アレックス・リベラス/マルコ・ソーレンセン/ロマン・デ・アンジェリス組の009号車アストンマーティン・ヴァルキリー(アストンマーティンTHORチーム) 2026ル・マン24時間レース ハイパーカーとGT3という特性の異なるふたつのカテゴリーを跨いで活躍するアストンマーティンのワークスドライバー、マルコ・ソーレンセン。過酷な連戦の裏側や、あえて“激戦区”であるGT3レースに参戦し続ける真意とは。プロドライバーとしての哲学をスパ24時間の現場で聞いた。
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⎯⎯ル・マン24時間からスパ24時間までは2週間空きましたが、休養を取ることができましたか?
マルコ・ソーレンセン(MS)「自宅で1週間ほど完全に休養する必要があった。なぜなら、ル・マンでは現地にほぼ2週間滞在するため、他の24時間レースよりも体や精神への負担が大きくなるんだ」
「ル・マンでは走行がなくとも毎日何かしらの予定があり、レースが終わると普段のどのレースよりも確実に疲労がたまっている。しかも、疲労が1〜2日続くだけではなく、3〜4日間も。場合によってはほとんど病気になったかのような疲労感が続くこともあるんだ」
「今はもうすっかりと回復して、スパ24時間へ臨む準備はしっかりできているよ。ル・マンはハイパーカー、スパはGT3マシンをドライブする。これらのレースはまったく異なるふたつの挑戦だけど、マシンが変わるたびに気分を一新させられるのは非常に良いことだと思っている」
⎯⎯ハイパーカーのドライバーとして、GT3レースに参戦し続けることがあなたにとってなぜ重要なのでしょうか?
MS「GT3レースも大好きだということもひとつにあるのだけれど、ハイパーカーに参戦していてもGTレースの感覚を決して忘れてはいけないと思うんだ。なぜなら、GTレースのコンペティションは非常に激しいうえ、非常に優秀なドライバーがたくさんいる。そのような非常にハイレベルで競争の激しいレースに身を置き続け、その感覚を保つというのはプロのドライバーとして非常に大切なことなんだ」
「最近はGTレースにあまり出場していなかったので、どうしてもその感覚が鈍るし、スパへ来てみて少し不利な状況にあると感じている。もしも2年間GTレースに出場しないとしたら、もっと自身のコンディションが鈍ると思う。それはとても良くないことだ」
「プロのドライバーとして、もちろん前へ出たい気持ちは充分にある。最近はGTレースに出ていないけれど、つねに向上しなければならないのは当然のことで、スパ24時間レースへふたたび参戦することは、僕にとって非常に良い挑戦だと思う」
「チームメイト(ニッキー・ティームとマティア・ドルディ)のふたりはGTの名手で、とても速い。彼らのようなチームメイトがいることは、僕が彼らよりも劣っていることが明白になってしまう。だが、それも良いことなんだ」
「僕は彼らのタイムに必死に追い付こうと努力している。コンスタントにGT3カーに乗っていたのであれば、ドライビングだってもう少し楽な方法があるのかもしれないけど、いまの僕はまず、それを見付けなければならない。だからこそGTの厳しいレースに身を置くことは、非常に良いことだと思っている」
⎯⎯一部のハイパーカードライバーは、GT3レース(カスタマーレーシング)を一切望んでいないですよね。
MS「そうだね、何人かのドライバーでそのような意思を持っているのは知っているよ。でも、僕はそれに賛成できない」
「ハイパーカーのドライバーの中には、乗りたいと密かに思っていてもGTのシートのオファーがまったく来ない人もいると思う。WECの最高峰クラスのハイパーカーに乗っているからといって、GTのシートが待っているとは限らないんだ」
「GTカーレースに参戦するには、まずはGTマシンへの理解や経験が必要となってくる。ハイパーカーやフォーミュラしか経験のないドライバーが、GTレースに参戦して速さを示すことは難しいし、決して容易なことではないはずだ。僕にとっては双方のクラスが互いに良いプラクティスになり、相乗効果を得ていると信じている」
⎯⎯あなたのドライブするアストンマーティンのハイパーカーについて少しお話を聞かせてください。イモラ、スパ、そしてル・マンの序盤3戦を終えましたが、今シーズンのハイパーカーのフィールドをどう見ていますか?
