限定公開( 1 )

梅雨入りや台風接近の影響もあり、関東地方の6月はパッとしない天気が続いた。その代わり気温もそれほど上がなかったが、7月に入ると途端にいつもの暑さと向き合うこととなった。自治体による熱中症アラート発令も毎日のように発されており、昨今は小中学校でも下校時には日傘の使用を容認しているところもあるようだ。
ヨーロッパも酷暑だと聞くが、日本は比較的エアコンの普及率が高いため、室内や施設内は快適に過ごせる。一方どうにもならないのが、屋外だ。屋外仕事の方は、様々な暑さ対策をされていることと思う。一番多いのは、「空調服」に代表されるファン付きのジャケットやベストだ。昨今は宅配便業者も、制服としてデザインされた空調服を着用していらっしゃる。
一方、もっと強力にガッツリ冷える水冷ベストとして昨年デビューしたのが、Shiftall(シフトール)の「ChillerX」である。ペルチェ素子を使って水を冷却し、それをベスト内に循環させる仕組みだ。言うなれば水冷PCの仕組みそのままを着ているような状態である。昨年、テストした限りでは、常時上半身が冷却されるため、夏という季節を無視するかのような冷却性能を実感できた。
そして今年6月、ChillerXのアップデート版ともいえるProモデル、「ChillerX Pro」が登場した。性能は昨年のChillerXの1.6倍にアップしており、屋外作業のプロ向け仕様となっている。今回も実機をお借りすることができたので、実際に試してみた。
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●冷却ユニットを新設計
ChillerXとChillerX Proは、ベスト部の冷却シートは共通である。大きく設計変更されたのは、冷却ユニットだ。前作は「よく冷える」と反響が高かった一方、改善要求も寄せられた。1つは、「排熱フロー」である。
前作は背面吸気、底面排気していたため、背中を何かにぺったりつけたり、寄りかかったりすることができなかった。また排熱が真下なので、腰のあたりが熱いという問題があった。筆者のような腰痛持ちは腰を冷やさなくていいのだが、少なくとも排熱が体に当たるというのは、せっかく冷却した熱を体に戻すことになってしまうので、よろしくない。
今回改良されたユニットは、底面吸気、上方斜め45度に排気に変更された。これにより、背中をぺったりどこかにくっつけても機能する。また排熱が体に当たらないよう工夫された。
2つめの課題は、「バッテリー交換の手間」である。今回は4連ヒートパイプと、高さが約4倍となる大型ヒートシンクを採用、さらには直径6cmのデュアルファンとしたことで、排熱効率をアップした。これにより、前作は2万5000mAhバッテリーで「Maxモード」が約1時間18分、「Ecoモード」は約2時間30分であったところ、今回は2万mAhバッテリーでMaxモード約1時間24分、Ecoモード約3時間を実現した。Maxモードは50W、Ecoモードは25Wで動作する。
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また前作では、酷暑環境下では冷えを感じにくいという課題もあった。これは熱によるセーフティ回路作動が原因だったことが分かった。そこで今回はファンで電子基板全体を冷却する設計としたことで、セーフティ回路による性能ダウンを抑制した。
また動作音に関しても、冷却効率を上げるにはファンの風量を増やす必要があるが、大型ファンを高速で回すのではなく、ファンを2つ使って風量を稼ぐという方法で抑制した。とはいえ、音の大半は水を循環させるポンプ音なので、ものすごく静かになったというわけではない。
またこれは前モデルから対応しているが、延長チューブを用いることで、冷却ユニットをベストから分離できるようになっている。椅子に座るときに腰にユニットがあるのが邪魔な場合には、延長して横や下に置ける。また室内で使用する場合には、バッテリーからではなくUSB Type-C対応のACアダプターや、大型ポータブルバッテリーなどにつなぐことで、半永久的に冷却が可能になっている。もちろんこの場合は「ひも付き」になってしまうので、トイレなどに行く際には脱ぐ必要がある。
●実際に屋外で使ってみる
せっかく実機もお借りしているので、屋外で試してみた。当日筆者の住む地域では、天気は晴れたり曇ったりしていたが、気温は35℃以上を記録していた。この状態で40分のウォーキングを実行した。医師からはあと3kg痩せるように指示されており、雨が降ろうが風が吹こうがウォーキングを続けている。ウソ、雨の日は休んでいる。
