日本のアニメがアフリカで人気の理由とは?エンタメ社会学者が語るアフリカ市場のリアル

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2026年08月03日 12:12  TBS NEWS DIG

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現在、エジプト、ナイジェリア、ケニア、南アフリカといったアフリカ各地で「4大コミコン」と呼ばれるポップカルチャーの総合イベントが開催され、その中でも日本のアニメコンテンツが高い人気を集めています。人口の爆発的な増加が見込まれるアフリカ市場において、現地の人々はどのように日本のアニメを受け止めているのでしょうか。実際に現地を訪れた中山さんが目撃したアフリカのエンタメ環境のリアルと、20〜30年先を見据えた日本企業のアプローチ方法について伺いました。

東京ビジネスハブ

TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターの野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。今回は2026年7月19日の配信「アフリカ市場に次々と進出する日本のアニメコンテンツ。2026年の動向とは?(中山淳雄)」 を抜粋してお届けします。

アフリカという「最後のフロンティア」とエンタメ市場の現在地

野村:今回は「アフリカと日本のアニメ」という、非常に興味深く意外性のあるキーワードです。まずはアフリカ全体のエンタメ市場について教えてください。そもそもアフリカのエンタメ市場とはどのようなものでしょうか。

中山:私は南アフリカの「ケープタウン・コミコン」というイベントに参加してきたのですが、私の解釈では、やはりアフリカは「最後のフロンティア」です。

私たちが想像し得る中で、中国の次は東南アジアが成熟し、その次はインドだと現在言われています。しかしその先を考えると、インドもある程度人口が限界に達し、20億人まではいかないだろうと言われています。現在、中国が約14億人、インドが約14億人、およびアフリカ大陸全体でも約14億人であり、人口規模がほぼ横並びです。その中でアフリカだけは、これから30億人、40億人まで増えるとも言われており、世界の人口の約3割をアフリカが占めるのではないかともされています。

経済規模で見ていくと、日本のGDPは600兆円ほどですよね。その4倍が中国ですが、日本とインドは現在同じくらいの規模です。日本は1億人、インドは14億人ですが、経済規模はともに約400兆円から500兆円です。そのインドと人口も経済規模も、アフリカ大陸全体を合算すると非常に近い、あるいは少し少ないくらいの規模になります。

そのため、私の中の世界の構図としては、アメリカや中国という日本の何倍もある巨大な市場を狙うのか、あるいは日本と同等のサイズであるイギリス、フランス、ドイツ、そこにインドやアフリカ大陸がある、というようなイメージを持っています。

成長率だけで見るとその中ではインドが最も良いのですが、まだ十分に成長しておらず、発展途上国や軍事独裁国家もありバラバラであるアフリカ大陸には、その「次の次」があるのではないかと考えられています。ちょうど2025年にアフリカ開発会議があったので、アフリカにもエンタメコンテンツをという動きが出てきました。

50年後といった長期的なスパンで見ると、実はものすごくエンタメが浸透するかもしれません。実際に現地のアフリカのユーザーは普通に日本のアニメを見ていました。歴史ある『ドラゴンボール』や『NARUTO』あたりかと思っていたら、2024年放送の『ダンダダン』が視聴されていたのです。

野村:新しい作品が浸透してるんですね。

中山:私がコミコンの会場に入った時に、一番最初に目にしたのは『ダンダダン』の「モモ」という女の子のキャラクターのコスプレをした人と、『葬送のフリーレン』のフリーレンのコスプレをした人でした。当たり前のように最新の作品がキャッチアップされているのです。

アメリカをしのぐアフリカの「コミコン」の熱気とは

野村:4大コミコンと呼ばれるポップカルチャーの総合イベントについてですが、これはどのようなものなのでしょうか。

中山:アニメエキスポやAFA(Anime Festival Asia)など様々なイベントがありますが、私はコミコンを、それぞれの国にどのアニメが浸透しているかを測る一種のリトマス試験紙のように捉えています。

