08年のCBC賞はスリープレスナイトが制した(c)netkeiba 08年のCBC賞は、1人の騎手が長い苦難の時を乗り越え、再び輝きを取り戻した一戦として、多くのファンの記憶に刻まれている。スリープレスナイトとコンビを組んだ上村洋行騎手が、約9年8カ月ぶりとなる重賞制覇を達成。病と向き合いながらもジョッキーとしての道を歩み続けた男が、遂に手にした重賞勝利を振り返る。
上村騎手は92年に栗東・柳田次男厩舎からデビュー。同年の京王杯AHのトシグリーンで重賞初制覇を果たすと、40勝を挙げてJRA賞最多勝利新人騎手にも輝いた。2年目以降も53勝、50勝と順調に勝ち星を重ね、若手有望株として大きな注目を集めた。しかし、順風満帆だった騎手人生に大きな試練が訪れる。眼の病気である飛蚊症を患い、当初は騎乗を続けていたものの、04年には治療に専念するため約8カ月にわたって騎乗を自粛した。幸いにも複数回の手術を経て復帰したが、その後はなかなか重賞タイトルに手が届かない日々が続いた。
そんな上村騎手に転機をもたらしたのが、後に名コンビとなるスリープレスナイトとの出会いだった。管理していたのは、復帰直後から数多くの騎乗依頼を寄せていた橋口弘次郎調教師。3歳春から上村騎手を背に走り始めると、条件クラスを3連勝。オープン入り後は勝ち切れない競馬も続いたが、4歳春には横山典弘騎手が代打騎乗した京葉S、上村騎手に手が戻った栗東Sを連勝した。そして陣営が次なる舞台に選んだのが、1年5カ月ぶりの芝となるCBC賞だった。
芝でも通用するのか、それとも生粋のダート馬なのか。単勝7.7倍の4番人気という評価には、ファンの半信半疑な思いが反映されていた。しかし、レースではそんな不安を吹き飛ばす圧巻の走りを披露する。内の2番枠から好スタートを決めると、逃げるウエスタンビーナスの2番手を追走。そして直線に向くと早々に先頭へ躍り出た。そこからは後続を寄せ付けない独走。必死に追い込んできた2番人気スピニングノアールに1馬身1/4差をつける完勝を収めたのだ。上村騎手はゴール前で右手を高々と突き上げ、渾身のガッツポーズ。98年のスワンSをロイヤルスズカで制して以来、実に9年8カ月ぶりとなる重賞勝利だっただけに、その喜びが爆発するのも当然だった。
CBC賞で重賞勝利を果たしたスリープレスナイトの勢いは、ここからさらに加速する。続く北九州記念も快勝。そして秋にはスプリンターズSで人馬ともにGI初制覇を達成した。長いトンネルを抜けた上村騎手にとって、スリープレスナイトとの出会いは、騎手人生を再び輝かせる大きな転機となったのだった。