「田舎暮らしが、こんなに息苦しいなんて」58歳で早期退職、貯金3000万円で長野へ移住した男性。濃密すぎる“人間関係”が壊した夫婦の老後

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2026年05月30日 09:00  日刊SPA!

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地方移住の関心は高まっており、ふるさと回帰支援センターの2025年の移住相談件数は7万3003件と、5年連続で過去最高を更新した。退職後の地方移住や古民家購入は理想の暮らしに見える一方、想定外の生活コストや夫婦の認識のズレが後悔につながることもある。移住の落とし穴について、財務コンサルタントの見解もあわせて見ていきたい。
◆理想だった古民家移住の始まり

「雑誌の特集を見て、理想を描きすぎました」

長野県の山間部に移住した元広告ディレクターの高橋浩二さん(仮名・61歳)は、自嘲気味に笑う。

東京の中堅広告会社で長く働き、58歳で早期退職。退職金は約2900万円、預貯金を合わせると手元資金は3300万円ほどあった。都内のマンションを売却する選択肢もあったが、「老後は自然の中で、夫婦で静かに暮らしたい」という思いが強く、雑誌で見つけた長野県の古民家にひと目惚れした。

築70年超の古民家を購入し、断熱改修や水回りの全面リフォーム、薪ストーブの設置などで追加費用は800万円近くにのぼった。それでも高橋さんは満足していた。

「これで終の棲家ができた。都会のせかせかした暮らしから抜け出して、ようやく自分たちの時間を取り戻せると思ったんです」

朝は縁側でコーヒーを飲み、昼は畑をいじり、夜は夫婦で地酒を楽しむ。そんな“晴耕雨読”の老後を思い描いていた。だが、現実は雑誌の見開き2ページのようにはいかなかった。

まず苦しかったのは、想像以上に地域との距離が近いことだった。町内会、草刈り、用水路の掃除、祭りの手伝い、防災訓練、消防団の寄付。高橋さん自身は「郷に入っては郷に従え」と前向きだったが、妻の美和子さん(仮名・58歳)は徐々に疲弊していった。

近所の人は親切ではあった。ただ、その親切は都会の感覚とは少し違った。野菜をもらえば、こちらも何か返さないといけない。畑を放っておくと、「せっかく土地があるのにもったいない」と言われる。平日の昼間に車がないと、「奥さん、どこか具合悪いの?」と噂になる。

「悪気がないのはわかるんです。でも、妻にはそれが全部しんどかった。東京なら隣に誰が住んでいるか知らなくても平気だったのに、ここでは“知らない”では済まないことが多かった」

◆妻を追い詰めた田舎の濃密さ

決定的だったのは、人間関係の密度よりも、妻の孤立だった。高橋さんは地域の寄り合いに顔を出し、畑の話題で会話もできた。一方、美和子さんの友人はみな東京や横浜にいた。気軽に会える相手はおらず、電車一本で出かけることもできない。車社会の土地で、冬になれば道は凍る。雪かきすら、都会育ちの彼女には大きな負担だった。

移住1年目の終わり頃から、妻は口数が減った。食卓でも「うん」「別に」としか返さない日が増えた。高橋さんは「そのうち慣れるだろう」と軽く考えていたという。

「自分は会社も辞めて、都会も捨てて、やっと理想の暮らしを手に入れた気分だったんです。だから、妻も同じように満足していると勝手に思い込んでいました」

移住2年目の秋、朝起きると、食卓の上に一枚のメモが置かれていた。

《少しのあいだ、実家(横浜)に帰ります》

最初は、数日もすれば戻ると思った。だが、「少しのあいだ」は1週間になり、1か月になり、やがて3か月を超えた。電話で「いつ戻る?」と聞くと、妻は静かにこう言った。

「あなたはここが好きなんだろうけど、私はずっと、息が詰まりそうだった」

その言葉で、高橋さんは初めて、自分が手に入れたかったのは“夫婦の老後”ではなく、“自分が憧れた田舎暮らし”だったのかもしれないと思い至った。古民家の購入と改修で使った金は取り戻せない。簡単に東京へ戻るにも、住まいも仕事もない。理想の移住生活は、わずか2年で、静かにほころび始めていた。

「家を買ったことが失敗だったのか、移住そのものが失敗だったのか、今でもわかりません。ただ、夫婦で幸せになるための決断だったはずなのに、気づけば妻だけが置き去りになっていた。そのことが、いちばん堪えます」

◆<解説>安く買っても暮らしは安くない

地方移住や古民家購入は、都市部の住宅価格と比べると「安く手に入る老後の住まい」に見えやすい。だが、その判断が、思わぬ家計悪化や夫婦関係のひずみにつながるケースは少なくないという。財務コンサルタントの桜井潤一氏は、こう指摘する。

「よくある失敗は、『物件価格だけ』で判断してしまうことです。実際には、古民家の修繕費で数百万円から1000万円超かかることもありますし、断熱性が低ければ冬の光熱費も大きく膨らむ。さらに地方では車2台が前提になることも多く、維持費や買い替え費用も見落としがちです。病院や買い物までの距離も、日々の生活コストとして効いてきます」

高橋さんのケースでも、購入時の高揚感に比べ、住み始めてからの現実ははるかに重かった。家そのものの取得費だけでなく、暮らしを維持するためのコスト、地域に溶け込むための負担、そして何より、夫婦の温度差が後からじわじわと効いてきたのだ。

桜井氏は、「安く買う」ことよりも、「無理なく住み続けられるか」という視点が重要だと語る。

「防ぐためには、『体験』と『対話』が不可欠です。可能であれば数か月の短期移住をしてみること。そこで実際の生活費をもとに、リアルな家計シミュレーションを行うこと。そして夫婦で、何を優先するのかをきちんと言語化しておく必要があります。利便性を取るのか、自然環境を取るのか、人間関係や収入をどう考えるのか。ここがズレると、同じ場所に住んでいても、一方は『満足』でも、もう一方は『後悔』になります」

移住の失敗とは、土地選びの失敗である前に、日常を見誤ったことの代償なのかもしれない。

桜井潤一
ユニバーサルバンク代表。財務コンサルタント。早稲田大学卒業後、大手銀行に24年間勤務。2020年株式会社ユニバーサルバンク設立。富裕層の資産運用から、数十億の法人融資まで1,000社以上の審査と支援を経験。「銀行を超えた銀行を創る」という思いから2020年独立、「株式会社ユニバーサルバンク」設立。3,000万円以上の自己投資をして起業初年度から年商1億5,000万円のビジネススクールを経営、提供するセミナーも6,000人以上が受講。「真に豊かな人生を送れる人を増やしたい」という想いから、財務×ビジネス×資産形成を融合したReal Wealth®︎プログラムを開発

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  • 普段は便利な大きめの街で暮らし、偶に郊外でボケ〜と過ごすのがいい。勿論人夫々。
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