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ウォーキング開始から15分もすると、体の中で温度差を感じられるようになる。ベストを装着して最も冷感を感じやすかったのが、両脇の下と胸である。脇の下は血管が多いため、熱を下げるためにここを冷やすという措置がとられることも多い。このため、体温が上昇していく感じはない。
背中も結構な面積で冷却面があるが、冷感は感じにくかった。意外だったのは、足が意外に汗をかいていないという点である。これは人にもよるのかもしれないが、上半身が冷えれば、足は特に冷やさなくても問題ないようだった。
もう1つ予想外だったのは、頭は特に関係ないということである。つまり頭部まで冷却効果が得られるわけではなく、それなりに暑いし汗をかく。屋外作業者の中には、制帽やヘルメットの着用が義務づけられているかたも多いことだろう。頭部の冷却は、別の手段が必要だ。
今回は「作業」というよりはただひたすら歩いただけだが、こうした単純運動の場合、脇の下にある冷却シートと皮膚がこすれて、若干の痛みを感じた。ただ何らかの作業をしていれば、ただひたすら腕を下げて振っているという状態にはならないので、あまり問題にはならないだろう。
通常ならばとても耐えられない気温のなか、無事ウォーキングを終えることができた。家に帰って脱いでみると、意外にシャツの背中はかなり濡れていた。体は汗をかくほどの暑さは感じなかったが、かなりの面積がベストと密着しているので、じんわり汗は出ているのだろう。あるいは温度差による結露も多少はあったかもしれない。
●家庭内で試してみる
日本の家庭はかなりエアコンが普及している。とはいえ、あまり冷え冷えにしていると電気代が心配になるところだ。この場合は、エアコンの温度は高めに設定し、それでも熱い場合は何らかの冷却グッズを併用するべきである。今回はエアコンの温度を28℃に設定し、室内で原稿執筆の際にChillerX Proを試してみた。
ただ、そのままだと、背中にある冷却ユニットが椅子の背もたれに当たる。今回は吸気・排気方向が工夫されているので、背もたれにぴったりくっつけても問題ないが、背もたれに身を預けることはできない。
そこで延長チューブを使って、ベストと冷却ユニットを分けて使用した。延長チューブは別売となっており、最初にチューブを断熱パイプ内に通す必要がある。
これがまた、全然通せない。パイプと断熱材の摩擦が大きいので、半分ぐらいから先が全然入らないのだ。説明書にはパイプを回しながら入れるといいと書いてあるが、パイプをねじるのにかなり力がいる。ようやく1本は通せたが、もう1本通すのはもはや人類には不可能なのではという疑念が生まれるほどだった。
これ、最初から通してある状態で売ってくれないだろうか。あとプラス1000円ぐらいなら出す。もしくはもうちょっと中の穴が大きくても、断熱性能は大して変わらないのではないだろうか。
とにかく指がクタクタになりながらどうにか2本のチューブを完成させ、追加で水を補充して冷却ユニットを独立させてみた。
チューブの長さは椅子に座った状態で床に置けるほどには長くないので、サイドテーブルみたいなものが横にあるといいだろう。電源はACアダプターから取るので、バッテリーは不要である。静かな室内では「バー……」というポンプ音が聞こえるが、ほかに人がいなければ迷惑にはならない。
断熱材とチューブが背中を通るので多少ゴリゴリするが、背骨に沿ってチューブをさばいていけば、それほど違和感はない。動作開始から1分ぐらいでヒエヒエになる。エアコンとの併用では、Ecoモードで十分だ。重機作業などもこの方法で、座席に座った状態で使用できるはずだ。
現在着衣型の冷却商品は、冷却物質を体に当てる接触式、ファンで服内に風を通す空冷式、本機のように水を循環させる水冷式の3種類に分かれる。手軽なのは接触式で、電源不要で装着するだけなので、子供用、ペット用などへの展開が見られる。温度は一定に保たれるものの、服の上からはあまり冷たさが感じられないという弱点がある。
空冷式は、基本的に汗をかいた後、それを気化させることで温度を下げるので、汗をかくことが前提になる。汗の臭いが気になる人には、空冷式はあまりお勧めできない。
一方水冷式は、冷却ユニットが必要なために大掛かりではあるが、汗とは関係なく温度を一定に保つので、過酷な暑さにも対応できるのがメリットだ。
着衣型冷却製品は、体は冷えるものの、頭部の保護は欠かせない。また装着物が増えることになるので、それが作業時のハンデになることもある。
冷却グッズの性能を過信せず、適切な休息や水分補給といったことも忘れないようにしたい。
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