MS「確かにイモラは厳しいレースだったけれど、事前に厳しいレースになるだろうことは分かっていた。スパでは表彰台に上がるべきだったと思う」
「実際、マシンにはそれだけのペースがあったのだが、残念ながらレース終盤に小さなクラッシュがあり、貴重なポイントを失ってしまった。ル・マンは少し難しいレースで、序盤に技術的な問題があり、周回遅れにならないように必死で戦わなければならず、結果的に後方に沈んでしまった」
「戦い方とマシンのペースに合わず、外から見ても適切な状況ではなかったと思う。もっと良い結果を出せたはずだ」
⎯⎯アストンマーティンは今年、より大きな可能性を示しましたが、ル・マンでハイパーポールを突破した時、どのような気持ちでしたか?
MS「昨年は最初のハイパーポール(H1)に進出できただけで満足していた。一方、今年はかなり楽に最初のハイパーポールに進出できたので、突然2回目のハイパーポール(H2)進出が目標になった」
「そして、それも僕たちのクルマが達成できたので、皆とても喜んでいたと思う。しかし、最終的にはレースでもう少し良い結果も欲しかったのが本音だ。もし、いくつかの技術的な問題が起きなければ、ル・マンでもっとポイントを獲得できたはずだ」
⎯⎯昨年からの大きな飛躍の要因はなんでしょうか。例えば、チームの組織変更や車両開発など、具体的にどのようなことが行われたのでしょうか?
MS「昨年は明らかに、マシン自体やその他すべてのプログラムにおいて、ル・マンが初めてだったので、当然ながら準備不足だった。走ったことのないコースで準備を完璧にすることは不可能だからね」
「一方、今年はレースに向けて何をすべきかすでに分かっていたし、昨年のル・マンの後、マシンを改良していたので、その点でも良くなっていた。しかし、レースに勝つにはまだ長い道のりがあり、やるべきことが山積みだ」
「チームとしてもドライバーとしても修正しなければならない部分がたくさんある。勝つためには、パッケージ全体を改良し続けなければならない。なぜなら、ほとんどのドライバーはレースに勝ちたいと思っていて、ただ完走することだけを望んでいるわけではないためだ。レースが近づくにつれて、良い結果が出せるようになると信じている」
⎯⎯残り5戦あります。今シーズンの目標を教えてください。
MS「ヴァルキリーで表彰台を獲得することに集中する必要があると思う。今のプログラムはそれに値するレベルに達していると思うので、表彰台に上がることができれば、それはすでに大きな一歩と言えるだろう」
「シーズン終盤にレースで優勝できれば、現状で充分な成果を上げたことになるが、今後数年間は改善を続けていく必要がある」
⎯⎯日本のファンにとってアストンマーティンTHORチームの実力は未だに謎に包まれています。あなたのチームの状況について、ぜひ教えてください。チームの雰囲気はどうですか?
MS「とてもイギリス的なチームだ。『いかにも』と言えるくらいにね。彼らがデンマーク的になりすぎたら、止めなければならない(笑)」
MS「もちろん昨年は誰もが初めての経験だったが、今年はチームとしてずっと良い仕事をしていると思うし、全員がよりチームプレーヤーになっていると言える。だから、チームをひとつにまとめ、チームとともに前進するために良い仕事をしていると思う」
「もちろん、ル・マンで優勝するチームになるまでには、まだ長い道のりがあるが、それが僕たちの目指すところであり、引き続き努力を続けていくよ」
⎯⎯アストンマーティンのF1チームを見るとイギリス人、日本人などさまざまな人がいますね。
MS「そうかもしれない。実はよく分かっていないのだが、ホンダが関わっているため、F1チームは主にイギリス人と日本人の混合チームになっている。彼らと僕たちのチームはまったく異なる組織であり、共通点はほとんどない」
「でも、日本に行くのは好きだよ。シーズンを通して一番好きなレースのひとつだ。僕にとって富士はいつも良い場所だと言える。実際に何度もクラス優勝をしているからね」
⎯⎯昨年のWEC富士も表彰台に上がれそうでした。
MS「まさにそのとおりだ。本当にそうなるべきだった。今年はうまくいくように願っているよ」
「基本的に、富士スピードウェイは僕たちのクルマに合っていると思う。セクター3は縁石が多くて狭いので、最初はそうは思わなかったのだが、実際にはヴァルキリーにとても合っている。だから富士でのレースを楽しみにしているよ」
[オートスポーツweb 2026年07月09日]