ソニーが打ち出した「AIによる成長」と“ただし書き”の中身 26年度経営方針説明会

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2026年05月11日 18:10  ITmedia NEWS

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ソニーグループの十時裕樹社長兼CEO(出典:公式配信、以下同)

 ソニーグループが5月8日に開催した「2026年度経営方針説明会」の主役は“AI”だった。同社がエンターテインメント領域へさらに注力するに当たり、いかにAIの活用が重要になるかを具体的な事例を挙げて紹介した。


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 こうした説明会でソニーは、ときに将来に向けた重要なテーマを深堀りし、参加者に意識変化を促す。最近でいえば、23年度のテーマとなった「アニメ」がそうだった。


 この時は、21年に買収した米国のアニメ配信サービス「Crunchyroll(クランチロール)」が軌道に乗ったこと、アニメ制作ソフトを開発していることを紹介するなど、アニメへの取り組みに長い時間を割き、「クリエイションシフト」を打ち出した。ソニーのコアビジネスはエレクトロニクスと考えていた人は、そのギャップに驚いたかもしれない。


 しかし26年になってみると、クランチロールの有料会員数は1300万人(23年)から2100万人(26年3月末時点)まで拡大し、アニメや音楽を含むエンターテインメント、IP、クリエイションテクノロジー領域は、グループ連結売上高の67%を占めるまで成長。売上高12兆4796億円、営業利益1兆4475億円といずれも過去最高を記録した「2025年度連結業績」(25年4月〜26年3月)をけん引する要素の一つになった。


 一方で、テレビの「BRAVIA」やホームオーディオ製品を開発製造するエレクトロニクス事業は、中国TCLとの合弁会社に承継することが決まった。23年に当時の吉田憲一郎会長兼CEO(現在は会長)が打ち出した「クリエイションシフト」は、事業ポートフォリオの組み替えを伴う変革につながった。


●AIの可能性と“ただし書き”


 ソニーはAIを、既存事業の効率化や価値最大化を図るためのツールと位置付けている。ソニーグループの十時裕樹CEOは、「新たな価値創出を促し、エンターテインメント領域で新しい成長機会を生み出す可能性がある」と紹介した。しかし同時に「強力なツールだが、アーティストやクリエイターに変わるものではない」と強調する。これは今回の説明会を通じて何度も聞いたフレーズだ。


 「最も記憶に残る体験はこれからも人によって生み出され、人によって楽しまるものだと考える。AIはそのプロセスを支援する」(十時氏)。


 具体的にAIで何をするのか。例えばソニー・ピクチャーズでは、AIを始めとする先進技術をワークフロー全体に展開するために5000万ドル以上を投資してきた。目的は、制作期間の短縮やアウトプットの拡大だ。


 ゲーム分野にはすでに多くの実績がある。ソニー・インタラクティブエンタテインメントの西野秀明CEOは、プレイヤー、パブリッシャー(ゲーム開発者)、そしてPSN(PlayStation Network)のようなプラットフォームと分けて、それぞれAIがもたらす恩恵の具体例を挙げた。


 例えば「グランツーリスモ7」のAIエージェント「GT Sophy」は、これまでのCPU戦と異なり、ミスしたり、ブロックしたりと対人戦に近い対戦を可能にした。


 3月に発表したPS5の新しい画像処理技術「PSSR(プレイステーションスペクトルスーパーレゾリューション)2.0」の4K描画は「スタジオの創造性をさらに引き出し、プレイヤーとクリエイター双方の体験を高める」という。


 ゲーム開発者には、反復作業の自動化、ソフト開発の生産性向上、3Dモデリングなど、より効率的な開発環境を提供する。例えば、現在ソニーが開発しているのは、ゲームキャラクターの髪の毛を自然に動かすアニメーション生成ツール。ヘアスタイルの映像からAIが数百本もの髪の3Dモデルを生成するという。


 さらに西野氏は「ゲーム制作のハードルは下がり、開発も加速する。より多くのクリエイターが市場参入できるようになる。コンテンツの量と多様性はさらに拡大し、プラットフォームの役割が重要になる」と話す。


 ストアがプレイヤーの嗜好に合ったゲームをリマインドする仕組みに機械学習を採用したところ、過去3年間で7億ドルを超える増収を生み出したという。「コンテンツの推薦は、人のマニュアル作業を上回る成果を示している。次に遊ぶゲーム、イベント、サブスク、周辺機器まで最適な提案が可能になる」。


 そして西野氏も、ただし書きを添えることを忘れなかった。「ゲームのビジョンやデザイン、感動はクリエイターの才能から生まれる。AIはそれを拡張するもので、置き替えるものではない」。


 AIはすでにあらゆる業界へ浸透し始めているが、一方で情報漏えいリスクや責任の所在の不明瞭化など、マイナス面も多く報じられている。海外からはAI導入による人員削減といったニュースも流れてくるようになった。


 ゲームやアニメを含むエンタメ業界でも、AIが生成したコンテンツが他者の権利を侵害する可能性が指摘されている他、最近ではAIを使用したこと自体がネットで批判を集めるケースも少なくない。


 そんな複雑な状況において、ソニーの“ただし書き”はクリエイター重視の姿勢を示すだけでなく、責任の所在を明らかにする意味もあるだろう。あるいはAIに対する過度な期待や、AI使用に対する反感を抑える効果も狙っているのかもしれない。


 いずれにしても、ソニーはAI導入の成果を今後の決算発表の場で報告する。アニメのような良い報告にできるか。



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