『マダム猫の古民家暮らし』(かんさび著、KADOKAWA)より 外国育ちのお嬢様猫が、築140年の日本の古民家にお引越し。猫にとってのカルチャーショックとは?
『マダム猫の古民家暮らし』(かんさび著、KADOKAWA、2026年6月)は、ポーランド育ちの猫、マダム・リリーの生活を綴ったコミックエッセイです。作者はかんさびさん。長年ポーランド在住の漫画家・イラストレーターとして活動してきました。
◆猫アレルギーが出ない! 奇跡の出会い
そんなかんさびさんがポーランドで巡り合ったのが、のちの夫、セバスチャン(仮名)です。彼が執事として仕えていたのが、レディ・リリーです。ブリティッシュショートヘアのリリーは当時3歳。人間年齢だと20代半ばでした。
実は、かんさびさんは猫アレルギー。猫を飼うことに憧れを抱きつつ、諦めていたのです。ところが、リリーにはアレルギー反応がが出ないではないですか。これは運命の出会いに違いありません。と、歓喜したのも束の間、可愛くもエレガント、そして気位の高いマダムに、かんさびさんは厳しく躾けられることになるのです。
◆マダム猫、はるばる日本へ
かんさびさんとセバスチャン夫婦(マダムにとっては召使いたち)の都合により、マダムはポーランドから遠路はるばる日本にやってきました。
日本の古民家には畳が付きもので、必然的に人間は床に転がります。自堕落にくつろぐ人間を見て衝撃を受けつつも、安全地帯を認識するマダムがお上品すぎて、とても癒されるのです。
そして古民家あるあるですが、やたらと引き戸が多く、隙間や出入口も目白押し。探検好きの猫にとってはパラダイスで、マダムも例外ではありません。冒険心が高じて被毛を蜘蛛の巣だらけになっても、ファッショナブルに見せてしまうさすがのマダム。
マダムに振り回されながらも、かんさびさんはやさしく見守ります。このホンワカした日常に、読んでいるこちらの時間もゆったりと流れていくのです。
◆ホットカーペットとコタツとの出会い
〈ヨーロッパは座る文化がない。というわけでホットカーペットも一般的ではないのです〉という環境で過ごしてきたマダムですが、日本の冬は寒く、築140年の古民家ならなおさらです。
マダムのためにホットカーペットを導入した召使い達。床に転がる、という未知で無防備な体験に加え、肌触りがよくて絶妙に暖かいホットカーペットを知ってしまったら……。優雅さを忘れ、ゆるゆるにとろけた姿になってしまうマダムなのでした。このあたり、猫の習性は万国共通なのだと微笑ましくなります。
さらに、日本の冬の風物詩とくればコタツ。密室好き、ぬくもり好きの猫にとっては冬の必須アイテムでもあります。さて、コタツとマダムの相性は如何に?
コタツに引きこもり、あとから入ろうとする召使い達の手足を引っ搔くではないですか。コタツがマダムの野生スイッチをオンにし、すっかりハンターモードに。暖かくて暗くて、狩りもできて最高、なマダムと、コタツに入ろうとするたびに緊張感が炸裂する召使い達。この対比のほっこし加減がたまりません。
◆どこに住もうと、猫は自由で孤高
ポーランドから日本へ。気候も建物の構造も、何もかもが異なる日常に突入しても、マダムの瞳は好奇心で満ちています。戸惑いがあっても、すべてを学びや遊びに変換してくつろぐ姿は、かんさびさんだけではなく、一読者としても元気をもらいます。
本書の後半には、猫を連れての移住計画や準備といった実用的な内容も。実際のマダムの写真も拝めるという、豪華な本書をぜひ手にしてくださいね。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx