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とんかつチェーン店「松のや」の割引キャンペーンが“炎上”している。「ママ応援企画」と題したことから、「『女性が食事を作る』という固定観念はいかがなものか」といった批判が続出。結果的に、キャンペーン内容の変更を余儀なくされた。
今回のキャンペーンはなぜ炎上したのか? そして、どうすれば炎上を避けられたのだろうか?
●「ママ応援企画」投稿が炎上する事態に
松のやは7月29日、公式Xアカウントで「お子さまが夏休み中だと、ママはご飯の準備などが大変だと思う」として「ママ応援企画」を行うと発表した。
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9月2日までの期間限定で、15歳以下の子どもとその母親を対象に、ロースかつ定食を通常690円のところ500円で提供するとともに、持ち帰り総菜の割引企画も行うと告知した。
この投稿には「ちなみにパパ応援企画も考え中です」と添えられていた。しかし「主夫は応援しないのか」「『食事はママが用意する』という先入観はどうなのか」といった指摘が続出する事態に。
一部には「『ママ限定』と『ママ応援』は異なる」といった擁護の声もあったが、公式Xはその日のうちに「皆さまのコメントを読んで、『確かにその通りだな』と感じました。配慮が足りず、申し訳ありません」と謝罪した。
そして翌日、キャンペーンの名称を「夏休み企画」にしたうえで、期間を「原料が無くなり次第終了」とすることで、対象を全ての顧客に広げた。この対応にも「過剰反応ではないか」といった声はあったが、こうした松のやの軌道修正後も、依然として「前時代的だ」と批判する声が相次いでいる。
●そこまで非難されるようなことなのか?
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松のやを運営するのは、牛めしチェーン「松屋」で知られる松屋フーズだ。外食大手とあって、「あの松屋でも、いまだに“この感覚”なのか」といった論調のバッシングは少なくない。
しかしながら「ママ応援企画」はそこまで非難されるようなことだろうか?
当初から「パパ応援企画も考え中です」と明言しており、「子どもの食事の用意=母親の役割」と一面的に決めつけているわけではないからだ。
また炎上への対応として、キャンペーンの対象を「ママと子ども」以外にも広げざるを得なくなった。キャンペーン内容の変更時には「この価格でご提供できる数には限りがあるため、実施期間は短くなってしまうかもしれません」と発表している。対象者を全員に広げたことで、新たに予算面における課題が浮上したことは間違いないだろう。
●どんな狙いがあった?
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今回のキャンペーンは「顧客ターゲットの拡大」を狙ったのではないか。
筆者もたまに松のやへ行くが、どちらかといえば男性の1人客を見かけることが多い。子連れ客を安定して獲得することができれば、売り上げ拡大につながる。
ただし、顧客への「伝え方」には工夫の余地があったのではないか。つまり、あえて「ママ」に限定する必要はあったのかということだ。
対象を絞り込むには、相手(ここでは消費者)にその理由を納得してもらう必要がある。そのコミュニケーションが不十分のまま、企業側の論理のみで推し進めてしまえば、本来は避けられた“火種”に、自ら飛び込んでいるのと同じだろう。
となれば、当初からキャンペーン期間を短くした上で、「パパママ応援企画」と銘打った方が、炎上を回避する意味では良かったかもしれない。顧客にどこか「対象期間を長くするために対象者を絞ったのではないか」と思わせてしまったことが、炎上がここまで燃え広がった要因ではないだろうか。
●なぜ吉野家は炎上しなかったのか
では、松のやは、どうすれば良かったのか。参考になるのが、競合である吉野家が行っている「こども元気割」だ。小学生以下の子どもを対象に、税込価格から80円を割り引くもので、公式サイトでは「毎日頑張るパパ、ママを応援する夏休み特別企画」と説明している。
こちらも9月3日までのキャンペーンとして「家族みんなで外食を楽しみたいとき」や「たまには食事作りをラクしたいとき」「今日の夕食メニューが思いつかないとき」といったシーンでの利用を提案している。
松のやの「ママ応援企画」と、吉野家の「こども元気割」。商材やコンセプト、開催期間は近いが、なぜここまで受ける印象が異なるのか? そのポイントは、主語を親から子に移していることにある。
子どもは世間一般的に「配慮や保護が必要な存在」として認識されている。そのため、子どもを対象にした割引やサービスは世間からの理解を得やすく、心理的な反発を招きにくい。
加えて、子どもは大人のように一人前の量を食べきれず、提供されるメニューを十分に食べきれないという事情もある。だからこそ、大人と同額ではなく「子ども割引」という形で優遇することに明確な正当性が生まれるのだ。
どちらのキャンペーンも、根底にあるのは「親の負担軽減」だ。当然ながら、小学生以下の子どもが自発的に来店し、自分のお金で会計を済ませることはまずあり得ない。実際に足を運び、お金を払うのは保護者だ。
店舗側の本音としても、顧客層の拡大という狙いがあるのは明白だ。しかし、それを伝える「言葉選び」ひとつで、世間に与える印象はこれほど大きく変わってしまう。
本来、子どもに向けた施策は、親へのアピールにとどまらず「将来の顧客獲得」という重要な側面を持つ。例えばマクドナルドの「ハッピーセット」で育った子どもは、大人になってもその味を覚えており、親になったとき再び自分の子どもに買い与える。こうして世代を超えたファンが作られていく。
つまり、子どもを主語にした施策は、中長期的なブランド投資でもあるのだ。それだけに、今回の松のやの一件は「もっとうまい魅せ方があったはずだ」と悔やまれてならない。
著者紹介:城戸譲
1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ニュース配信会社ジェイ・キャストへ入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長、収益担当の部長職などを歴任し、2022年秋に独立。現在は「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」として、フリーランスでコラムなどを執筆。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
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