フォード・マスタングが初の富士24時間を完走。“お昼寝作戦”から気合いの復活も「デフは砕け散る寸前」とBRP奥村代表

0

2026年06月11日 06:00  AUTOSPORT web

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AUTOSPORT web

2026スーパー耐久第3戦富士24時間 BRP★HOJUST MUSTANG DHR
 6月5日(金)〜7日(日)にかけて静岡県の富士スピードウェイでENEOSスーパー耐久シリーズ 2026 Empowered by BRIDGESTONE(S耐)の第3戦『NAPAC富士24時間レース』が行われ、ST-USAクラスに唯一参戦したBirth Racing Project【BRP】の250号車BRP★HOJUST MUSTANG DHR(猪爪杏奈/大野尊久/奥村浩一/竹本優月輝/いとうりな/松本玲二)が、210周を走破して総合54位完走を果たした。

 フォード・マスタング・ダークホースRという、日本ではほとんど走行実績のないアメリカ製スプリント用レーシングカーを走らせているバースレーシングプロジェクト(BRP)。今季はスーパー耐久未来機構(STMO)のオファーを受けS耐に挑戦をスタートさせたが、初めて臨む富士24時間という大舞台で、チームはどのような準備を行い、実際のレースでは何が起きたのか。BRP代表兼ドライバーの奥村浩一氏に話を聞いた。


■完走を支えたマスタングオーナーの声援とラスト30分の恵みの雨

 2025年最終戦から新設されたST-USAクラス唯一の車両として、BRPが走らせている250号車BRP★HOJUST MUSTANG DHR。チームは北米流の“珍獣”フォード・マスタング・ダークホースRをスーパー耐久仕様にフルリメイクして運用しており、緒戦となった第2戦鈴鹿で得たデータを元に改良を施して富士24時間に持ち込んだ。レース前、奥村代表は「とにかくまずは予選を完走できてよかったです。それでも決勝へ向けては心配しかないです」と苦笑いを浮かべていた。

「マスタングはスプリント用のレーシングカーなので、そもそもが耐久レースを走らせる設計じゃないんです。事前に補強してきた箇所もあるし、最後まで走れるのか不安は箇所もいくつもある。なるべくレース中でも直せるように部品の準備はしてきましたが、どこが壊れるかはやってみないとわからないので、今回は実験の面も込みで走ります」

 BRPは富士24時間に向けて燃料タンクと給油ラインを改造。第2戦鈴鹿ではガレージ内での給油にとどまっていたが、富士24時間ではガレージ前のピットボックスで給油を行えるようになった。さらに、エンジンとトランスミッションの結合部には独自の補強を施すなど、考え得るウィークポイントには手を打ってきたという。

「エンジン自体は強いですが、他のところはまだ不安が残りますね。日本のサーキットは路面のミュー(μ/摩擦係数)が高いしタイヤのグリップもあるから、足回りにかかるストレスが強くなるはずで、サスペンションアームやハブボルトも心配です」

「アメリカやオーストラリアからのパーツの取り寄せも簡単ではなかったですけど、なるべくいろいろなパーツの準備はしてきました。とはいえ、チームの意識としては“壊しては直し”の繰り返しで、次のレースへ向けて少しずつ壊れないようにして、強いクルマにしていくことを重視しています。今回も含め、その実験の繰り返しかなと思っています」

 決勝が始まると、マスタングは序盤こそ安定した周回を続けた。ドライバー陣はエンジン回転数を抑え、縁石を踏まず、車体に負荷をかけない走りを徹底した。シフト操作はHパターンではあるものの、自動で回転数を調整するオートブリッピング機能があり、ブレーキもABSが効くとのことで「意外と現代的な面もあるんです(笑)」と奥村代表。

 ピット作業時もタイヤ交換をする際には逐次足回りの確認を徹底し、必ずトルクレンチでのボルト締結も行う。急がず確実に次のスティントへ移行する作業に終始していた。それでも、スタートから8時間が過ぎたあたりで状況が一変。車体後方から異音が発生し、マシンはガレージに収められた。

「デフが壊れてしまいました。鈴鹿からの課題だった部分や、懸念していた部品は問題なかったのに、想定外のところが音を上げてしまいました」

 ここでチームは完走を最優先に判断し、マスタングは長時間の“お昼寝作戦”へ。ピットガレージでジャッキにかけられ、長い休息に入ったが、奥村代表はリタイアを選択しなかった。それは、会場に集まっていたマスタングのオーナーたちの存在があったからだった。

「土曜日のデモランでは、69台もマスタングのオーナーが集まって、声援を送ってくれました。あれがなかったらリタイアを選んでいたかもしれない。集まってくれた彼らのためにも、少しでも最後まで走る姿を見せたいと思いました」

 迎えたレース終盤。残り30分を切ったタイミングでBRP★HOJUST MUSTANG DHRは最終スティントへ向けて走行を再開。奥村代表自身がステアリングを握り、ラストスティントを走り切ってチェッカーフラッグを受けた。

「走ってチェッカーは受けましたけど、全然無事じゃなかったですよ(笑)。もうクルマの後ろから、いつ吹っ飛ぶかと思うくらいすごい音がしていました」と最終スティントの車内を表現する奥村代表。

「デフの中身はたぶん砕け散る寸前で。僕らは競争相手がいない分、とにかく1周でも多く走れるように丁寧に走っていたのですが、ギリギリ30分もつかどうか、という状態だったんだと思います」

 さらに、フィニッシュ直前に降り始めた雨も、結果的に車体への負荷を軽減する追い風となった。

「僕たちにとっては恵みの雨だったかもしれない。路面が濡れてペースも落ちるし、駆動系の負担も軽くなったかもしれないので、もしかしたら雨のおかげもあってデフが耐えてくれたのかなと思います」

 それでも250号車はレース前半で滞りなく周回を重ねていった結果、最終的に210周を走破し、総合54位でチェッカーを受けた。走行時間は約8時間にわたり、チームにとっては大きな収穫となった。

「8時間も走れたということは、今後の3〜5時間のレースでは心配いらないということです。今回起きた細かいトラブルも解決できるものが多かったですし、経験したすべてが良いデータになったと思います。来年の24時間レースに向けて、折り返し地点に来たと思いたいですね」

 最後に奥村代表は「こうしてトラブルを洗い出しながら、1年間をかけてまずは強いクルマを作りたい。それから速さの追求に移りたいと思っています。今回はTCR(19号車BRP★NUTEC 制動屋 CUPRA TCR)も含めて揃って表彰台に立つことができたので、ホッとしています。マスタングはオーナーさんたちの応援もあって、前向きに終われました。本当に感謝しています」と話し、フォード・マスタングで臨んだ初の富士24時間レースを締めくくった。

[オートスポーツweb 2026年06月11日]

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定