私はこの10年から15年ほどエンタメの海外事業に携わっていますが、2010年代半ば頃から、ついにアニメが世界のすみずみにいきわたったと感じていました。2013年や2014年頃にまずブラジルで「ブラジルコミコン」のようなものが始まり、約20万人もの来場者を集めるようになりました。わずか数年でアメリカ本国の規模を超えてきたのです。同様にインドでも2015年や2016年頃から始まり、4カ所で合計約20万人が集まるようになりました。

アフリカでアニメが浸透した理由には、2010年代半ばにクランチロールなどの動画配信サービスで見られ始めたのが大きいのでしょう。北アフリカのエジプト、東アフリカのケニア、西アフリカのナイジェリア、および南アフリカなどでコミコンが立ち上がり、現在で6〜7年ほどになります。

その中でも南アフリカのヨハネスブルクが特に突出しており、エジプトやケニアが数千人規模であるのに対し、ヨハネスブルクは7万人を超えていたので驚きました。私の中では「インドのデリーよりも多いのではないか」という感覚でした。

今回私は『ONE PIECE』の実写版のサードシーズンが南アフリカで撮影されていることもあり、これは行くべきだと考えました。実際には、7万人規模のヨハネスブルクコミコンのサブイベントとして、南西の希望峰にあるケープタウンで行われる3万人規模の「ケープタウン・コミコン」の3年目に、今回参加してきました。

コンテンツによって異なる流通経路と物価の壁

野村:熱気としては沸騰しているコミコンですが、現地で中山さんはどのような光景をご覧になったのでしょうか。

中山:人々がどの程度深くコンテンツを楽しんでいるのか、最新のアニメが放送されているのか、あるいはどのようなコンテンツが並んでいるのかを詳細に観察しました。その結果、コンテンツごとに流通経路が全く異なっており、全世界のすみずみにまで到達している製品として本当に優れていると感じたのは、ゲームとカードゲームでした。

日本に比べると、Nintendo Switchなどのゲーム本体の価格が約2倍、ゲームソフトも約1.5倍ほどの値段でした。しかし現地の感覚からすると、ゲーム機の金額としては手ごろのようです。カードゲームはさらに比較的安価で、400円から600円程度で購入できます。

一方で、漫画本は『うる星やつら』などが並んでいましたが、1冊が約4,000円から5,000円でした。これは現地の経済水準からするとあり得ない金額です。可処分所得で考えると、私たちの感覚では1冊約8,000円から1万円近くの感覚になります。

野村:少し厳しい金額ですね。

中山:よほど裕福な人が1巻ずつ購入するような状況です。しかも、どこの本屋に行っても巻数が揃っておらず、1巻、7巻、8巻といったようにバラバラに置かれていました。

野村:なるほど、そのような状況なのですね。

中山:漫画は十分に届いておらず、アクセスも困難で非常に高価です。また、グッズについても基本的には海賊版しか流通していないような状態でした。玩具についても、ベイブレードなどがあるものの、やはり欧米(特にイギリス)の流通が強い印象です。そのため、ハムリーズやトイザらスといった店舗があり、そこではイギリスやアメリカに向けて展開された日本のIPのコラボ商品が南アフリカでも販売されています。

日本企業はインド市場にも十分に展開できていませんが、アフリカ大陸となると、ライセンスを保有している会社がサブライセンスを行い、さらにその先でサブライセンスを重ねているため、販売元自体が「そこで売れていること」を全く認識していないケースがほとんどだと思います。そうした環境の中でも、安価な価格でしっかりと届けようとしているのがゲームやカードゲームです。それに続くのが漫画ですが、これらはまだ流通としては遠い存在です。

「スター・ウォーズ」を圧倒する日本アニメの人気と「海賊版」のリアル

野村:知名度やコンテンツ自体はしっかりと届いているのでしょうか。

中山:それがケープタウンコミコンでの驚きでした。ちょうど『マンダロリアン』が配信され、作品のキャラクターが登場していたため、一番の目玉は『スター・ウォーズ』だと思われていました。しかし、「スター・ウォーズの仮装をしている人はステージに上がってください」と呼びかけたところ、集まったのは12人ほどでした。

