
「旅行はお金がかかる」と思っていないだろうか。普段の節約で旅費を貯め、予約方法や宿選びを工夫すれば、ぐっと身近なものになる。70歳になった今、全国をひとりで旅するショコラさんに、お金をかけるところ・抑えるところのメリハリと旅を楽しむコツを教えてもらった。
限られた予算内で満足度の高い旅に
「50代のころから、仕事を辞めて自由になったら、思い切り旅をしたいとずっと思っていたんです」
そう話すのは、人気ブロガーのショコラさん。
「今年で70歳になりますが、それまでは暮らしに余裕がありませんでした。40代後半で離婚してひとり暮らしを始めてからは仕事が忙しく、時間にもお金にも追われる毎日。旅行は好きでしたが、老後資金を貯めたい、住宅ローンを早く返したいという気持ちが強く、休日も身体を休めるだけで精いっぱいだったんです」(ショコラさん、以下同)
完全に仕事を引退したのは3年前。65歳で年金を受け取り始めてからもパート勤務を続け、その収入には一切手をつけず、「退職後に旅を楽しむためのお金」と決めて積み立ててきた。
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「平日に出かけられるようになったので、ホテル代が安いシーズンオフも選べますし、カレンダーを気にせず日程を組めるのが本当にうれしいですね。せっかく交通費をかけるなら滞在日数も少し長くして、その土地をゆっくり味わいたいと思いました」
普段の暮らしでは無駄遣いをしない一方で、旅先では「使うべきところ」と「抑えるところ」をはっきり分けている。
歴史ある建築や美術館、庭園など「ここだけは見たい」と決めた場所の見料などには惜しまずお金をかけ、ご当地ならではの食も楽しむ。その代わり、満足度に影響しない出費はできるだけ減らし、限られた予算でも納得できる旅を実現している。
コスパのいい旅は出発前に決まる
ショコラさんは、「旅の良しあしは、出発前の準備でほぼ決まる」と話す。行き先が決まったら時間をかけるのは、交通手段と宿泊先探し。同じホテルでも予約サイトによって料金やポイント還元が異なるため、一つだけで決めず、必ず比較するという。
「少し手間はかかりますが、数千円違うことも珍しくありません。浮いたお金で美術館へ行ったり、おいしいランチをいただいたりできるので、そのひと手間は惜しまないですね」
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宿泊はビジネスホテルが基本。夕食付きプランは選ばず、朝食はホテルのバイキングを利用したり、近くの喫茶店で済ませることもあれば、前日にコンビニで買ったパンやおにぎりを部屋で食べることもある。
「ビジネスホテルは朝食付きでも1万円以下で泊まれるところが多く、無料朝食を用意しているホテルもあります。アメニティーも充実しているので、荷物を減らせるのもうれしいですね」
さらに、お土産もほとんど買わない。
「自分へのお土産もありません。写真が一番の思い出になりますし、家に物を増やしたくないんです。ただ、台湾でもらった紙製のランチョンマットはとても趣があったので、100円ショップで買った額に入れて飾っています。ふと目に入るたびに旅を思い出して、懐かしい気持ちになります」
旅の日程は、できるだけ平日に組む。宿泊料金を抑えられるだけでなく、有名な観光地でも混雑が少なく、自分のペースでゆっくり見て回れるからだ。新幹線も早めに予約し、各種割引を積極的に利用する。
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「新幹線はJR東日本の『えきねっと』を利用します。14日前までなら25%引きになることがありますし、『大人の休日倶楽部ジパング』に入ると、65歳以上はJR運賃が20〜30%引きに。年会費は4364円(税込み)ですが、何度か利用すれば十分に元が取れます」
もう一つ大切にしているのが、「欲張らない旅」だ。
「あれもこれも見ようとすると移動ばかりになってしまい、交通費も時間もかかります。それより『この建築物を見たい』『この美術館へ行きたい』というように目的を一つだけ決めるほうが、満足度はずっと高くなります」
目的を絞ると時間にも気持ちにも余裕が生まれ、一つの場所をゆっくり眺めたり、ベンチに腰かけて景色を楽しんだり、その土地の空気を味わう時間が増える。予定を詰め込みすぎないからこそ、「また訪れたい」と思える余韻が残ることも少なくない。
最近は、テレビや映画、小説で心を動かされた場所を訪ねることも増えた。初めてのひとり旅で足を運んだ兵庫県のヨドコウ迎賓館も、テレビで見て「いつか自分の目で見たい」と思ったことがきっかけだったという。目的がはっきりしているからこそ短い日程でも充実感があり、それが何度でも旅を続けられる理由になっている。
歩くからこそ出会える景色
旅先では、できるだけ歩くことを心がけている。交通費を抑えられるだけでなく、車窓からでは気づかない街並みや路地裏、その土地ならではの暮らしに触れられるからだ。駅や観光案内所で地図を手に入れ、気になる道があれば予定を少し変えて歩いてみることも珍しくない。
「歩いていると、昔ながらの商店や、住宅街に咲く花、地元の人が集まる公園など、観光地だけでは見えない日常の風景に出合えます。そんな何げない景色ほど心に残ります。自分のペースで歩きながら、その土地の暮らしを感じられるのは、ひとり旅ならではの魅力ですね」
そんな旅を長く続けるため、日頃から体力づくりにも取り組んでいる。フィットネスクラブに通い、アクアダンスやエアロビも続けながら、「旅先で一日中歩ける身体」を意識して暮らしているという。
「旅は私にとって毎日を前向きにしてくれる原動力。『次はどこへ行こう』と考えているだけで、節約も健康づくりも苦になりません。旅を続けるには、お金だけでなく体力も必要ですから。
だからこれからも無理なく身体を整えながら、80歳になっても自分の足で新しい景色を見に行きたい。ひとり旅が難しくなったらシニアに配慮したツアーに参加するのもいい。旅のことを考えると、ワクワクして希望が湧いてきます」
ひとり旅の心得
(1)予算の優先順位をつける
限られた予算内でやりくりするため、優先度を決めて、お金をかけたくないものへの出費を減らす。ショコラさんは拝観料や入場料などは惜しまないが、飲食にはあまりお金をかけない。宿泊を食事なしのプランにしたり、朝はコンビニで買ったサンドイッチを食べることも。大好きなレトロ喫茶店のモーニングを食べに行くこともあり、メリハリをつけている。
(2)便利なツールを活用する
JR東日本の新幹線を予約するときは、予約アプリ「えきねっと」で購入すると割安になる場合が。また、インターネットのホテル予約サイトを見比べると、同じホテルでもサイトによって宿泊費が異なるので、見比べて予約をしている。旅行前に地図やガイドブックで、旅先の情報を入手しておくことも大事。
(3)コンパクトな荷物で身軽に
持ち物は最小限に抑えて、キャリーケースではなく動きやすいリュックに詰める。持ち歩き用のショルダーバッグに、夏はタオルハンカチを多めに入れ、晴雨兼用の折り畳み傘、日焼け止めクリーム、帽子は忘れない。大きめのエコバッグを持っていくと便利。
(4)思い出はお土産よりも写真で残す
お土産は家族にしか買わない。その代わり、旅先でたくさん写真を撮る。思い出になるだけでなく、SNSにアップして楽しんだり、いつ、どこで何をしたかという記録にも。
ショコラさん
10年間続けるブログ「70代一人暮らし 大切にしたいこと」が人気を博す。著書に『
』(すばる舎)など。
取材・文/松澤ゆかり 写真/林ひろし(『60代から夢をかなえる ひとり旅』/すばる舎 より)
週刊女性2026年8月18日・25日号
