8年ぶりのラリー・ポルトガル制覇を果たしたティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデi20 Nラリー1) 2026年WRC世界ラリー選手権第6戦『ラリー・ポルトガル』は5月10日(日)、競技最終日となるデイ4のスペシャルステージ(SS)20〜23が行われ、ヒョンデi20 Nラリー1を駆るティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組が劇的な大逆転で今季初優勝を飾った。
ヌービルにとっては8年ぶりのポルトガル制覇となる。これにより、今季開幕から続いていたトヨタの連勝は『5』で、2019年から続いた同大会での連勝記録(2020年の中止を挟む)は『6』でストップすることとなった。
また、総合2位にはオリバー・ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー1)、総合3位にはエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が入り、トヨタ勢がダブルポディウム(表彰台)を獲得。日本の勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合5位で完走した。
デイ4は、サービスパークの北東エリアで『ヴィエイラ・ド・ミーニョ』と伝統の『ファフェ』という2つのステージを各2回走行する計4ステージ、合計走行距離62.18kmで争われた。最終日のみのタイムでポイントを競う『スーパーサンデー』、そして最終SS23の『パワーステージ』でのボーナスポイントも懸かる重要な1日だが、前日から降り続く雨の影響により、路面は極めて滑りやすく危険なマディ・コンディション(路面が泥だらけでぬかるんだ状態)が残っていた。
デイ3を終えた時点で、総合首位のセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)から21.9秒差の総合2番手につけていたヌービルは、オープニングのSS20でオジエを上回るタイムを記録し、その差を14.3秒にまで縮める。一方、総合3番手につけていたサミ・パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、マシンのフィーリングに違和感を抱えながらの走行となり、ペースを上げきれない苦しい立ち上がりとなった。
続くSS21『ファフェ1』では、Mスポーツ・フォードWRTのジョシュ・マッカーリーン(フォード・プーマ・ラリー1)がラリー1クラスでの最速タイムを叩き出すというサプライズを見せる。これはマッカーリーンにとって最高峰クラスで初となる記念すべきステージベストであった。このステージでオジエはヌービルをタイムで上回り、両者のギャップは17.3秒へとふたたび拡大。残るは2ステージのみとなり、オジエのポルトガル最多記録更新となる8勝目は盤石かと思われた。
しかし、ラリーの神様は最後の最後に残酷な結末を用意していた。波乱の舞台となったのは、ブービートラップのように鋭い岩が転がるSS22『ヴィエイラ・ド・ミーニョ2』だ。
まず悲劇に見舞われたのは、懸命に表彰台圏内を死守していた総合3番手のパヤリだった。レーシングライン上に転がっていた巨大な岩を避けることができず、痛恨のパンクを喫してしまう。ステージ内でのタイヤ交換を余儀なくされたパヤリは、ここで3分近くを失い総合7番手へと一気に転落した。
そしてその直後、絶対王者のオジエにも信じられない光景が待っていた。パヤリとまったく同じように、コース上の岩にヒットして無情のパンクチャー。勝利を目前に控えていたオジエもタイヤ交換のためにマシンを止めざるを得ず、総合6番手へと沈んでしまった。
この悪夢のような連続パンクの波乱により、総合順位は劇的にシャッフルされる。ここまで虎視眈々と首位を狙ってプレッシャーをかけ続けてきたヌービルが総合首位へと浮上。さらに、後方で激しい順位争いを展開していたソルベルグが総合2番手、エバンスが総合3番手へと一気にジャンプアップを果たした。
大きなうねりとともに迎えた最終ステージ、名物『ファフェ』でのパワーステージ(SS23)。首位に立ったヌービルは、大ジャンプを成功させながら冷静かつ確実な走りでフィニッシュラインを駆け抜け、トップの座を堅守した。ヒョンデ陣営にとって今季初となるこの勝利は、4月のクロアチア・ラリーで首位を快走しながら最終日のクラッシュで勝利を逃したヌービルにとって、まさに最高の雪辱を果たす結果となった。
パワーステージのトップタイムはアドリアン・フルモー(ヒョンデi20 Nラリー1)が奪取してボーナス5ポイントを獲得。2番手タイムにヌービル、3番手にエバンス、4番手にソルベルグが続いた。
総合順位では、最終日の波乱を味方につけたソルベルグとエバンスが2位、3位に入りトヨタ勢がダブルポディウムを獲得。フルモーが総合4位に入り、クレバーな走りで過酷なコンディションを生き残った勝田が総合5位まで順位を上げてフィニッシュした。オジエは総合6位、パヤリは総合7位での完走となっている。
なお、日曜日のみのポイント争いとなる『スーパーサンデー』では、最終日に猛プッシュを見せたソルベルグがトップを獲得し、2位にエバンスが続く結果となり、トヨタ陣営が週末のダメージを最小限に抑える貴重なポイントを持ち帰っている。また、WRC2クラスではテーム・スニネン(トヨタGRヤリス・ラリー2)がルーペ・コルホネン(トヨタGRヤリス・ラリー2)との接戦を制してクラス優勝を飾った。
トヨタのポルトガル無敗神話と今季の連勝記録を止めた、ヒョンデの乾坤一擲の勝利。雨と泥、そして岩に翻弄された荒れ狂う一戦を終え、次戦は5月末、舞台を極東のターマック(舗装路)へと移し、WRC第7戦『ラリージャパン』が開催される。母国凱旋となるトヨタ勢の逆襲が期待されるなか、日本での新たな戦いの幕が上がる。
[オートスポーツweb 2026年05月10日]