数千人の来場者がいる中で12人というのは意外に少ないと感じ、観客席を見渡したところ、『鬼滅の刃』のコスプレをした人々が多数いました。『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』のコスプレをしている人の方が、『スター・ウォーズ』よりも圧倒的に多かったのです。

アメリカのコミコンでは大体アメリカのアニメが8割、日本のアニメが2割程度で日本コンテンツの比率は低いのですが、アフリカのコミコンでは半分以上が日本のIPでした。さらに先ほどの『ダンダダン』のように最新の作品も登場しています。

その中でも特に『ONE PIECE』と、映画の影響もあるマリオの人気が際立っていました。また、私は行けなかったのですが、エチオピアに行った人の話によると、エチオピアで過去最大の興行収入を記録した海外映画は、劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』だったそうです。

野村:それほどまでに浸透しているのですね。こうした映画・アニメとの接点はどんなところにあるのでしょうか?

中山:経済格差が激しい南アフリカに関しては、一定の所得がある人は月額1,000円程度のクランチロールを契約して視聴している場合が多いですが、海賊版が中心になっているのが実態です。特におそらく西アフリカや東アフリカでは、ほぼ海賊版がメインでしょう。

西アフリカではフランス経由で「カナル・プラス(Canal+)」が放送されていたり、中東の「スペース・トゥーン(Spacetoon)」という企業がケーブル回線を通じて南アフリカまで映像を配信していたりします。貧困層の多い地域の人々は、1ドル程度で購入した非公式のケーブル回線を利用して、『ダンダダン』などを視聴しているという状況でした。

野村:言語や字幕はどうなっているのでしょうか。

中山:ファンサブ(有志による字幕)なのか、あるいは公式のケーブル放送経由であれば、ヨーロッパで翻訳されたものが配信されているのかもしれません。言語や字幕が整った状態で配信されているのだと思います。

現地の人々には、それが違法であるという認識がほとんどありません。昨年ウズベキスタンへ行った際、テレビ東京の方と同行していたため、現地の日本語学校の生徒たちと『NARUTO』の話をしました。すると、ある生徒が「私は今、NARUTOの仕事をしている」と自慢げに話してくれたのです。

中継を聞いてみると、それはファンサブの仕事であり、違法サイトにある『NARUTO』に字幕を付ける作業でした。それをテレビ東京の担当者の前で誇らしげに見せてくれたのです。「それは私たちが許諾していない公式ではないものだ」と伝えると、「そうなのですか」と驚いていました。本人たちからすれば、有名なサイトでその仕事に関わっていることは、同世代の間で「ドリームジョブ(憧れの仕事)」のような扱いなのです。つまり、その非公式のサイトが発注元となり、現地の若者たちに仕事を供給しているという仕組みになっています。

過酷な歴史・不条理な社会と重なる『ONE PIECE』の物語

野村:アフリカにおける日本アニメの人気には、どのような背景があるとお考えですか。

中山:アフリカにおける『ONE PIECE』の絶大な人気は、現地における差別や、地域によっては失業率30%といった過酷な社会環境と深く結びついていると感じました。

2024年末から2025年頭にかけて、日本経済新聞が「新ジャポニズム」という世界における日本アニメの受容に関する特集を組みました。ウクライナで戦時下を生きる若者が『進撃の巨人』を観ながら「敵を憎んではいけない」と語る場面などが印象的でしたが、その中で、ジンバブエの30代のアニメーターが「自分はONE PIECEに救われた」と話していました。

当時のジンバブエはハイパーインフレの最中で、朝に持っていた1万円が、夜には100円の価値になってしまうような極限状態でした。お金がなく食事にも事欠く中で、作中で海軍のような巨大な権力と戦い、失われた歴史や尊厳を取り戻していく『ONE PIECE』のストーリーが、アフリカの歴史や現状と非常に重なるのだそうです。

