
スタンフォード大・佐々木麟太郎の行方 前編
【他のMLBドラフト候補に引けを取らないパワー】
チェイスフィールドがどよめいたシーンは壮観だった。普段はアリゾナ・ダイアモンドバックスが本拠地として使用しているスタジアムで、佐々木麟太郎が豪快なフルスイングで捉えた打球が次々と右翼、右中間のスタンドに吸い込まれていく。そのうちの1本はこの日、全参加者のなかで3位の飛距離458.1フィート(約139.6m)を、打球速度は同4位の115.4マイル(約186キロ)を記録した。
これは、6月23日(現地時間。以下同)からアリゾナで行なわれた「2026年MLBドラフト・コンバイン」でのひと幕である。ドラフト候補の有望株が集まるショーケース的な舞台で、スタンフォード大での2年目、全54試合で16本塁打、47打点、OPS.952を記録したスラッガーの長打力は際立っていた。
佐々木のパワーは木製バットでも健在で、アメリカでも破格であることは明白。打撃のパフォーマンスを終えたあとの表情や言葉からは、確かな手応えを得ていることが感じられた。
「これまでの人生のなかで、本当に素晴らしい経験をさせてもらっています。ただただ光栄だと思いますし、自分がやらせてもらっていること、やるべきことを一日一日こなすだけだと思っています」
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ドラフト・コンバインには、元メジャーリーガーやコーチ、各球団の編成部門メンバー、スカウトディレクター、球団関係者たちが集まり、学生たちの打撃や守備の試技に目を光らせる。佐々木は前述のとおり柵越えを連発し、一塁、三塁の守備もそつなくこなした。
「特に長所の部分をしっかり見てもらえるように取り組んだつもりですし、やれることはやりきったと思います」という言葉どおり、持ち前の打力をアピールできたという思いがあったのだろう。囲み取材で見せた笑顔はいつもどおり、いや、いつも以上に晴れやかだった。
【守備面では課題も】
佐々木は昨年のNPBドラフトでソフトバンクから1位指名を受けたが、これから重要な決断の季節を迎えようとしている。
ドラフト・コンバインに招待されたということは、7月11、12日に行なわれるMLBドラフトでも指名候補に挙がっているということ。一方で、スタンフォード大に残り、3年生としてシーズンを過ごすという選択肢もある。21歳という若さで3つのオプションを持つのは、花巻東高校時代から長距離砲として評価が高かった佐々木と、同じく昨年にオリックスから6位指名されたジョージア大の石川ケニーくらいだろう。
佐々木はMLBドラフト後に進路を決めると明かしているが、現時点でMLBのチーム、スカウトからどのように評価されているのかを推し量るのは難しい。ただ、打球の飛距離はアメリカでも通用してお釣りがくるほど。スタンフォード大の先輩であり、メジャー通算91勝を挙げた日系アメリカ人の元メジャーリーガー、ジェレミー・ガスリーがそのパワーを見て唖然としていたのが象徴的だった。
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「私は今季、スタンフォード大で麟太郎が金属バットを使って打つ姿を見ていた。今回、それが木製バットでも再現されるのを見て本当に驚いた。彼は金属バットより、むしろ木のバットのほうがパワーを出せているんじゃないかと思うくらいだ」
一方、今季を通じて守備、走塁といった面に疑問を呈する声は少なからず聞こえてきていた。ドラフトでは投手、遊撃手、中堅手といったディフェンス面でカギを握るポジションの選手が高評価される。佐々木は守備位置が一塁限定になりそうで、指名されるとしても、上位で名前が呼ばれる可能性は高いとは言えない。
ただ、近年のメジャーでは選手の性格面まで重視されてチーム作りがなされている印象がある。その点で、聡明で謙虚な佐々木は申し分なく、伸びしろもかなり残しているはずだ。長所を保ちながら、課題となっている部分を少しずつアジャストしていけば未来は明るい。
【殿堂入りのスラッガーも称賛】
現役時代に通算612本塁打を放ってアメリカ野球殿堂入りしたスラッガーで、タイプ的には佐々木とかぶるジム・トーミはドラフト・コンバインでこう述べた。
「(佐々木の)パワーは素晴らしいし、いい打球をたくさん飛ばしていた。本当に美しいスイングの持ち主だ。(守備、走塁に関しては)まだ十分に見ていないのでコメントするのは難しいが、どんな選手であっても改善できる部分はある。そして、それぞれの選手が持つ強みを伸ばしていくことが重要だと思う。彼の場合、打撃力が大きな強みであることは間違いないね」
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最終的には、稀有な長打力に加え、性格のよさや素直さといった佐々木のキャラクター面をメジャーの各チームがどう見るかがポイントになるのかもしれない。場合によっては、3、4巡目くらいの指名も可能性はあるだろう。
しかし繰り返しになるが、想定以上の順位で指名を受けたからといって、佐々木がアメリカでプロキャリアをスタートさせると決まったわけではない。いったいどのように評価され、どんな説明を受けるのか。聡明なホームランアーティストはどういった部分を重視して入団交渉に臨み、どのような結論を出すのか。
佐々木本人とその関係者は、物事を長い視点で見ている印象があり、方向性を予想するのは難しい。だからこそ、まもなく展開されるシナリオに興味をそそられる。
佐々木は21歳にして"人生"という言葉をよく使うが、その重要な分岐点がやってくる。そこで出す結論から、今の佐々木が重視しているものがわかりやすい形で見えてくるに違いない。
(後編:米記者が佐々木麟太郎のMLBドラフト指名順位を予想「彼はかなりいい一塁手になれる可能性がある」>>)
