「ジャムは瓶」の常識を変えた アヲハタ「ボトル型」が3年で3倍売れた理由

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2026年07月28日 06:20  ITmedia ビジネスオンライン

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ボトル型のジャムが人気、なぜ?

 「ジャムといえば瓶」というイメージは根強い。だが、瓶ではないボトルタイプのジャム(※)が人気を呼んでいる。アヲハタ(広島県竹原市)が2022年8月に発売した「Spoon Free(以下、スプーンフリー)」だ。出荷額は発売から3年間で約3倍に伸び、現在も成長を続けている。


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(※)商品分類は「フルーツスプレッド」だが、本記事では便宜上「ジャム」と表記。


 スプーンフリーは、片手で開け閉めできるボトル入りのジャムだ。スプーンを使わず、そのままパンにかけられる。甘さを控えつつ、果実の食感が残るよう果肉の大きさを調整した。いちご、オレンジ、ブルーベリー、トロピカル、りんご、ぶどうの6種類(参考小売価格365円〜)を展開している。


 なぜ、瓶ではない製品を開発したのか。背景には、ジャム市場の縮小がある。


 総務省の家計調査(2人以上の世帯)を見ると、世帯当たりの年間購入数量は、2000年と2024年を比べると約2割減った。加えて、購入層の高齢化も進む。同社マーケティング本部の中川理那氏は、「メインの購入層は50代以上で、特に70代が多い。ユーザーの高齢化が課題だった」と説明する。


 若年層がジャムを敬遠する理由の一つが、瓶だった。同社の「ジャム・スプレッドに関する定期調査」で、買わなくなった層に理由を尋ねると「瓶が使いづらい」が上位に入り、若い人ほどその傾向が強かったという。「重くて扱いにくい」「スプーンが必要で洗い物が増える」といった声が寄せられた。


 共働き世帯が増え、朝の支度に時間をかけられない家庭では、こうした手間が敬遠されやすい。そこで投入したのが、スプーンフリーだった。


●瓶の代わりを数年かけて探した


 発売の数年前から構想が動き出し、アヲハタとしては異例の長い開発期間を要した。それほど容器を変えるのは簡単ではなかった。紙やチューブなど複数の案を検討した末、風味を保てるプラスチックボトルに落ち着いた。


 当初、社内には慎重論もあったという。「ジャムといえば瓶」という思いは社員たちの中でも強く、瓶ではない商品が受け入れられるのか、という懸念の声もあった。その中で開発を後押ししたのは、定期調査で見えた「瓶が使いづらい」という声だった。


 「ジャムは食べたいが瓶が面倒、というニーズが見えていた。その悩みを解決してこそジャムメーカーだと社内で議論を重ねた」とマーケティング本部の松本翔吾氏は振り返る。


 開発にあたり、中身も作り替える必要があった。瓶入りのジャムは、ごろっとした大きな果肉が特徴だが、出し口の狭いボトルでは果肉が大きいと詰まってしまう。小さくしすぎるとソースのようになり、果肉感が薄れる。ミリ単位の調整を重ね、使いやすさとアヲハタらしい果肉感の両立を目指した。


 「さよならスプーン。」というコピーを採用し、その特徴や価値を商品名にも込めた。フレーバー展開にも狙いがあり、いちご、オレンジ、ブルーベリーの3種類からスタートした後は、パン以外の用途を広げる「トロピカル」、子ども向けの「りんご」「ぶどう」など、狙いを明確にしてラインアップを拡充してきた。最も人気が高いのは、瓶入りの商品と同じく、「いちご」だという。


 果肉を大きくできない一方で、味が全体に広がりやすいのがボトルタイプの強みだ。パンだけでなく、ヨーグルトにも混ぜやすい点が評価された。


●買い手の半数が20〜40代


 売上高は非公開だが、発売以来、売れ行きは好調に推移しており、4年目に入った今も成長が続いている。


 アヲハタによると、ジャムカテゴリー全体では、購入者の中心は50代以上だ。一方、スプーンフリーは20〜40代が購入者の約半数を占める。従来の瓶ジャムでは20〜40代は2〜3割程度とみられ、若い世代の比率が際立って高い。「想定以上に若い世代の方に使っていただいている」と中川氏は手応えを語る。


 購入者の多くは、これまで瓶ジャムを買ってこなかった新規客でもある。瓶からの乗り換えよりも、ジャムから遠ざかっていた層を新たに取り込んでいるという。


 その中心にいるのが、子育て世帯だ。小さな子どもでも自分でボトルからジャムを出して食べることができ、その間に親は家事を進められる。こうした使い勝手が評価され、2024年には「日本子育て支援大賞2024」を受賞した。


 また、従来製品との相乗効果も生まれている。瓶タイプとスプーンフリーの両方を買い、使い分ける家庭も多い。大人は果肉感のある瓶、子どもにはスプーンフリー。瓶はいつものトーストに、スプーンフリーはヨーグルトや料理に使うなど、目的に応じて選び分けている。


 「若いファミリーでは瓶ジャムに接したことがない家庭もある」と松本氏は指摘する。瓶だと面倒で敬遠していた層も、ボトルなら手に取りやすい。若い世代がジャムに触れる入り口となり、縮む市場に新たな客を呼び込む。その成果が数字にも表れ始めている。


●好調でも、認知は「3合目」


 スプーンフリーが支持を集めた理由は、使い勝手の良さにある。スプーン不要で洗い物が減り、垂れにくい。握力が弱くなり、瓶の蓋(ふた)を開けるのに苦労していた高齢者からも、片手で簡単に開け閉めでき、扱いやすいと支持されている。


 一方で、店頭での認知には課題を残す。市場では「ジャムは瓶」というイメージがいまだに根強く、店頭で商品を見た人が「これは何だろう」と戸惑い、手に取ってもらえないことがある。使い切りにくさや、残量の分かりにくさを指摘する声もある。


 アヲハタの主力商品である「55シリーズ」や「まるごと果実」と比べると、スプーンフリーの認知率はまだ低く、目標までの到達度は「3合目」だという。第3の柱と呼ぶには、まだ時間がかかりそうだ。


 それでも、容器を変えるというアプローチは、市場にも影響を与えている。他のメーカーもボトルタイプを投入し、縮小が続く市場で新たな客との接点が生まれている。


 松本氏が思い描く理想は、「平日の忙しい日はボトル、休日など時間に余裕があるとき、瓶で楽しんでもらう」という瓶とボトルの使い分けだ。縮小する市場で、ボトルタイプがどこまで市場の裾野を広げられるか。


(カワブチカズキ)



このニュースに関するつぶやき

  • 瓶型は不衛生になりやすい。衛生面最優先が良い。はちみつもそう。
    • イイネ!6
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