限定公開( 3 )

酒税法改正を間近に控え、ビール業界が活発化している。
カインズでは、2010年から展開するオリジナルアルコール飲料「黄金(こがね)」シリーズから、初の本格ビール「黄金ラガービール」(330ミリリットル、1本138円)が登場。2026年4月末の発売から約1カ月で30万本を販売し、好調に推移している。
これを受け、7月1日〜8月24日まで1本125円(24本入りケース2980円)に値下げして販売中だ。厳しい暑さも重なり、さらに売れ行きが伸びているという。
10月の酒税法改正では、ビール系飲料の税率が350ミリリットル当たり54.25円に一本化される。ビールは減税、発泡酒と第3のビール(新ジャンル)は増税となり、ビール系飲料の価格差がグッと縮まることになる。
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そんな中、キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーの大手4社は、「新ジャンルからビールへの切り替え」を次々と発表。また、ドン・キホーテを運営するPPIHでは、PB「情熱価格」から初のラガービール「情熱価格 ラガービール」(330ミリリットル、1本164円)を2025年6月から販売している。
ビール業界の競争が激化する中、カインズでは3年以上かけて黄金ラガービールを開発した。物価高でも日頃の「家飲み」で手に取りやすい価格と、幅広い層に好まれる味わいが支持を集めているという。同社の日用雑貨・加工食品事業本部長 根岸充氏に「開発の舞台裏と反響」を聞いた。
●2億本を売った「黄金」シリーズ
カインズでは、2007年の「SPA(製造小売業)宣言」を機に、オリジナル商品の開発にかじを切った。現在、PBの売上比率は約3割となり、ビール系飲料のほか、ワインやお茶、菓子、カレーなど幅広く展開している。
2010年に誕生した新ジャンルビールの「黄金」は、フランス産ファインアロマホップを100%使用するなど低価格ながら品質にもこだわり、ヒット商品に成長。
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糖質を50%カットした「OFF」やコクや苦みを増した「芳醇」などラインアップを増やし、2025年までに累計約2億本を販売した。50代以上を中心に、幅広い層に親しまれているという。
「シリーズで最も売れ行きが良いのが『OFF』です。エコノミーながら味わいがしっかりしていて、糖質も抑えられるとして好まれています。次いで人気なのは、ベーシックな『黄金』です。『ホップ感が強い』と評価いただいており、苦みとフルーティーな香りのバランスが支持されている要因だと考えています」
黄金シリーズの人気が高まる中、酒税法改正を見据えて投入したのが、シリーズ初の黄金ラガービールだ。
「市場でビールの優位性が高まる中、当社でも厚い支持をいただけるような『狭義のビール』を開発したいと考えました。社内からは、『競争が激しいラガービールではなく、クラフト系など尖ったものが良いのでは』という声もありました。しかし、一人でも多くの方に飲んでいただきたく、ラガービールとしました」
開発で重視したのは、老若男女に好まれ、食事にも合わせやすい味わいだ。1本138円という価格と品質を、どのように両立させたのか。
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●開発に3年、難航した理由
多くの人に飲まれるラガービールを開発するにあたり、「最も苦労したのは、飲み応えの追求です」と根岸氏は話した。
「ビールを飲み慣れている方は、『ビールを飲んだ』と感じるようなコクや深みを重視されます。一方で、それほどビールを飲まない方や日常の食中酒として飲む場合には、重すぎると敬遠されてしまう。確かな飲み応えながら、キレとのどごしを爽やかにするというバランスを追求するのに、非常に苦労しました」
結果的に、3年以上にわたって7〜8種類の試作品を飲み比べ、ようやく味を決めたという。使用したのは、ドイツ産ホップとベルギー産モルトだ。「本当は2025年のうちに発売したかったのですが、どうしても味が決まらず、発売を延長しました」と根岸氏は明かした。
もう一つこだわったのは、「手頃さ」だ。1本138円、24本入りケース3280円という価格は、ドン・キホーテやイオンのPBビールよりも安い。また、従来より1本売りとケース売りの価格差を縮め、1本でも買いやすくしている。
