
日本で購入した和牛を、出国直前に成田空港で受け取り、そのまま帰国する――。そんなサービスを展開しているのが、日本航空グループのZIPAIR Tokyo(千葉県成田市、以下ZIPAIR)だ。
【画像】ビックカメラAKIBAの「AKIBA GO」コーナー
ZIPAIRは6月19日、貨物運送を手掛けるJALカーゴサービス(千葉県成田市)、ビックカメラと連携し、秋葉原にある「ビックカメラAKIBA」で北米とシンガポール向けの和牛販売を開始した。ZIPAIRが開発したお土産事前注文サービス「AKIBA GO」を活用する。
ビックカメラAKIBAにはサービスを紹介するブースを設置。和牛商品のサンプルや注文方法を展示し、訪日客に「和牛を海外へ持ち帰れる」ことを知ってもらい、AKIBA GOの公式Webサイトに送客する。
なぜ航空会社が、和牛を売るのか。
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●「持ち帰れないもの」を持ち帰れるように
AKIBA GOは、公式Webサイトからお土産を事前に注文し、成田空港または羽田空港のカウンターで出国直前に商品を受け取れるサービスだ。現在は北米とシンガポール向けに和牛を販売している。商品を受け取った後は、そのまま受託手荷物として預け、到着空港で通常の手荷物と同様にターンテーブルで受け取れる。
日本の和牛は海外でも人気が高い。一方、訪日客からすれば「どこで買えばいいのか分からない」「冷蔵・冷凍の状態でどう持ち帰ればいいのか分からない」「検疫の手続きが難しい」といった課題がある。
食肉の場合、海外へ持ち出すには渡航先の条件に沿った検疫手続きが必要だ。ZIPAIRがこうした手続きを代行し、商品の搬送はJALカーゴサービスが担う。利用者にとっては、購入した和牛を自分で梱包して運んだり、検疫に必要な書類を準備したりする負担がなくなる。
●ZIPAIR便の利用者向けサービスを拡大
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このサービスの原型となったのが、2024年12月に始めた「AKIBA ZIP」だ。ZIPAIR便の利用者を対象に、日本のお土産を事前に購入できるサービスとしてスタートした。
AKIBA ZIPでは、購入した商品を出国時の機内や到着空港の手荷物ターンテーブルで受け取れる。和牛のほか、米、カップ麺、お菓子、フィギュア、化粧品などを販売している。ZIPAIRで事業推進担当を務める松尾拓哉氏によると「お客さまが持って帰りたいけれど、不便でなかなか持って帰りにくいものを扱っている」という。
こうした仕組みをZIPAIR便の利用者だけでなく、他の航空会社の利用者にも広げたのが「AKIBA GO」だ。まずは需要の高い和牛の販売から始めた。
ZIPAIRは外国人客が約7割を占め、30代以下も約7割と若い利用者が多い。一方、AKIBA GOは航空会社を問わず利用できるため、ZIPAIRがこれまで接点を持てなかった訪日客にもサービスを知ってもらえる。
シンガポール向けでは、旧正月にあたる2月に和牛の販売が伸びるという。米国向けでは、日本人が現地へのお土産として購入するケースもある。
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従来の航空会社による物販といえば、機内で高級品を販売するような「非日常のショッピング」が中心だった。松尾氏は「持ち帰りにくいものを快適な顧客体験で売るというのがビジネスモデルです。われわれは商品を販売しているのではなく、顧客体験を提供しているので、そこがこれまでとの大きな違いです」と話す。
●「291席目」を生み出す、ZIPAIRの物販戦略
ZIPAIRはLCC(ローコストキャリア)のため、座席指定や機内食、手荷物などの追加サービスを有料化し、利用者が必要なものだけを選べる仕組みを採用している。物販も、こうした航空券以外の収入を生む重要な手段の一つだ。
同社の航空機は1便当たり290席。座席数には上限があるため、どれだけ需要があっても1便で販売できるチケットの数には限界がある。一方、物販には座席数という制約がない。
松尾氏は「和牛が1個売れるというのは“291席目”が売れているのと同じ価値がありますから、こういったリテールを強化するのはとても大事です」と話した。
●ビックカメラとの連携で、認知を広げられるか
AKIBA GOを広げる上で課題となるのが、サービスそのものの認知だ。ZIPAIR便の利用者であれば同社から直接サービスを案内できるが、他社便を利用する訪日客とは接点が少ない。
そこで目を付けたのが、インバウンド客が多く訪れるビックカメラAKIBAだ。日本のお土産を探す訪日客が集まる場所でサービスを知ってもらうことで、これまで接点のなかった旅行者をAKIBA GOに呼び込む狙いだ。
取り組み開始から約2カ月がたった。和牛を購入する客の中には購入上限まで買う人もいて、従来はこれほど大量に購入するケースは少なかったという。日本人の利用客も目立った。
一方、課題も残る。和牛は「日本で食べるもの」というイメージが強く、ブースを見て、その場で和牛を食べられると思う訪日客もいるという。「和牛を海外へ持ち帰れる」ということ自体が、まだ十分に知られていないためだ。
今後は、サービスの伝え方も工夫していく。ビックカメラ以外との連携も視野に入れており、例えば飲食店と組み、和牛を食べた客に「この商品は海外へ持ち帰れますよ」と案内するといった方法を想定する。
松尾氏は「ビックカメラは、日本のお土産を買おうとする旅行者に、これまで頭の中になかった和牛を知ってもらえる大きなチャネルだと思っています。まずは、和牛自体をもっと売れるようにしていきたいです」と意気込んだ。
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