米国でフィアースネスなど所有 マイク・リポール氏が英国競馬に進出か

0

2026年08月12日 21:00  netkeiba

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

netkeiba

▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba
【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】

◆世界へ広げる競馬事業

 8月8日(土曜日)、英国ニューマーケット競馬場のジュライコースで行われた開催の第3競走に組まれた2歳馬によるメイドンに、ロジャー・ヴァリアンが管理するウォッチパーティ(牝2、父ロペドベガ)が出走。ここがデビュー戦だった同馬は、オッズ2.625倍の1番人気に推したファンの期待に応えることが出来ず、3着に終わった。

 実はこの馬、米国人馬主マイク・リポール氏の競馬組織リポール・レーシングの所有馬による、英国における初出走だったのだ。

 マイク・リポール氏は1969年1月12日、米国ニューヨーク市クイーンカウンティのミドルヴィレッジに生まれた。両親はイタリアからの移民で、父は飲食店のウェイター、母は裁縫の仕事をして、一家の生活を守っていた。経済的ヒエラルキーでいえば、かなりの下層から彼の人生はスタートしたのである。

 地元のホーリークロス高校から、セントジョンズ大学に進んだ彼は、スポーツ管理学の学位を取得して卒業。飲料のドクターペッパーなどを製造販売していたミスティック・ビバレッジ社に就職した。その後、同じ飲料メーカーのクリスタルガイザー・ウォーター社に、営業担当の責任者として引き抜かれている。

 30歳となった1999年、知人と共同で、ビタミンウォーターを製造販売するグラソー社を設立。この商売が図に当たって会社は急成長。年商10億ドルに達した2007年、リポール氏らは会社を、コカコーラ社に41億ドルで売却している。

 その後もリポール氏は、スポーツ飲料やスナック菓子を製造販売する会社を立ち上げては、急成長させ、タイミングを見て大手企業に買収させるということを何度か繰り返し、巨万の富を手にしていった。

 10代の頃から競馬好きだった彼が、リポール・レーシングを立ち上げたのは、グラソー社を売却した後だった。

 09年のキーンランド・セプテンバー1歳市場にて22万ドルで仕入れたアンクルモーが、翌10年にG1シャンペンSやG1BCジュベナイルに優勝。全米最優秀2歳牡馬に輝き、リポール氏が持った初めてのチャンピオンホースとなった。

 その後も、ステイサースティで11年のG1トラヴァーズSと12年のG1シガーマイルを。13年にはオーバーアナライズドでG1アーカンソーダービーを。14年にストップチャージングマリアでG1CCAオークスとG1アラバマSを。16年にはアウトワークでG1ウッドメモリアルSを。19年にはヴィノロッソでG1BCクラシックを制するなど、所有馬からはほぼ毎年のようにG1勝ち馬が誕生した。

 近年の所有馬で、日本の競馬ファンの皆様にもお馴染みとなったのが、23年から25年にかけて活躍したフィアースネスだろう。2歳時にG1BCジュベナイル、3歳春にG1フロリダダービーを制した同馬。フォーエバーヤングが出走した24年のG1ケンタッキーダービーで、1番人気に推されたのがこの馬だったのだ。そのケンタッキーダービーこそ15着に大敗したものの、3歳夏にG1トラヴァーズS、4歳夏にG1パシフィッククラシックを制したフィアースネスは、今年春からアシュフォードスタッドで種牡馬として供用されている。

 馬主として大成功を収めてきたように見えるリポール氏だが、米国の競馬産業界の体質について、批判的な発言を繰り返していることでも知られた人物だ。

 いわく、あらゆるスポーツの歴史の中で、最も劣悪なマーケティングを行ってきたのが、競馬という種目である。業界の上層にいる人たちは、全く指導力を発揮しておらず、業界を衰退させている、と。

 そのリポール氏が、ジョッキークラブ、BC協会、ナショナルサラブレッドレーシング協会(NTRA)、サラブレッドオーナース&ブリーダーズ協会(TOBA)といった、業界内の主立つ統括団体を相手に、訴訟を起こすプランを明らかにしたのが、今年1月のことだった。訴訟をすることで、隠蔽されている事実や情報が明るみに出れば、競馬サークルの体質改善につながる。競馬に関わる人たち、競馬場、競馬ファン、そして馬たちを救うためには、これしか手段がないと、彼は唱えたのだ。

 アメリカの競馬に嫌気がさしていた彼は近年、他国の競馬産業との関係を深めている。例えば、前述したフィアースネスは、アイルランドのクールモアグループとの共同所有馬だったし、両親の祖国であるイタリアでも、エンド・ボッティ厩舎に馬を預けている。

 24年には日本の千葉サラブレッドセール、JRHAセレクトセール、HBAセレクションセールで若駒を購買。日本で馬主資格を取ることを望んでいるとの報道もあったが、その後の進捗状況は定かではない。

 そして、今年の夏についに、競馬発祥の地・英国で所有馬がデビューすることになったのだ。ウォッチパーティはアイルランド産馬。オーストラリアでG1クイーンエリザベスS(芝2000m)など3つのG1を制したサーデリアスの甥にあたり、タタソールズ10月1歳市場にて30万ギニー(当時のレート約6563万円)で購買している。

 これを皮切りに、リポール氏のイギリスにおける競馬組織は拡大していくのか。今後の推移を見守りたい。

(文=合田直弘)

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定