ます。
Googleチーフテクノロジスト ベン・ゴメス氏は、「AIは単なる“答えを出す機械”ではなく、“能動的な学習を深めるための道具”になる」としています。つまり“ググる”というだけではなく、学習探求のために対話する相手だということです。
さらに「クラスの置いてけぼりを作らない。格差を縮める」とも話し、授業でつまずいた生徒に1人1人に合った学習をAIが提供できるとしています。
例えば、数学の「一次関数」を文章だけでは理解できないという子には、画像生成を活用してビジュアルで理解できるようにしてあげたり、AIが関連する問題を出して、その回答から「ここが単元がわかってないから、もう1度解いてみよう」と指摘したりできます。
“わからないから諦める”、“授業中に質問ができない”ではなく、AIになら怒られることもなく、何でも聞くことができます。
小川キャスター:
授業の流れを止めてしまうのではと、質問を躊躇してしまう子もいるでしょうから、自分専用のティーチングアシスタントがいるような感覚が生まれるかもしれませんね。
小説家 真山仁さん:
便利なものを使うのは良いと思いますが、「AIが道具である」という前提がわかっているかどうか。つまり、人が使われてはいけません。
寄り添ってくれるAIに、人が依存していく可能性が高いと考えます。
大学生とやっている勉強会でも、新学期に入ってきた学生は受験指導までしてもらっています。依存について指摘しても「パートナー」だと言います。
残念ながら人間の社会は、認めてもらえない・寄り添ってもらえないのが現実です。教育の中でAIに寄り添ってもらっていて、本当に社会に出れるのか疑問です。
小川キャスター:
お世辞を言ってくる生成AIも多いという印象ですが、私は厳しく指摘するよう事前に指示をだして生成AIを使っています。そうした、プロンプト次第という部分もあるのでしょうか。
TBS CROSS DIG 中川雅博:
AIは当然、指示に対しては忠実なので、プロンプトでどこまで設計をするか。そのため学校現場で使うには、先生たちがプロンプトを設計できるかが非常に大事になると思います。
また、今のAI開発は“お世辞を言わないようにする”という流れです。AIがお世辞を言うと人々は依存して使いますが、それは健全じゃないという議論がAI業界にあり、開発の指標でも、やらないようにとなってきています。
小説家 真山仁さん:
人にとっては、ずっと見てくれているということが大事です。お世辞ではなく、ずっと守ってくれる人を、結果的に頼ってしまいがちです。
(人と違って)「こうじゃないの?」「なんでわからないんだ」とAIは絶対に言わない。あまりにも優しいことだけを言うもの(AI)に接点を持っているという意味では、お世辞より深刻だと思います。
人は厳しいことを言っていても、相手が弱っていて「ダメそうだ」となると介入して、寄り添ってくれます。
TBS CROSS DIG 中川雅博:
「ChatGPT」が登場してまだ2年半ほどですから、長期間AIを使った場合にどういう影響があるかまだ分かりません。これからどうなっていくか注目です。
藤森キャスター:
マサチューセッツ工科大学の研究で、生成AIを使ってレポート執筆をすると、脳の活動が最大55%減っていることがわかりました。
自分が書いた“レポート”を正確に思い出せた人は0%でした。一方、AIを使ってない人は、89%以上が自分が書いた内容を覚えています。
小説家 真山仁さん:
スマホで文字を打っていると、漢字を変換してくれます。今、小学生で習うような漢字が書けなくなっている人がすごく多いと思います。
便利だからというだけではなく、自分の頭で考えて、AIなどの便利なものを“補助”だという意識を持つ必要があります。私は本当は、10代の子にはAIを使ってほしくないと思っています。
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<プロフィール>
中川雅博
TBS CROSS DIG 企業・産業コンテンツ担当
Google幹部を取材
真山仁さん
小説家
防衛費倍増で揺れる政権を描いた「アラート」
最新作は「ウイルス」
