一般消費者が「空調服」と書いたら商標権侵害? 公式Xの注意喚起が波紋、弁理士の見解は

0

2026年07月31日 17:51  ITmedia NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia NEWS

写真

 ファン付きウェア「空調服」を展開する空調服社(東京都板橋区)の公式Xアカウントの投稿が議論を呼んでいる。同アカウントは7月27日、「空調服」は空調服社の登録商標だとして、一般名称の「ファン付きウェア」などを使うよう注意喚起。しかし投稿を巡り「一般消費者が使っても侵害になるのか」といった疑問や批判の声が相次ぎ、最終的に同社が謝罪するに至った。


【画像】株式会社空調服による注意喚起の投稿(出典:株式会社空調服の公式Xアカウントより、以下同)


 一方、一連の呼びかけについて、知的財産に詳しい栗原潔弁理士(テックバイザー国際特許商標事務所)は「商標権者が呼びかけを行うことは賢明」との見解を示している。


発端は飲食店のマナー投稿、「水を差すようで申し訳ないが」


 発端は、一部の飲食店が「(臭いが気になるから)お店の中では空調服の電源を切ってほしい」といった投稿をしていたことだった。空調服社は27日午前8時9分、同様の投稿を頻繁に見かけるとして「水を差すようで申し訳ございませんが、『空調服』は弊社の登録商標でございます」と説明。「#空調服は登録商標です」のハッシュタグを添え、一般名称のファン付きウェア、ファン付き作業服の使用を求めた。


 この投稿に対しX上では、「『空調服』の一般名詞化はむしろ喜ばしいことではないか」「やるべきは(臭いに関しての)マナーを広げることではないか」「一般消費者が使っても商標権侵害になるのか」など、疑問の声が相次いだ。


 同社は反応を受け、約5時間後に再び投稿し、「マナー問題とは切り離して、弊社商標のご案内をしてしまい、大変申し訳ございませんした(原文ママ)。配慮が全く足りておりませんでした」と謝罪。「いただきましたご意見をもとに、引き続き皆様に喜んでいただける製品づくりに努めてまいります」とした。


一度は登録認められず、知財高裁で覆った「空調服」


 「空調服」はもともと同社が作り出した製品だ。ただ、商標登録の経緯は簡単ではなかった。特許庁は当初、出願に対し「空気を調節する機能を備えた服」を表す記述的な商標だとして登録を認めなかった(拒絶査定)。不服審判でも判断は変わらなかった。


 転機は2021年。知財高裁が、長年の販売実績や報道、企業への導入、市場シェアなどから、需要者が「空調服」といえば空調服社側の商品と認識できるようになったと判断した。「使用による識別力」を認め、登録に至った経緯がある。


「なし崩し的に進んでしまう」──呼びかけの実効性は


 騒動を巻き起こした空調服社の投稿だが、栗原弁理士は今回の呼びかけを「企業のブランド管理としてきわめて正しい行為」と評価する。


 栗原弁理士によれば、商標が広く使われて有名になるのは企業として喜ばしい一方、あまりに一般的になると「特定企業の商標という認識」が薄れてしまい、他社が同じ名称を使っても差し止められなくなるという。例えば「正露丸」は大幸薬品の登録商標だが、裁判で普通名称と判断され、他社も名称を使用できるようになった。


 今回のような権利者側からの呼びかけの実効性について、栗原弁理士は「法的な強制力があるものではないが、まったく対応を取らなければ、普通名称化がなし崩し的に進んでしまう。商標権者が呼びかけを行うことは賢明」との見方を示した。


 一方で、飲食店や一般消費者がSNSなどで「空調服」と書くこと自体が商標権侵害になるわけではないという。「メディアとしては登録商標をあたかも普通名称のように使用することは避けるべき。一般消費者の場合は強制できるものではなく、登録商標であることは知っておいていただけるとうれしいという『お願い』レベルの話」(栗原弁理士)


次ページへ


株式会社空調服公式Xアカウントの投稿


株式会社空調服公式Xアカウントの投稿


謝罪を伝える投稿


}



    ニュース設定