パルクフェルメで中嶋一貴チームディレクターと握手をかわす小林可夢偉 6月13〜14日にフランスのサルト・サーキットで行われたWEC世界耐久選手権第3戦ル・マン24時間レースは、7号車トヨタTR010ハイブリッド(トヨタ・レーシング)のマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組が、14番グリッドスタートから大逆転で総合優勝を果たした。
24時間レースが始まって30分で、他陣営とは異なる早めのルーティンピットを選択。以降、セーフティカーの妙などもあり日曜朝から僚友8号車とともにトップ争いに加わったが、7号車には序盤に不運なパンクチャー、さらには可夢偉が後述するようなトラブルも発生しており、さまざまな困難に打ち勝っての総合優勝となった。
チーム代表も兼ねる可夢偉は、これが2021年以来、個人として2度目のル・マン制覇。ウイニングランでは感極まった様子も見せた可夢偉に、記者会見直後のミックスゾーンで話を聞いた。
■日曜の快走は“イケイケモード”
可夢偉:長かったです。本当に、結構レース中にいろいろあったので、その流れで今ここにいるのが、ちょっと信じられないというのが本音です。
──ピットシークエンスをオフセットする戦略は、当初から予定していた?
可夢偉:僕はもう、(チーム/エンジニアに)任せてました。8号車(のドライバー)は結構細かく言うんですけど、僕らはもう好きなようにやってくれ、って。だから突然そういう作戦になって、「あ、そうなんだ?」と。
ペースも終始悪くなかったんですけど、僕が1回目に乗っている途中から、ドライブシャフト(のセンサー)が壊れて、バックアップモードで全然出力を出せないまま、残りをずっと走ることになってしまったんですよ。それで一時期はもう、直線が4〜5km/h遅くて「終わった」と思ってたんですけど、走っていたらだんだんと、ちょっとだけ戻ってきて。それでも2km/hくらい遅いんですけど、まさかその状態で勝てるとは思わなかった。
──とくに日曜に入ってからは力強いペースに見えました。
可夢偉:いや、それはいろいろと守りに入っていたのを、もう残りの時間もないし、「そろそろ行こう!」っていう“イケイケモード”に変えたので。それまではちゃんとクルマをセーブしながらの戦いをしていたんですけど。
──今季はマシンがTR010にアップデートされましたが、ル・マンの決勝でも乗りやすいクルマになっていましたか?
可夢偉:もちろん、乗りやすいクルマだけど、ただちょっと直線が全体的に遅かったというは……本来なら、もっと後方に落ちても上がっていけるようなクルマを作りたかった。ちょっとそこには達しなかったという点は、反省でもあるなと思って。ここから何かできるわけではないけど、コーナリングは充分速いと思うので、システム的にも、もっとうまく扱えるようなクルマをこれから作っていかないといけないなと思っています。
■2台を生き残らせた“チーム力”
──前回の優勝時は、最終スティントのプレッシャーがすごかった、と。今回もチェッカードライバーでした。
可夢偉:まぁ正直、あのときからデイトナ(24時間)とかでも最終スティントをだいたい僕がやってきているので、そういう意味ではあの時よりはかなり慣れてきたかな、というのが本音です。だから前回よりは気楽に最終スティント行ったんですけど、今までも勝てそうで勝てなかったという例があるので、本当に最後の最後まで気を抜かず、慎重にクルマを持って帰るということだけに集中しました。
──前回勝ったときは2ラップ差をつけての勝利でしたが。
可夢偉:そう、今回はまったくギャップがないので、「大丈夫か?」とか思いながら、不運なトラフィックが来ないか、とかいろいろ考えながら走ってました。
──ウイニングランではヘルメットの上から涙をぬぐうような仕草も。
可夢偉:うん、「やっと勝てたぁ」と思って。なかなか勝てなかったので。
──勝因を挙げるとすれば?
可夢偉:それはもう、チーム力でしょう。ドライバーもそうだし、チーム力で。やっぱり他のメーカーを見ても、2台がこんな普通になにもなく上位にいるメーカーはないじゃないですか。BMWも、フェラーリも1台は脱落しているし。やっぱりこうやって、2台を生き残らせるっていうのはかなり大変なんですよね。それをできているのは、もちろんドライバーだし、チームだし、チーム力があるから、ときには不運もあったりするけども、それでも走りきってチェッカーを受けることができるんですよね。
──前回の優勝はチーム代表になる前。今回はチーム代表兼任のドライバーとして初優勝し、もう1台の8号車も3位に入ったことについては?
可夢偉:もちろん、僕ひとりの力ではなく、みんなの協力があってのことだし、正直僕は半分ドライバーもやっているから、みんなが気を使いながらやってくれている部分もあって。みんながそれぞれ責任を持って、それぞれが考えて、「結果を出すためには・強いチームを作るためにはどうしたらいいか」と考えた結果だと思います。
僕は結構「こうしたい」と思うことをムチャ振りするんですけど、そのムチャ振りを実現してくれようとしたりとかも含め、技術だけではない部分で、チームづくりってかなり幅広いんですよね。
そこをちゃんとできたのは良かったし、僕としては「チーム代表やりながらドライバーやって本当に勝てるのか?」と思う部分もあったけど、やっと勝てて、ちょっとホッとした部分もあります。
[オートスポーツweb 2026年06月15日]