今後狙っていくのは、これまでの黄金シリーズ同様、リピーターによる「箱買い」だ。とはいえ、いきなりの箱買いは難しいため、「まずは1本買ってみよう」と思われる価格にする必要があったという。
「自信作といえるまで味わいを追求したので、1本買っていただければ、継続して購入していただけると考え、この価格にしました」と根岸氏は説明したが、どのように低価格を実現しているのか。
「黄金シリーズは、世界的大手ビールメーカーのベトナム工場で生産されています。2010年の誕生当初はタイで生産していましたが、コストと味わいを維持する目的で、早期にベトナム工場に切り替えました。こうした品質の高い工場と直接取引をしているほか、物流も独自に効率化し、中間コストを最小限に抑えています」
ちなみに、ドン・キホーテの「情熱価格 ラガービール」もベトナムで生産されているが、別工場とのこと。同商品は「大量生産・モノクロ印刷・簡易包装など徹底したコストカットにより、低価格を実現した」としている。ドイツ産ハラタウホップとフランス産ピルスナーモルトを100%使用し、本場チェコの醸造技術で仕上げている。
黄金ラガービールに話を戻すと、4月末の発売から約1カ月で30万本を販売し、計画を上回る売れ行きとなっている。その背景には、綿密に練られた計画があった。
●1カ月で30万本、70%は「箱買い」
「発売前から調達・販売・プロモーションを連動させ、綿密に計画を立てていました。これが功を奏したと思います」
まず、発売前のプロモーションでは、大々的な展開を行った。発売前の4月下旬に記者発表会を実施したほか、デジタル広告や自社のSNS、オウンドメディアなど、カインズが持つフルチャネルを駆使してアプローチした。広報部の鈴木ゆう子氏は「単独商品での記者発表会は、10年以上ぶりです。ここ数年で最もパワーをかけた商品です」と話した。
最も重要となる「売り場戦略」では、通常ならば箱買いを狙った売り場構成にするところ、全店舗で「バラ売り」の構成比率を高めた。「まず1本買ってみよう」という購買を促すためだ。
さらに「家飲みビール、解禁。」というキャッチコピーを添えた。昨今の物価高により、プレミアムビールから発泡酒などに切り替えたり、家飲みの回数を減らしたりする人は少なくない。そこで「本格ビールながら気軽に家飲みできる商品」として訴求した。こうしたプロモーションも購買につながったと根岸氏は考えているそうだ。
発売から3カ月が経過した現在、箱買いの売上構成比が70%を超えている。そのため、6缶セットと24本入りケースを主力にした売り場に移行しているところだという。
主な購入者層は、カインズの会員で最も多い50代だ。ただ、1本売りや6缶セットでは30〜40代の購入比率が増える。箱買いは、従来からビールを購入している50〜70代が中心だという。「既存のビール系飲料からの切り替えも見られますが、新規開拓もできており、カテゴリー全体が盛り上がっている状況です」と根岸氏は話した。
購入者の反応も、おおむね想定通りだという。最も多いのは、「飲みやすい」という感想。そのほかに「スッキリしたのどごし」「キレがあってゴクゴク飲める」「この値段でこの味なら満足」「食事との相性がいい」なども聞かれている。
カインズのECサイトでは、レビュー評価が5点満点中4.2と高いが、一部「味が薄い」「物足りない」といった口コミが見られた。
●酒税法改正後は、どう売っていく?
10月の酒税法改正後は、市場における「狭義のビール」の売上構成比が大幅に上昇すると見込まれる。新ジャンルの人気ブランド「金麦」「本麒麟」「クリアアサヒ」「GOLD STAR」「麦とホップ」が、一斉にビールへ切り替わるためだ。黄金ラガービールを取り巻く競争は一段と激しくなるわけだが、カインズではどのように売っていくのか。
「打ち手を活性化していく考えです。例えば、現状の330ミリリットルに加えて『500ミリリットル』を追加する。これまでの黄金シリーズのように、味わいのラインアップを増やすことなどを検討しています。技術的には難易度が高いのですが、糖質オフタイプも挑戦が必要かもしれません」
黄金シリーズの新ジャンルについては、「すぐに終売する考えはありませんが、縮小する可能性はあります。購買状況を見ながら、拡大・縮小のバランスを検討していきます」と回答した。
さらに「アルコールに限らず、好みやシーンによって選択肢を増やすことが重要である」との考えから、黄金シリーズでノンアルや微アルコールのラインアップを拡張する考えもあるそうだ。
間もなく大きな転換点を迎えるが、黄金ラガービールは好調を維持できるのか。
(小林香織、フリーライター)
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