ツッコミって子どもの教育にいいのでは?松井ケムリが初絵本に込めた「常識を疑う」面白さ

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2026年08月24日 17:10  CINRA.NET

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Text by 北原千恵美
Text by 生田綾

M-1グランプリ2連覇、そしてお笑い芸人史上初となるKアリーナ横浜での単独ライブ『RE:IWAROMAN』。令和ロマンとしての活動がますます勢いを増すなか、松井ケムリは2026年7月、初の絵本『ちがうちがう』(集英社)で絵本作家デビューを果たした。文章だけではなく、絵も自らが手がけている。

神様が間違えてつくった、水中を泳ぐライオンや地上を走るサメが登場する世界を、子どもが「ちがうよ!」とツッコんでいく参加型の絵本だ。

絵本執筆のきっかけは、2025年に誕生した第一子。父になったことで生まれた気づきや、絵本づくりを通して見えてきた「ツッコミ」という行為の効能について、松井に話を聞いた。

―絵本を作るにあたって、どんな絵本にしたいと考えましたか?

松井ケムリ(以下、松井):絵本をいろいろ読ませてもらったんですけど、大きく分けると、話が感動的だったり面白かったりする絵本と、子どもと一緒に楽しめる絵本の2つの種類があるなと感じました。僕はあくまで芸人で、僕自身お話をつくる才能がすごくあるわけでもないので、芸人がやる以上は一緒に楽しめるほうの絵本を書きたいなと。そこで、自分の得意なこと―—ツッコミを主題にした絵本を作りたいなと思いました。

令和ロマン・松井ケムリ

―何か参考にした絵本などは。

松井:『100かいだてのいえ』シリーズは、ページのなかに書き込まれている絵の情報量がすごいですよね。子どもの頃、読みながらワクワクしてたなという記憶があって。親御さんが読んで理解できること以上のものが絵のなかに詰め込まれていると思いました。だから、僕の絵本も多少ですけど、そういった要素を入れたいと思いました。

大人はどうしても言葉で説明したくなっちゃうんですけど、子どもに伝えるうえでは絵の力が大事なんですよね。たとえば、派手すぎる虫が登場する次のページにも、さりげなく派手すぎる虫がいたりとか。一つひとつ見ていくと楽しくなるような仕掛けを入れていきました。

―絵本では、神様が「間違いだらけの世界」をつくって泣いてしまいますが、主人公の男の子・ただしくんは「間違ってもいいじゃない」と伝えますよね。絵本を通してどんなメッセージを伝えたいと思いましたか。

松井:そこまで深い気持ちで言っているわけではないんですけど、お笑いの懐の広さというか。「間違えること」は良くないことだとされがちだと思うんですけど、そもそも「間違っていること」は、お笑い的にはむしろありがたいことなんですよね。間違った世界をツッコむこと自体が作品になるし、見ている人も楽しめる。

だから、ツッコミってすごく教育にいいんじゃないかと最近思っていて。ツッコミって、物事があって、それが一般的なモノとどう違うかを言葉にする、結構知的な行為な気がしているんです。子どもが何かを認知するうえで重要な行為なんじゃないかと思ったんですよね。

『ちがうちがう』書影

―物事を俯瞰して見る力が身に付く、ということでしょうか。

松井:そうですね。あと、ツッコミをするにはまず自分のなかに常識みたいなものをつくらないといけないんですよね。その常識とのズレを指摘するという行為なので。でも、そもそもその常識自体が間違っていることもあるし、人によって「常識」もそれぞれ違う。だからこそ面白いと思います。

今回の絵本では、一般的に「正しい」とされるほうが正しくて、神様が間違っているという設定にしていますけど、別にその正しさやツッコむほうが間違っていてもいいと思うんです。いまのお笑いって、むしろそっちに進んでいたりもするので。

―たしかに、いろんな考え方や見方に対して柔軟になりそうです。一方で、そもそも誰かに「ツッコむ」という行為は結構勇気がいることだなと思います。人と違うことを言う、ということでもあるので……。松井さんはどう考えてますか?

松井:自分は、ツッコミはボケよりはとっつきやすいと思うんですよね。常識人ぶっていられる分、始めやすいというか。ただ、人と違うことを口に出すのはたしかに勇気がいることでもあって、それこそ訓練なんだと思います。僕自身、ツッコミはずっとやってきたから苦手な場や萎縮するような場でもツッコむことはできるんですけど、ボケは全然できないですよ。だから、場数を踏むことが訓練になる。それは芸人の舞台だろうと、職場だろうと、同じだと思います。

―とはいえ「自分にはツッコミ力がない」と感じる人は、どうすればいいのでしょう?

松井:とにかく訓練と言いましたけど、子どもって、むしろもともとツッコむ力を持っている気がするんですよね。絵本の発売にあわせて子どもたちに読み聞かせ会をしたんですけど、みんな自分が気づいたことを大声で教えてくれるんです。ツッコむのも、ツッコまれるのも好きで。

ツッコミって、ある種「幼さ」なのかもしれないと思いましたね。自分が気づいたことをつい言いたくなっちゃうという。だから、些細なことから始めたほうがいいと思います。大人って忙しいから、些細なことはスルーしちゃうじゃないですか。そこにいちいち引っかかる幼さというか、思ったことをそのまま口に出すというところから始めるといいかもしれないですね。

―『M-1グランプリ』を連覇し、2026年には最大規模となる単独ライブを開催。相方・くるまさんが所属事務所を退所したこともあり、傍目にはコンビとして新たなフェーズに入ったように見えます。松井さんご自身は、そういった感覚をお持ちですか?

松井:単独ライブに向けてどうこうというより、前々から動いていたことの一つの節目という感じですね。単独ライブ自体、本当にひさしぶりではあったんですけど、そこからどう変わっていくかというところまでは、そんなに考えていなくて。今までどおりやれたらいいなと思っています。

―コンビ外での個人の活動も着実に増えている印象があります。

松井:声優も絵本もコメンテーターも、今までやってこなかったことばかりで新鮮なんですよね。コメンテーターと芸人、両方をやっているからこそ生きてくる部分があったりして、発見が多いので楽しんでやっています。

自分自身は、そんなに「芸人であること」自体にこだわりはなくて。子どものためによくない仕事はしないようにしていますが、それ以外は基本的に何でもやるようにしていますね。

―今回の絵本も子どもが生まれたことがきっかけでしたが、仕事の選び方も変わったんですね。

松井:そうですね。子どもが将来自分の仕事を見て喜ぶかどうか。子どものためになるかどうかを考えるようになった。今まではなかった観点です。

―今は1歳になったということですが、父親になった実感は最初からありましたか?

松井:実感は最初、正直あまりなくて。3〜4かカ月経つまではバブバブすぎて。まだ人として見えていなかったというか(笑)。最近になってようやく笑ったり、コミュニケーションが取れている実感が湧いてきて、親としての自覚を持たせてもらっている感じです。

―子育ての大変さや、ご夫婦での役割分担については?

松井:大変ですが、ほとんど妻のおかげで成り立っているので、とてもじゃないですが自分は大変だとは言えないですね。僕はお風呂上がりに保湿して、おむつを履かせて、寝巻きを着せたり……あとは「遊ぶ担当」です。妻には『ありがとう』と『ごめんなさい』はちゃんと言うようにしています。

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