アフリカは植民地支配を経て1960年代にようやく独立を果たしたものの、社会基盤が破壊されていたため1970年代以降もうまく機能せず、1980年代には再び厳しい時代を迎えました。そして現在も、一部の富裕層やアパルトヘイトの不条理な名残が社会を支配しています。このように、「社会は不条理であり、自分は決して這い上がれない」という絶望を感じている人々に、この物語が強く響いているのです。

会場でも『ONE PIECE』のコスプレが非常に多かったのですが、それを見た時に私が感じたのは、植民地支配の歴史によって社会を壊され、不条理な階層社会と戦い続けているアフリカの人々にとって、この作品はもはや現代の神話のようになっているのではないか、ということです。私は『ONE PIECE』は100年後にも、現地で語り継がれていると思います。

野村:現地の不条理な心象風景と、物語が重なる部分があるのですね。

中山:そして、その『ONE PIECE』の実写版が現在まさに南アフリカで撮影されているため、現地は非常に盛り上がっています。コミコンには、作中で「ジュラキュール・ミホーク」や「ミス・バレンタイン」を演じている南アフリカ出身の俳優陣が参加していました。南アフリカのスタジオに撮影を誘致しているため、現地の俳優が起用されやすいのです。「あのONE PIECEに出演している」ということで彼らはヒーロー扱いされており、トークショーは大盛況でした。

歴史的に見ると、例えば日露戦争の際、アフリカの人々は非常に熱狂したそうです。それまですべてを奪われ蹂躙されていた彼らにとって、ヨーロッパ以外の、それもアジアの国である日本がロシアに勝利したというニュースは、とてつもない衝撃と希望を与えたのでしょう。もちろん、後に日本も同じように他国を植民地支配する道を歩んでしまいましたが、当時の「非西洋の国が立ち上がった」という事実に対する興奮が、100年経った今でも根底に流れているのではないかと、様々なことを考えてしまいました。

20〜30年先を見据えた「ラストフロンティア」への挑戦

野村:現在は主に海賊版が中心であり、一部でゲームやカードゲームが普及しているというお話でしたが、この盛り上がりは、日本のIPホルダーにとって将来的にビジネスとして成立する余地があると思われますか。

中山:現在は、日本の企業側はその需要をほとんど検知できていない状態です。日本のIPホルダーの多くは、東南アジア市場は台湾の代理店に任せ、インド以西、あるいはアフリカに関しては「どうせ海賊版ばかりだろう」と、公式な展開を行っていません。一部、ヨーロッパ向けのライセンスを持つ企業が、西アフリカなどに波及的に展開している程度です。

日本の企業は、実際に現地のアニメエキスポなどのイベントに足を運び、肌で可能性を実感した上で、現地の意欲的なパートナー企業を見つけてビジネスを開始する、というプロセスを辿ることが多いです。これだけ普及しているという事実を前提に、4大コミコンのどこかに接点を持ち、グローバルにビジネスを展開しているヨーロッパの企業などと連携しながら、20年後、30年後の未来に向けて今から種を蒔いておくことは非常に有意義だと思います。

私はインドで、まさにそのような先行事例を目にしました。2000年代にテレビ朝日が『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』を現地に持ち込んだ結果、2020年代には、これらがインドにおけるキャラクター人気ランキングのベスト3に入るようになりました。子どもの頃に教育や娯楽としてアニメに触れた経験が、20年後に一大市場を形成するのです。

野村:長期的な視野が必要ですね。

中山:そうですね。アフリカはまさに最後の空白地帯であり、ラストフロンティアです。今すぐ利益を回収するというよりは、次の世代、あるいはさらにその次の世代にビジネスを繋ぐために、今から関わっておくべきではないかと考えています。

まずは信頼できるパートナーと共に放送や配信を開始し、海賊版が普及している現状を少しずつ正規版に移行させていく。そしてカードゲームや漫画といった正規品を流通させ、教育分野も含めて少しずつ展開していくというプロセスが大切になるのではないでしょうか。

<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。

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