
セブン‐イレブン・ジャパン、電通、サイバーエージェントの3社は、合弁会社「セブン‐イレブン・アドコネクト」(東京都千代田区)を設立した。店内のデジタルサイネージや公式アプリ「セブン-イレブンアプリ」などを広告媒体として活用する「リテールメディア事業」を9月1日に開始する。2030年度までに事業収益200億円を目指す。
これまでコンビニは商品を販売する場だった。しかしセブンは、年間約73億1700万人が来店する全国約2万2000店の店舗網を「広告メディア」として再定義し、顧客データも活用しながら新たな収益源に育てようとしている。まずは店頭で販売する商品の広告を中心に取り扱い、将来的には店舗で扱っていない商品やサービスの広告にも領域を広げる方針だ。
●リテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売店が店内のデジタルサイネージやECサイト、アプリなどを広告媒体として活用する仕組みだ。購買データやアプリの利用データといった顧客データを基に、一人一人に合わせた販促施策ができることが特徴だ。店頭では、来店客が商品を購入する直前に広告を表示できるため、高い販促効果が期待されている。
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デジタルマーケティング事業を手掛けるCARTA HOLDINGSの調査によると、店舗事業者によるリテールメディア広告市場は2026年に1130億円規模に達する見通しだ。
コンビニ業界では、ファミリーマートがリテールメディア事業で先行している。アプリ「ファミペイ」や店舗レジ上のデジタルサイネージ、購買データなどを活用した広告事業を展開しており、2030年度には広告関連売り上げ400億円を目指す。同社では既に、保険や金融、自動車といった、店頭で扱っていない商品・サービスの広告やマーケティング支援も手掛けている。
セブンは現時点では、他社とのシェア争いよりも、リテールメディア市場全体の拡大を優先すべき段階にあるとみている。電通やサイバーエージェントと連携しながら市場を育成し、その拡大を後押しする考えだ。こうした中、セブンはどのような強みを武器に事業を展開していくのか。
●セブンのリテールメディアの強みは?
セブンでは2022年にセブン-イレブンアプリで、2023年にレジで広告配信を開始した。店舗へのデジタルサイネージの設置は2024年から進めており、現在は首都圏を中心に約3700店舗へ導入している。2026年度中に東海・関西エリアで新たに5000店舗へ設置する予定だ。
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他のコンビニチェーンではレジ上にデジタルサイネージを設置するケースが多いが、セブンは利用客が入店時に目にする場所への設置をコンセプトとしている。多くの店舗では弁当コーナーの上に設置しているといい、レジに向かうタイミングではなく、入店直後から広告を届ける狙いだ。
店内には4つのスピーカーを設置し、利用客がどこにいても音声が届くようにした。さらに、来店客の平均滞在時間が約5分であることを踏まえ、広告も約5分ごとに配信している。
実際、デジタルサイネージを設置した店舗では、広告を配信した40商品について、設置していない店舗と比べて1日当たりの売り上げが平均1343円高かった。
具体的な商品における広告効果も検証した。2026年に発売したアルコール飲料では、テレビCMと店内サイネージの両方に接触した人の購入率が最も高く、どちらにも接触していない人を100とすると131となった。サイネージだけでも123となり、テレビCMのみ(115)を上回る結果だった。
別の炭酸飲料を対象にした検証では、アプリのクーポンと店内サイネージを組み合わせた施策を実施した。広告施策期間中と終了後2週間以内に2回以上商品を購入した人の割合(リピート率)は9.7%となり、クーポンのみの場合(3.8%)を5.9ポイント上回った。
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●顧客データは1億人規模
顧客データ基盤の拡大も進める。セブン&アイ・ホールディングスとセブン-イレブン・ジャパンは7月31日、ソフトバンク、PayPay、LINEヤフー、三井住友カードと戦略的パートナーシップを締結したと発表した。セブン‐イレブンアプリの会員数は現在約2900万人だが、PayPayとの顧客IDの統合により、活用できる顧客基盤は約1億人規模へ広がる。
セブンの取締役常務執行役員 榑谷光生氏は「われわれはコンビニエンスストア事業を専業で行ってきた。これからは、本業で作り上げたアセットを活用して新たな価値を提供していきたい。企業の成長を支援するようなBtoBビジネスにチャレンジしていきたい」と話した。
●AIの活用で広告をどう変える?
今後は、AIを活用した広告制作や配信の最適化も進める。
これまでのような全店舗一律の広告配信ではなく、店舗ごとの立地や客層に応じた広告を配信できるようにする。例えば、住宅街の店舗では帰宅時間帯に酒類の広告を配信し、オフィス街の店舗では金融サービスや転職サイトの広告を表示するといった取り組みだ。天候や在庫状況に応じて広告内容を最適化することも想定している。
広告効果の分析にもAIを活用する。約500店舗のデジタルサイネージにはAIカメラを設置しており、通行人数や視聴人数、視聴時間などを、性別や年代別に分析する。複数種類の広告を配信して効果を比較し、視聴率の低い広告は別のクリエイティブに差し替えるなど、データに基づいた運用が可能だ。
同社によると、1種類の広告を配信し続けると視聴率が徐々に低下した一方、複数の広告を入れ替えながら配信すると、視聴率を維持できたという。
セブンの新規事業推進室総括マネジャーを務める杉浦克樹氏は「凡庸なサービスはなくなっていく。とがったサービス、なくてはならないサービスを今後の事業展開で作っていきたい」と意気込んだ。
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