ラリージャパンWRC2で自身初の表彰台獲得。トヨタ育成の山本雄紀が語る北欧ラリー漬け生活と独自のトレーニング

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2026年06月10日 06:00  AUTOSPORT web

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WRC2クラスの3位表彰台を獲得した山本雄紀/ジェームス・フルトン組(トヨタGRヤリス・ラリー2) 2026年WRC第7戦ラリージャパン
『フォーラムエイト・ラリージャパン2026』のWRC2クラスで、日本の若手ラリードライバーが大きな一歩を刻んだ。TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀がWRC2クラスに参戦し、自身初となる3位表彰台を獲得したのだ。

 トリッキーな日本のステージを安定したペースで走り抜いて、初の表彰台を手にした山本は「今回の結果は大きな自信になりました。まだ改善点は多いですが、これは自分の時間をしっかり使って準備してきた成果だと思います」と語った。

 先輩・勝田貴元が総合優勝を果たし、日本のラリー界が盛り上がる今、次世代を担う山本がどのように成長してきたのか。その背景には、フィンランドでのラリー漬けともいえる生活がある。そのストイックな日常と、シミュレーターを使った独自のトレーニング方法を聞いた。


■シミュレーターで探る「タイムを削る感覚」。大好物は麻婆豆腐

 2022年にTGR育成プログラム2期生として選出された山本は、1997年生まれの29歳で、現在はWRC2にフル参戦中。フィンランドのTGR-WRT本拠地を拠点に、世界を転戦しながら経験を積んでいる。落ち着いた語り口で、速さを求める理由を淡々と語る姿は、若手らしい勢いよりも“冷静に積み上げる好青年”という印象が近いだろう。

 ラリー参戦とその準備で多忙な日々を送る山本だが、育成選手だからと言って毎日ラリーカーに乗れるわけではないという。プログラム1年目こそ、習熟を促すべく週に2〜3回のペースでラリー4車両を使った実車テストを重ねたが、現在はラリー本番前のテスト走行が中心。クルマに乗る機会が減った分、まず日常を構成するイチ要素となるのがフィジカルトレーニングだ。

「専属のトレーナーがついていて、週に1回、多い時で週2回ほど対面でセッションを行いますね。その他の日は、トレーナーから送られてくるメニューをもとに、ひとりで淡々とこなしています。1回のセッションは2〜2時間半ほどで、何も予定がない日は1日に2セッション組まれることもありますね(笑)」。通常でも1日あたり2〜3時間をフィジカルに割くことになり、これが毎日のリズムをつくる最初の作業となっている。

 さらにラリー前はテストに加えて、過去のオンボード映像を徹底的に分析し、ペースノートの確認を行うため、部屋でPCと向き合う時間が増えるという。山本は「書き出してみると暇そうに見えるかもしれないですが、それでも全然時間がないんです」と苦笑い。それほどまでに、ラリー漬けのストイックな日々を送っている。

 データ分析において、とくに参考にしているのがTGR-WRTの先輩であり、ラリージャパンでも自身3勝目を果たしたエルフィン・エバンスだという。「英語でのペースノートの作り方や、各コーナーの大きさを表現する数字の付け方が自分の感覚と近く、フロントを感じ取って走るドライビングスタイルも共通点」として実感できているという。

 一方で、9度の王者であるセバスチャン・オジエのステアリング操作や、「セットアップからしてまったく方向性が異なる」というオリバー・ソルベルグの走りについては「真似できる感じではない」と冷静に分析。多くのトップドライバーの走りを観ながら、自分に合う技術を抽出してドライビングの引き出しを増やそうとしている。

 そんなフィンランドでの生活で、一番の娯楽を聞くと「それはレーシングシミュレーターですね」と山本。娯楽とはいえ研鑽のうちに入るところがストイックだが、音楽やアウトドアなどの「趣味らしい趣味は探しています(笑)」とのことで、「ゴルフは打ちっ放しやホールに行くくらい好きではあるのですが、そこまでの時間がないです(笑)」と実情を明かした。

 空いた時間はもっぱらシミュレーターに打ち込んでいる様子で、自宅に本格的な環境を構築し、「長い時は1日6〜7時間」も没頭するという。プレイするのは『iRacing』や『アセットコルサ』などが中心だが、意外にもラリーよりもサーキット走行での時間を多く取るそうだ。

 その理由について山本は「ラリーは不確定要素が多いですが、サーキットは同じコンディションでタイムを削っていく。求められる力が違って、サーキットのシミュレーションではマシンを素直に速く走らせる技術を磨ける」と山本は語る。

「カートや4輪で走っている選手が、同じコースを繰り返し走る中でどうやってタイムを削るのか、という感覚をしっかりと身につけたいんです。多くはGT3やF4のマシンに乗っていて、好きなコースとしては、「GT3ではスパ・フランコルシャンやバルセロナ。F4では鈴鹿、富士、岡山などを走るのがメインですね。とはいえ、ほかにももっと多くのコースを走っていますよ」と話し、現在打ち込んでいる彼なりのトレーニングを明かした。

 ラリーと離れた生活面に目を向けると、住んでいるのはチームの寮で、育成プログラムの後輩たちも同じ棟に住んでいるそう。もちろん家事はすべてひとりでこなしている。「僕は麻婆豆腐が大好きなので、よく作りますね。あとはカレーだったり、とんかつだったり、お米を一緒に食べるものは何でも作ります。自炊以外、日本食を食べることができないので(苦笑)」と山本。後輩たちとは大会やテストの日程が異なるため、頻繁に顔を合わせているわけではないというが、オフが重なった日に食事をともにしたり、シミュレーターで追走を楽しんだりと、適度な距離感でリラックスした関係性を築いているようだ。

「これだけラリーに打ち込める生活ができているので、家にいるだけで満足しています」と語る山本は、他に目移りするような誘惑が少ないフィンランドの環境は、ラリーに集中するには最適と捉えており、ファクトリーのすぐ近くに住むことでチームとの風通しも良くなる。ラリー大国フィンランドの国柄もあって、道路でのテストの難しさも比較的軽減されるという。

 そして迎えたフォーラムエイト・ラリージャパン2026。山本は難しいコンディションのなかで安定したペースを刻み、最終日にかけて着実に順位を押し上げ、WRC2クラスで自身初となる3位表彰台を獲得した。フィンランドで積み重ねてきたデータ分析やシミュレーターでの鍛錬が、ここ一番の集中力と判断力につながったことは間違いない。表彰台後には「このラリージャパンへ向けては、自分の時間をしっかりとって、ペースには自信を持って臨みました。まだまだ改善すべき点は多いですが、今回の結果は大きな自信になりました」と笑顔を見せていた。

 ストイックな日常、シミュレーターでの鍛錬、データ分析、そして異国での生活。そのすべてが、確かな成長として、母国日本の舞台で結果に結びついた。複数回の表彰台と初のクラス優勝をターゲットとする山本は、ここからさらに研鑽を重ね、WRCトップドライバーへの階段を一段ずつ確実に登っていく覚悟だ。

[オートスポーツweb 2026年06月10日]

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